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8月のMaruLaboの活動について

【 8月のMaruLaboの活動について】 8月のMaruLaboの活動についてのお知らせです。 小又ゼミの日程が変更になり、片桐ゼミの日程が確定しました。  ===============================    MaruLabo が、8月に開催するセミナー  ===============================   ● 8月3日 MMM 平原ゼミ 第二回   「Coq スタートアップセミナー 」    https://www.marulabo.net/docs/coq-startup/  ● 8月5日 マルゼミ   「密度行列 ρ で理解する量子の世界」    https://rho-talk.peatix.com/  ● 8月14日 MMM 小又ゼミ 第一回   「誤り訂正符号の初歩―古典と量子」    https://www.marulabo.net/docs/komata/  ● 8月16日 MMM 浅海ゼミ 第一回   「クラウドアプリケーションのためのオブジェクト指向分析設計講座」      https://www.marulabo.net/docs/asami/  ● 8月20日 MMM 片桐ゼミ 第五回   「量子、情報、物理 — 量子情報と物理学入門 」     https://www.marulabo.net/docs/katagiri/    ===============================      MaruLaboのYouTube チャンネル  ===============================    ● "Maruyama Lectures" : https://www.youtube.com/c/MaruyamaLectures  ● "MaruLabo Micro Media" : https://www.youtube.com/c/MaruLaboMicroMedia

新しい「量子の理論」とエントロピー

【新しい「量子の理論」とエントロピー】 「量子力学」と「量子情報理論」の違いについて、物理的世界と情報の世界の違いを中心に書いてきたのですが、一つ強調したいことがあります。 それは、新しい「量子の理論」が、一見すると遠くへだたったもののように見える二つの世界、物理的世界と情報の世界の深いつながり、すなわち、物理的な世界の理解には情報の世界の理解が必要で、情報の世界の理解には物理的世界の理解が必要だということを明らかにしつつあるということです。 物理的世界と情報の世界という二つの世界を結びつける、我々にとって身近な概念が一つあります。それは、「エントロピー」です。 先に、量子力学では、"bit"を扱うことはまずないと書きましたが、それは正確ではなかったかもしれません。量子力学の前身の統計力学では、あるいは統計力学の前身の熱力学では、エントロピーは、中心的な概念でした。そして、シャノンの「情報理論」の登場が明らかにしたように、"bit"は、エントロピーの単位に他なりません。 新しい「量子の理論」が、物理的世界と情報の世界のより深いつながりを明らかにするのなら、既に巨視的・日常的な世界で、物理的世界と情報の世界という二つの世界を結びつけているエントロピーが、量子の世界で果たしている役割を知ることは重要なことです。 「量子情報理論」の重要なコンテンツの一つとして、エントロピー概念の量子の世界への拡張が含まれなければなりません。 -------------------------- この間、blogに、blogの内容とは無関係な当面のセミナーの内容紹介が混在していましたが、少し整理しました。次のインデックスをご利用ください。 --------------------------  ● 「あまり知られていないかもしれないこと」 https://maruyama097.blogspot.com/2021/07/blog-post_26.html  ● 「量子力学と量子情報理論の違い」 https://maruyama097.blogspot.com/2021/07/blog-post_27.html  ● 「量子力学と量子情報理論の関係について」 https://maruyama097.blogspot.com/2021/07/blog-p

量子力学と量子情報理論の関係について

【量子力学と量子情報理論の関係について】 量子力学と量子情報理論は別のものだと思った方がいいと前回書きました。少なくとも、80年以上前に定式化された「量子力学」の応用として「量子情報理論」が派生したと考えるのは、科学史・理論史的な歴史的な関心は別として、学習上の実践的なメリットはないように思います。 古い「量子力学」のテキストをひっくり返さなくても、直接「量子情報理論」の学習から始めることは十分に可能です。現在の時点では、僕は、むしろそれが「量子の世界を理解する」上では、望ましいアプローチだと考えています。 もちろん、両者は、理論的にも思想的にも、沢山のものを共有しています。そのことは明らかです。だからこそ、勉強を始めようとしている人でも、二つの理論が違うことに気づかないでいる人のほうがむしろ多いのです。 僕は、こう考えています。 より基本的な「量子の理論」が歴史的に形成されつつあって、その理論から見ると、「量子力学」は、その理論の物理学への応用であり、「量子情報理論」は、その理論の情報理論への応用なのだと。 もちろん、歴史的に先行したのは、物理学の「量子力学」です。ただ、そのことは、古い「量子力学」が「量子の理論」で最も基本的であることを意味しません。一般に、学の歴史では、最も基本的な認識は、学の発展の最後に生まれるものです。  「ミネルバのふくろうは、たそがれに飛び立つ」 それでは、新しいより基本的な「量子の理論」と、そうではない「量子の理論」を区別はどこにあるのでしょう?僕は、「エンタングルメント」と「エントロピー」を主要な考察の対象としているか否かが、そのメルクマールになると考えています。 それについては、次回、もう少し詳しく触れたいと思います。 まとめページ:https://www.marulabo.net/docs/rho-talk/

