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トーク・セッション・シリーズ 「人工知能と私たちの未来」について

最近、AIをめぐる自分の議論が少し専門的になりすぎているように感じています。それはそれで必要なことだとも思っているのですが。 ただ、いろんな人に、もっとAIのことを知ってもらえればいいなと思っています。 今度、孫泰蔵さんの会社Mistletoe(「ミスルト」と読みます)さんの主催で、「人工知能と私たちの未来」というトーク・セッションをシリーズで開催することになりました。 「マルレク」はIT技術者、「MaruLabo」は学生をターゲットにしているのですが、今回の取り組みは、一般の人(これも変な言い方かもしれませんね)を対象にしています。 僕の講演の後に、みんなで一時間ほど議論しようというものです。トークの司会は、西村真里子さんが担当します。 第一回は、「子育てママ」を対象にした「子育てママ」編です。 第二回は、「起業家」編 第三回は、「デザイナー」編と続きます。 あまり、普通の人にAIの話をしたことないし、「子育てママ」とは、縁もゆかりもないので(昔「主夫」してましたが)、うまくいくのか心配ですが、生暖かく見守ってもらえればと思います。 興味のある方、ぜひ、ご参加ください。 お申し込みは、次のサイトから。 http://ailife201701a.peatix.com/ --------------------------------------------- トーク・セッション・シリーズ 「人工知能と私たちの未来」 第一回「子育てママ」編 ---------------------------------------------  日 時:2017/06/18 (日) 13:00 - 16:00  場 所:STRATUS TOKYO -Mistletoe Base Camp Tokyo  定 員:50名  参加費:1,500円  講 演:丸山不二夫  司 会:西村真里子  概 要: 人工知能技術は、私たちの生活を大きく変えるポテンシャルを秘めています。その変化の波は、今後、何世代かに渡って持続し、社会のあらゆる分野に浸透する可能性があります。 大事なことは、私たちは、人工知能技術の最初の立ち上がりの時期に立ち会っているということです。現在の私たちが、この技術にどう受け入れていくかが、この技術と

可微分ニューラルコンピュータとは何か?(3)実験の課題

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システム概論(続き) 総合的な質問に答える実験 我々の最初の実験では、質問応答を実行するDNCの能力を調査した。 DNCと他のニューラルネットワークアーキテクチャを比較するために、bAbIデータセットを検討した。これには、テキスト推論の側面を真似るように設計された20種類の総合的な質問が含まれている。 データセットは、短い「ストーリー」スニペットとそれに続くストーリーから推測できる答えの質問から構成される。例えば、「ジョンはグランドにいます。ジョンはフットボールをピックアップしました」というストーリーに続いて「フットボールはどこにありますか?」という質問に、グラウンド」と答えには、 システムは2つの裏付けの事実を組み合わせる必要がある。「羊はオオカミを恐れています。」「ガートルードは羊です。」「ネズミはネコを恐れています。」「ガートルードは何を恐れているのですか?」(答え、「オオカミ」)では、基本的な演繹能力(および引っ掛けへの耐性)をテストする。 我々は、1つのDNCを、それぞれにつき10,000のインスタンスを持つ20種類の質問タイプを、すべて一緒に訓練を行い、2種類の質問に対して、タスク失敗(> 5%エラーと定義)で3.8%の平均テストエラー率を達成できることを発見した。 7.5%の平均誤差と6回の失敗したタスクが、過去の最高の学習結果であった。 我々はまた、DNCがLSTM(現在のところ、ほとんどのシーケンス処理タスクのベンチマークとなっているニューラルネットワーク)とニューラルチューリングマシンの両方よりも優れた性能を発揮することも発見した。 グラフ実験 このような文章は、グラフの形式で簡単に表示することができる。たとえば、”John is the playground”は、2つの名前付きノード、’Playground’と ‘John’、名前付きエッジ ‘Contains’によって接続されている。この意味で、多くのbAbIタスクにおける命題で表現される知識は、基礎となるグラフ構造上の制約のセットと同等である。 実際、機械学習が直面する多くの重要なタスクには、解析木、ソーシャルネットワーク、知識グラフ、分子構造などのグラフデータが関係して

