エントロピーの量子版を考える

【 エントロピーの量子版を考える】

古典的なエントロピーから量子論的なエントロピーへの拡大は、いくつかの準備が必要になります。

量子の状態|ψ>は、最も単純な量子ビットの場合でも、次のように二つの状態 |0>と|1>の重ね合わせになります。

  |ψ> = α|0> + β|1>

量子の状態は、一つの数字ではなく、この例の場合には、二つの数字のペア、二次元のベクトル (α, β) によって表現されます。

このα, βは、古典論での確率に対応するものですが、古典論の確率のように、0 <= α, β<= 1という条件を満たしません。それは、マイナスの値をとったり、一般的には、複素数になります。古典論の確率に等しくなるのは、α, βの絶対値の二乗です。

さらに面倒なのは、我々は、このα, βの値を直接には観測できないのです。我々が知りうるのは、同じ状態の観測を繰り返して、|0>を観測する確率がαの絶対値の二乗、|1>をを観測する確率がβの絶対値の二乗に近くということだけなのです。

量子の状態|ψ>の「確率分布」と言うのが、古典論のようには簡単には与えられないことは、わかったと思います。

細かいことをすっ飛ばしますが、量子論では、量子の状態|ψ>の「確率分布」に相当するものが、行列ρで与えられます。この行列loを「密度行列」と言います。

密度行列ρが与えられた時、この確率分布のエントロピーS(ρ)を次の式で表します。

  S(ρ) = - tr ( ρ log ρ)

このエントロピーを「ノイマン・エントロピー」と呼びます。シャノン・エントロピーの量子版です。

trは、”Trace"の略で、行列の対角成分の和です。それを理解するのは簡単です。
ρ log ρ は、行列ρと行列 log ρの積です。それは行列の掛け算です。

問題は、log ρの項です。これは、行列の対数をとることを意味しています。「行列の対数」? そんなことは、高校では習わなかったと思います。ただ、「行列の対数」を定義する上手いやり方があるのです。

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