量子力学と量子情報理論の違い

【 量子力学と量子情報理論の違い】 ここでは、物理学の「量子力学」と「量子情報理論」の違いについて述べてみようと思います。 どちらにも「量子」という名前がついているからでしょうか、二つの違いをあまり意識していない人が多いように思います。ただ、僕は、この二つは明確に異なるものだと考えた方がいいと思っています。 この区別は、実践的にも意味があります。量子コンピュータや量子通信の勉強を始めようと思った時に、必要なのは「量子情報理論」の学習です。古い「量子力学」のテキストの勉強から始めなければと考える必要はないと、僕は考えています。 物理学は、実在的な自然・物質を対象とします。「量子力学」は、物理学の一分野として、量子論の立場から、物理的な対象の運動法則の解明を目指します。情報理論は、情報を対象とします。「量子情報理論」は、量子論の立場から、情報を考察します。 「量子情報理論」では、「位置」や「運動量」や「エネルギー」(いずれも量子化されたものとして)を考察することはありません(アニーリング型の量子コンピュータでは、ハミルトニアンは大活躍するのですが)。「量子力学」では、これらは主要な考察の対象です。 一方、「量子力学」では、bit が主題になることはまずありません。「量子情報理論」では、bit あるいはその量子版であるqubitが、主要な考察の対象です。 今回は、両者の違いについて書きましたが、次回は、両者の関係について書いてみようと思います。 まとめページ:https://www.marulabo.net/docs/rho-talk/

あまり知られていないかもしれないこと

【 あまり知られていないかもしれないこと】 ショートムービー「観測演算子の一般化」を公開しました! このコンテンツは、先に公開した「YouTubeで学ぶ量子論の基礎」の最終セクションの「 Lesson 6 観測演算子の一般化 POVM」と同一の内容を再録画したものです。 同じコンテンツを繰り返したのには、理由があります。 今回のセミナーは、状態ベクトルの言葉ではなく、密度行列の言葉で量子の世界の基本的な原理を記述することを目標にしているのですが、この新しい目標のためには、新しい枠組みが必要になります。その新しい枠組みへの転換が、このコンテンツから始まります。それは、量子の世界を理解するのには、とても重要な枠組みなのです。 今回は、その一つとして「観測演算子」の拡張として、POVM (Positive Operator Valued Measurement )という概念を紹介します。観測演算子は、射影演算子だけではないのです。 残念なことに、こうした定式化は、量子論の教科書にものってなくて、多くの人には、ほとんど知られていないようです。驚くべきことに、「量子力学」の専門家にとってさえそうだと、ある人は語っています。 These are the most general postulates of quantum mechanics and, surprisingly, never appear in any textbooks on the subject. There are two reasons for this. First of all, some people consider the present topic too difficult. However, more importantly, more people are not even aware of them, even when they work within quantum mechanics and its applications! まとめページ:https://www.marulabo.net/docs/rho-talk/