量子論と相対論の統一としての ER = EPR

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現代の物理学の大きな課題が、量子論と相対論の統一にあることを知っている人も多いと思う。ある人は、"Super String Theory"が「万物の理論」として成功していると思っている。また、ある人は(僕もそうだったのだが)、String Theoryに対抗する「量子ループ重力理論」に期待を寄せていた。 ただ、物理学の統一をめぐる、こうした対立図式は、今ではいささか古いものになろうとしている。前世紀末のマルデセナによるAdS/CFT対応の発見によって、量子論と相対論の統一の新しい切り口が開かれた。マルデセナはサスキンドと共に、前稿で紹介した2013年のER = EPR論文を発表する。 ER = EPR理論が主張していることは、ブラックホールを結ぶ 「Einstein-Rosenブリッジ」が存在して(ER)、それが、素粒子の「量子エンタングルメント」(EPR)と等しいということ。 この図は、サスキンドの論文 "Copenhagen vs Everett, Teleportation, and ER=EPR"  https://arxiv.org/pdf/1604.02589.pdf  からのもの。 ER = EPRの左辺ERは重力理論(相対論)を、右辺EPRは量子論を表していると思えば、ER = EPR理論が、両者の統一理論だということはわかりやすいかもしれない。 サスキンドの議論はわかりやすい。「難しい数学を使わなくても、高校生にでもわかる数学で、物理は説明できる」とどこかで言っていた。立派なことだ。 サスキンドのわかりやすい論文があったのだけれど、なぜか今日は見つからなかった。 論文を読まなくても、サスキンドの次の二つのビデオがER = EPRの入門にはいいと思う。 "ER = EPR" or "What's Behind the Horizons of Black Holes?" - 1 of 2  https://goo.gl/UtdSkr "ER = EPR" or "What's Behind the Horizons of Black Holes?" - 2 of 2  htt

ER=EPR

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アインシュタインは、先のEPR(Einstein, Podolsky, Rosen)論文を5月に公開してすぐに、ローゼンと一緒に、次の論文を公開する。1935年7月のことだ。この論文をER論文と呼ぶことがある。 "The Particle Problem in the General Theory of Relativity" 「相対性の一般理論における粒子の問題」 https://goo.gl/KG4mjp 一般には、二つのブラックホールを結ぶ「橋」が存在しうることを発見した論文だと言われている。この「橋」は、"Einstein-Rosen Bridge" と呼ばれる。別名「ワームホール」とも呼ばれる。(ただ、"wormhole" でWeb をググっても、あまりスジのいい情報は引っかからない。) 1935年に、アインシュタインは、「エンタングルメント」(ただし、パラドックスとして)と「ワームホール」を発見しているのである。ほぼ同時期に行われた、この二つの発見に何か関連があるのだろうか?  80年前になされるべきこうした問いかけを、現代に蘇らせたのは、マルダセナ(Maldacena、AdS/CFT 対応の発見者)とサスキンド(Susskind)だった。2013年の論文 "Cool horizons for entangled black holes"   https://goo.gl/wU1pKK  で、二人は、大胆な仮説を提示する。 「二つのブラックホールの間のアインシュタイン・ローゼン・ブリッジは、二つのブラックホールのミクロな状態のEPR状の相関関係(エンタングルメント)によって生成される。 ...  我々は、これを ER = EPR 相関関係と呼ぶ。別の言葉で言えば、ERブリッジは、その中では、量子システムに関連するEPRが、アインシュタインの重力の記述に弱く結合している特殊なタイプのEPR相関関係なのである。」 要するに、1935年にアインシュタインが発見した「エンタングルメント」と二つのブラックホールを結ぶ「アインシュタイン・ローゼン・ブリッジ」は、スケールが全く違うのだが同じものだというのである。これを、「ER = EPR仮説」と呼ぶ。

