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黒電話

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昨日は、数学者の吉田輝義さんを訪ねて、湯河原に一泊。温泉宿で、懐かしい黒電話発見。

「紙と鉛筆持ってきて」

先のポストでも述べたように、我々の直観に反する量子の世界の運動を理解するためには、数学的アプローチが欠かせないのだが、その数学 -- 例えば、場の量子論の数学は、結構難しい。 ただ、量子コンピュータの基礎を理解するためには、量子力学全体の理解が必要なわけではなく、量子力学の基礎の知識が必要なだけだ。その数学は結構易しい。これは、大事なポイントだ。それは、ベクトルと行列の数学を、「ちょっと」拡大したものだ。 基礎として学ぶべきことは、何十年も前に、フォン・ノイマンが定式化している。ディラックのBra-Ket記法は、量子力学の基礎の数学を見通しの良いものにする、素晴らしいアイデアである。Ket記法がわからないと、量子コンピュータは入り口でつまづいてしまう。 もちろん、僕は物理の専門家ではないので、難しいことは教えられないのだが、ここまでだったら、教えられそうなきがする。 で、今考えていることは、マルレクで、量子コンピュータのオーバービューをしたいとは思っているのだが、それとは別に、「量子コンピュータのための量子力学の基礎入門」みたいな講義ができればいいなと考えている。一日コースで。 「紙と鉛筆持ってきて」 イメージは、こうだ。 最初の時間、具体的な数値で、列ベクトルと行ベクトルの和やスカラー倍、そしてその内積、行列とベクトルの積の計算をしてもらう。(だから、行列の計算がわからない人も、受講しても大丈夫) それから、複素数の共役、行列の転置を導入して、また、計算。(ただし、具体的な数値で) 今度は、Ket記法を、具体的な、列ベクトル・行ベクトルの略記法として教えて、また計算してもらう。 まるで、「公文式」だ。 そうだ、僕らは、こういうの「ハンズオン」というんだ。 そのあとで、普通の量子力学の形式的な講義をする。 状態と観察量の区別。エルミート演算子としての観察量、観察される値はその固有値であること。またその確率はどう与えられるのか等々。 ただ、一日に詰め込むのは、このあたりまでが妥当かも。 一つの系ではなく、複数の系からなるシステムの話が必要になる。|u>とか|d>だけではなく、|uu>とか|dd>とか ( |ud> - |du> ) / √2 とかにKet記法も拡張される。量子コンピュー

認識能力の二つの飛躍

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我々が、重ね合わせやもつれ合い(エンタングルメント)といった、ミクロな量子の世界で起きる奇妙な振る舞いを「奇妙」と感じるのには、理由がある。 それは、我々人間を含む全ての動物の、感覚器官も脳も、その知覚と認識の能力も、目の前の、絶えず変化し運動している現実の認識の為に進化して来たからである。 チーターがジグザグに逃げるガゼルを追いかける時、鷹が上空から地上のウサギを狙って急降下する時、カメレオンが長い舌を伸ばしてハエを捕まえる時、もちろん、我々の祖先が弓矢で獲物を狙う時、我々は対象との距離・対象の移動の速度から、次の瞬間の対象の位置を予測する。 動物の知覚・運動のシステムは、こうした物理計算を瞬時に実行し、その計算結果で、自らの運動を自動的にコントロールするように進化して来た。この知覚・運動能力に組み込まれた、コンピュータが我々の外界・物理世界の認識の枠組みを決める。それは、古典的な力学の世界に、適応している。 いや、逆に、長い進化を経て、我々に組み込まれた、知覚・運動コンピュータが、自らが適応してきた、古典的な力学を「発見」したと考えた方がいいのかもしれない。 いずれにしても、我々に組み込まれた知覚・運動コンピュータにとって、ミクロな量子の世界は、想定外の対象なのである。 だから、人間の脳を、いくら精緻に分析し、シミュレートしたとしても、そのままでは、ミクロな量子力学的な世界の認識には至らないだろうと、僕は考えている。(同様に、超マクロな「宇宙」の認識も、我々の知覚・運動組み込みコンピュータの、そのままの能力の「外挿」では、うまくいかないはずだ。) それでは、超ミクロな量子の世界(あるいは、超マクロな時空)の認識には何が必要なのだろうか? 一つは、我々の「感覚能力」を拡大することだ。 今回のノーベル賞の対象となった「重力波の検出(レーザー干渉計)」も「cryo電子顕微鏡」も、こうした我々の感覚能力の拡大と考えることができる。CERNの加速器は、ミクロな世界への我々の「感覚器官」なのだ。 ただ、それだけでは足りないのだ。 新しい世界の認識には、数学の助けが不可欠だ。 (ニュートン力学の成立と微積分の成立は、同じものだ。アインシュタインの重力理論に先行したのは、リーマン幾何学だ。) 数学的な認識能力を、ある種の新しい