Traceと密度行列

Traceというのは、行列の対角成分の和をとったものです。それだけですと、それがどういう意味を持つかは、直観的にはわかりにくいと思います。 一つ、はっきりしていることがあります。Traceをとるという演算は、多数の成分から構成されて独自の構造を持つ行列に、一つの数字を対応させるという演算だということです。それは、複雑なものに単純なものを対応づけるという意味では、二つのベクトルに、一つの数字を対応させる内積を取る操作に、似ているところがあります。 実は、Traceと内積には深い関係があります。 二つのベクトルの外積 |φ><ψ|は、行列を定義するのですが、この行列のTraceは、二つのベクトルの内積に等しいのです。(順序がちょっと変わっていますが)   tr(|φ><ψ|) = <ψ|φ> 量子の状態をベクトルで表すというスタイルでは、ベクトルの内積が重要な役割を果たしましたが、先のTraceと内積の関係式は、量子の状態を密度行列で表すというスタイルでは、行列のTraceが重要な役割を果たすだろうことを予感させるものです。 残念ながら、今回は、その話ではありません。セミナー全体を通じて Traceの果たす役割は明確になっていきますので、ご期待ください。 今回は、そのほんの入り口です。 続きは、YouTubeで! https://youtu.be/77F12wBBIjo?list=PLQIrJ0f9gMcMP-CPVK6wtgY3X7W4c0BSi スライド:https://drive.google.com/file/d/1J_wOe_Ukw2S41x9d25Ur_Bl17nGNB5Oo/view?usp=sharing まとめページ:https://www.marulabo.net/docs/rho-talk/

密度行列とは何か?

これまで、量子の状態をベクトルで表現してきました。例えば、量子ビットの状態は、状態ベクトルで表せば、|qubit> = a|0>+b|1> と、二つの状態ベクトルの「重ね合わせ」(ベクトルの和です)で表現されました。 それに対して、密度行列は、量子のシステムの状態を行列で表現したものです。では、どの ようにしてベクトルで表される量子の状態を、行列で表すのでしょう? 次のように考えます。ある量子システムで、状態|ψ_i>である確率をp_iとしましょう。この時、確率p_iを成分とする行列を考えます。 |qubit> = a|0>+b|1> の場合なら、|0>である確率p_0は |a|^2で、|1>である確率p_1は |b|^2になりますので、p_0とp_1、すなわち、|a|^2と|b|^2を成分とする行列を考えることにします。 ここでは、ベクトルの外積が行列になることを利用します。それでは、外積で作られる行列のどこにこの成分を割り当てるか考えましょう。うまい方法があります。 外積 |0><0|は、0行0列目の成分だけが1で、残りの成分は全て0の行列です。同様に、外積|1><1|は、1行1列目の成分だけが1で、残りの成分は全て0の行列です。 この時、p_0|0><0| + p_1|1><1|という行列として密度行列を定義します。0行0列目の成分がp_0で、1行1列目の成分がp_1の行列です。  ● 状態ベクトルを使った表示    |qubit> = a|0>+b|1>  ● 密度行列を使った表示    ρ = p_0|0><0| + p_1|1><1| = |a|^2|0><0| + |b|^2|1><1| 状態ベクトルを使った表示に出てくる a, bは複素数ですが、密度行列を使った表示に出てくる p_0, p_1 は、確率ですので 0と1の間に値を持つ実数です。これは、二つの表示スタイルの大きな違いです。 密度行列を作るのに利用した、確率 p_iと状態|ψ_i>のペア { p_i, |ψ_i> }の集まりを、「pureな状態のアンサンブル」といいます。その意味は、この量子システムで、状態|ψ_

ショートムービー「天空に「二重丸」を探せ!」を公開しました

【 ショートムービー「天空に「二重丸」を探せ!」を公開しました】 7月17日開催 マルレク 楽しい科学「宇宙と生命と知性とエントロピー」に向けたショートムービー第九弾「天空に「二重丸」を探せ!」公開しました。お楽しみください。https://youtu.be/mvPQJXhf_tQ?list=PLQIrJ0f9gMcPgRVThfw4w9WeDcdlweIV3 セミナーは、今週末です。セミナーのお申し込みは、次のページからお願いします。https://science-entropy.peatix.com/ 資料は、次のページからアクセスできます。 https://www.marulabo.net/docs/science-entropy/ ペンローズの宇宙論は、「サイクリック宇宙論」です。現在の宇宙の前に、その前身の別の宇宙があって、その宇宙にもまたその前身があって、その宇宙にもまたその前身があって..... というのがずっと続くという宇宙論です。 何を証拠にそんなことがいえるのか首をかしげたくなった人が多いかもしれません。でも、彼は、少なくとも、直前の宇宙が存在していたことは、現在の宇宙に残された痕跡で実証できるはずだと考えます。 彼の主張はこうです。 「前の宇宙で、巨大なブラックホールの衝突があったとしよう。」 ここで彼のいうブラックホールは、恒星起源のブラックホールでも銀河系中心のブラックホールでもありません。もっと巨大ブラックホールです。そのうち、僕らの天の川銀河とお隣のアンドロメダ銀河は衝突して、二つの銀河の中心にあったブラックホールは、一つに合体するのですが、そうした過程を繰り返して形成される、ある意味、宇宙規模の巨大なブラックホールが衝突するというお話です。 「その時、巨大なエネルギーが重力波として放出される。」 我々は、すでに、重力波で宇宙を観測するようになっています。ただ、そこで観測しているのは、とても微弱な「さざなみ」のような重力波です。ただ、彼のいう巨大ブラックホールの衝突が放出するのは、宇宙の何分の一かの質量を全てエネルギーに変えるような、破壊的な「つなみ」です。 それにしても、そんな驚天動地の大厄災が起きたとしても、それが「前の宇宙」の出来事なら、今の我々には関係ないのでは? でも、そうじゃないと彼はいいます。 「今の宇宙ができるビッグバン