EPRパラドックス

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「神はサイコロを振らない」  アインシュタインが、量子論に懐疑的だったことは、よく知られていると思う。もっとも、彼がこうしたアプリオリな哲学的立場から量子論を批判したと思うのは、正しくないと思う。今日紹介する論文でも、彼は、明確に次のように述べている。 「物理的実在の基本原理を、アプリオリな哲学的思索によっては決定することはできない。それは、実験と観測の結果に訴えることで見出されなければならない。」 "Can Quantum-Mechanical Description of Physical Reality Be Considered Complete ?" 「物理的な実在の量子力学の記述は、完全なものと考えることができるか?」 https://goo.gl/qAWacP 量子論の否定は、現在の我々の目から見れば、明らかに、アインシュタインの「誤り」と言っていいものだが、彼が量子論の中に見つけた「矛盾」は、当時の物理学者の誰も気がつかなかった深いものだった。 1935年に、アインシュタインとポドルスキーとローゼンは、概略、次のような思考実験を論文として発表する。(前述の論文。三人の著者の頭文字をとって、EPR論文と呼ばれることがある。) ある系 I と、ある系 II とが、時刻 t=0 から t=T の間に相互作用するとする。ただし、t > T 以降は、二つの系には相互作用がないとする。量子力学に従えば、シュレディンガーの波動方程式 Ψ で、結合された系 I + II の状態を、全ての時間に渡って計算できることになる。単純な例として、二つの系を二つの粒子 x1とx2 だと考えてみよう。その時、Ψ(x1 , x2) で、二つの粒子からなる系の状態を計算できる。 今、系 I の粒子 x1の運動量を観測して運動量 p を得たとする。量子力学によれば、粒子の粒子の運動量の値は、観測によって粒子の状態を記述する波動方程式が収縮することによって初めて確定する。ところが、この収縮したΨをよく見ると、系 II の粒子x2の運動量が -pで与えられることが、計算でわかる。実際に系 II で、粒子 x2 の運動量を観測しても、計算どうりに、-p を得るだろう。 同様に、系 I の粒子 x1の位置を観測して位置 q を得

残雪、ミズバショウ

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もちろん、街からは消えているが、車で少し走ると、雪が残っている。雪のはじっこに、フキノトウが顔を出している。 でも、稚内のこの季節、一番元気がいいのは、ミズバショウだ。いたるところに群生して、白い花を咲かせている。

MaruLabo Inc. 設立

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今日、学生のMaruLaboの活動を支援する一般社団法人 MaruLabo Inc. の書類が法務局で受理されました。 僕と  Jun Yamada さんが理事に、監事に  井上 準二  さんが就任します。設立時社員は、MaruLabo管理者の  古川新  君です。 四人だけの小さな出発です。 Mistletoeの  孫 泰蔵 (Taizo Son)  さんが、MaruLabo Inc. にオフィスを提供してくれました。また、Mistletoeの  藤村 聡 (Satoshi Fujimura)  さんに、設立事務に全面的に協力していただきました。 一般社団法人MaruLabo の目的は、次のようになっています。 --------------------------------------------- 当法人は、学生・IT技術者の中で広く新しいAI技術の普及を推進し、特に学生によるAIの研究と開発を支援し、学生の所属組織と進路選択に関わらずAI時代のイノベーションの担い手となる個人を育成することを目的とする。 その目的に資するため、次の事業を行う。 1. 学生に対して、ディープラーニング技術の開発・学習環境を無償で提供する。 2. 学生の所属組織を超えたバーチャルな研究室として “MaruLabo”を運営する。 3. 学生・IT技術者向けのセミナー/コンテスト等のAI技術の啓蒙・普及活動。 4. MaruLabo所属の学生とIT技術者、研究者、企業との交流活動。 前各号に附帯又は関連する事業 --------------------------------------------- MaruLabo登記簿謄本  https://goo.gl/ae2unW