「20世紀の音楽を聴く会」の情報を探しています

1966-68年くらいに、渋谷の山手教会で、「20世紀の音楽を聴く会」(正確ではないかも)というのが定期的に開催されていました。入野義朗、柴田南雄、諸井誠らが主宰していたはずです。この期間、僕は、だいたい全ての会に出ています。一柳も出演していました。若いブーレーズも来ていました。 日本の現代音楽史では、画期的な取り組みだったと思うのですが、ネットで探しても、この取り組みの情報が見つかりません。なにか情報お持ちの方いらっしゃいましたら教えていただけませんか?

漏水だ!

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家で漏水があったらしい。 先月3,250円だった上下水道料金が、今月は、39,840円だという。初めての経験。

複雑性の理論の新展開 -- 量子マネー

先日のマルレクでは、エントロピーの歴史を中心に、ボルツマン、シャノンから量子情報理論の入口のところまでの話をし、科学の基礎理論のレベルで、100年に一度の大きな変化が起きているという話をした。 現実的な課題との接点では、凝縮系物性論に大きな変化が起きていて、それが、21世紀の新しい量子デバイスや高温超電導マテリアルの創出に結びついていくだろうと示唆した。 時間の関係で、マルレクでは、複雑性の理論については、資料は少し用意したのだが、あまり語ることができなかったので、少し補っておこうと思う。 ここでも大きな変化が進行中である。 基本的には、ゲーデルやチューリングの「計算可能性」(あるいは、「計算不可能性」)の理論として出発した複雑性の理論が、単なる形式的・数学的な理論として閉じているのではなく、物理の基礎理論と深いつながりがあることが発見されていくのである。 この分野で、もっとも目覚ましい理論的成果は、ブラックホールで情報が失われるか否かをめぐる長い論争の現代版であるAMPS Paradoxの、ハーローとハイデンによる「解決」である。それらの理論的オーバービューについては、別の機会に紹介したいと思う。 ここでは、こうした現代の複雑性理論の「現実的な課題との接点」について触れてみようと思う。それは、「量子マネー」である。 誰でも、それが真正の通貨であることを知ることができるが、発行者しか、それを生成しコピーすることができない「量子通貨」の研究が活発に行われている。 それは、現在の「暗号通貨」と基本的には、同じ考えに基づくものなのだが、依拠する暗号化のメカニズムが異なる。量子暗号化は、現代の暗号化技術の最大の脅威とみなされることのある量子コンピューターによっても解けない暗号化である。 こうした研究は、今までは、あまり現実的な意味を持たないと考えられていた。量子コンピュータだってちゃんと動いていないのだから。僕が知っている、Shorのアルゴリズムに基づく、量子コンピュータでの素因数分解の最大の成功例は、15を3 x 5 に分解することだった。 ただ、冒頭に述べた新しい量子デバイスの登場が、状況を大きく変える可能性はある。 何も、量子デバイスを、どこかのセンターに鎮座する量子コンピュータと考える必要はないのだ。みなが持ち運ぶデバ

ABCで講演します「はじめてのボイス・アシスタント」

10/14日開催の日本Android の会のイベントABC  http://abc.android-group.jp/2017a/  で講演します。 「はじめてのボイス・アシスタント --- Amazon Echo/AlexaとGoogle Assistant --- 」 先日の角川さんの講座で好評だった内容です。 もちろん、無料です。 是非、いらしてください。