ショートムービー 「イメージで見る「スケール変換」」を公開しました

【 ショートムービー 「イメージで見る「スケール変換」」を公開しました】 7月17日開催 マルレク 楽しい科学「宇宙と生命と知性とエントロピー」に向けたショートムービー第八弾「イメージで見る「スケール変換」」公開しました。お楽しみください。https://youtu.be/umPimAJ-3mA?list=PLQIrJ0f9gMcPgRVThfw4w9WeDcdlweIV3 セミナーは、今週末です。セミナーのお申し込みは、次のページからお願いします。https://science-entropy.peatix.com/ ペンローズは、宇宙の始まりの「無限小」と宇宙の遠い未来の「無限大」について、次のように考えました。 「無限小」のものを有限のものに拡張するスケール変換と、「無限大」のものを有限のものに圧縮するスケール変換が存在すれば、以前の宇宙の最後の姿の「無限大」を現在の宇宙の始まりの「無限小」とを滑らかに接続することができるはずだと。 ペンローズは、”Cycles of Time”の中で、無限大を有限なものに圧縮し、無限小を有限なものに拡張する Conformalなリスケーリングを構成し、さらに、旧宇宙から新宇宙へのクロスオーバーの時に、何が起きるかについて、詳しく述べています。 それは、”Cycles of Time”の本文ではなく、そのAppendixに概要が示されています。次の二つのAppendixです。  ● Appendix A: Conformal rescaling, 2-spinors, Maxwell and Einstein theory  ● Appendix B: Equations at crossover ただ、この二つのAppendixでの展開は、理解するのが少し難しいのです。今回のセミナーでは、そこに立ちいるのは、やめることにしました。 その代わり、無限のものを有限なものに移すという、ペンローズの宇宙論の仕掛けの中核のconformal mapのイメージを、身近な例でいくつか提供したいと思っています。 まず、最初に確認したいのは、conformal mapというのは、なにもペンローズが最初に発明したものではないということです。それは、古くから研究されてきた、数学的には、由緒正しいものです。 特に、複素平面の上半面(虚数部がゼロまた

ショートムービー 「永遠と一瞬、無限と有限 -- ペンローズの宇宙論」公開しました

【 ショートムービー 「永遠と一瞬、無限と有限 -- ペンローズの宇宙論」公開しました】 7月17日開催 マルレク 楽しい科学「宇宙と生命と知性とエントロピー」に向けたショートムービー第七弾「永遠と一瞬、無限と有限 -- ペンローズの宇宙論」公開しました。お楽しみください。 https://youtu.be/dGafXmfL0pg?list=PLQIrJ0f9gMcPgRVThfw4w9WeDcdlweIV3 昔、Javaのコミュニティに参加していたのですが、その時、コミュニティのイベントに、"CCC"という名前をつけたことがありました。今回紹介するペンローズの宇宙論も、"CCC"と名付けられています。まったく関係ない話ですね。 ペンローズの"CCC"は、"Conformal Cyclic Cosmology"の頭文字を取ったものです。 質量のある粒子は、光円錐の内側を通ります。光円錐の内側には、その「時空」の性質を決める「計量」が定義されています。それに対して、Conformalな構造というのは、質量のない粒子がその表面をたどる光円錐そのものの構造を指します。そこでは、光円錐の内側の構造には、興味がありません。 ペンローズの宇宙論は、宇宙の生成・発展・消滅が周期的に繰り返されるという「サイクリック宇宙論」です。それにしても、Big Bangからほぼ「永遠」の時間の後に、ほぼ「無限大」に広がった宇宙で、ある「無限に小さな」一点から、ほぼ「一瞬」のうちに、また新しい宇宙が生まれるというのは、どこか不自然です。 宇宙が生まれた「一瞬」と宇宙の遠い未来まで続く「永遠」。 宇宙が生まれた「無限に小さい」一点と宇宙の遠い未来での「無限大」に広がった宇宙。 「一瞬」と「永遠」、あるいは「無限小」と「無限大」といった、相互にまったく隔絶した姿で宇宙を見ていたら、以前の宇宙からその後の宇宙の、繰り返しの連続的発生をうまく説明できません。 ペンローズは、こう考えます。まず、「永遠」と「一瞬」について。 これは、我々には、大きな問題のように見えるが、光円錐上を光速で移動するものにとっては、何の問題にもならない。なぜなら、彼らには、「永遠」と「一瞬」の区別は存在しないと。 宇宙の始まりの「無限小」と宇宙の

ショートムービー「光子が見る宇宙の姿」公開しました

 【 ショートムービー「光子が見る宇宙の姿」公開しました 】 7月17日開催 マルレク 楽しい科学「宇宙と生命と知性とエントロピー」に向けたショートムービー第六弾「光子が見る宇宙の姿」公開しました。お楽しみください。 https://youtu.be/It4vNwQ_CnI?list=PLQIrJ0f9gMcPgRVThfw4w9WeDcdlweIV3 前回の「変化を続ける我々の宇宙」では、宇宙の始まりと宇宙の遠い未来では、宇宙の姿が全くといいほど変わっているという話をしました。一方は、超高温・超高密度・超高エネルギー、他方は、超低温・超低密度・超高エントロピーですから。 ただ、最後に、両者には意外な共通点があることものべました。それは、両者ともに、「質量のない粒子の世界」であるということです。 今回は、その共通点を、もう少し突っ込んで、質量のない粒子である光子の目から、宇宙がどのように見えるかを考えます。もちろん、時間さえ知らない光子に、目がある訳では無いのですが。 アインシュタインの有名な一般相対論は「重力の理論」ですが、相対論の始まりは重力のない特殊相対論でした。いずれの相対論にも共通するのは、時空の各点に「光円錐」を置くというアイデアです。 重力のない時、「光円錐」は、時空の各点に「一様」に置かれています。重力がある時、「光円錐」は、バラバラの向きに「非一様」に置かれます。それは、重力の作用で空間が歪んだからとイメージしてもいいのですが、正確には、こうした「光円錐」の分布こそが重力の源なのです。いずれの場合でも、相対論は「時空の理論」です。 重力があろうとなかろうと、質量のある粒子は、必ず「光円錐」の内側を移動します。それに対して、質量のない粒子は、重力があろうとなかろうと、必ず「光円錐」に沿って移動します。 このことは、宇宙の始まりだろうが、宇宙の遠い未来だろうが、光子にとっては、宇宙は同じようなものに見えることを意味します。 続きは、YouTubeで! pdfの資料は、次のページからアクセスできます。 https://www.marulabo.net/docs/science-entropy/ セミナーのお申し込みは、次のページからお願いします。 https://science-entropy.peatix.com/

ショートムービー「変化を続ける我々の宇宙」公開しました

【ショートムービー「変化を続ける我々の宇宙」公開しました】 7月17日開催 マルレク 楽しい科学「宇宙と生命と知性とエントロピー」に向けたショートムービー第五弾「変化を続ける我々の宇宙」公開しました。お楽しみください。 https://youtu.be/Nkp6KPN0FX8?list=PLQIrJ0f9gMcPgRVThfw4w9WeDcdlweIV3 今日のショートムービーは、短いです。5分で終わりますので、ぜひ、ご覧ください。 これまでの中間的なまとめと、次の転換へのステップの予告です。 我々の宇宙は、年齢と共にその姿を変えています。そうした宇宙観は、ニュートンもカントも、おそらくはアインシュタインも持っていなかったものです。 もちろん、我々の目には、宇宙が変化していることを感じることは難しいかもしれません。それは、我々の日々の日常が、あまり変化しないように思われるのと少し似ているかもしれません。ただ、我々の日常が未来永劫続くと考える必要はありません。もっとも、我々の「変わらぬ日常」や「波乱万丈の生涯」より、宇宙の方が安定しているのは事実です。 今回は、宇宙の変化をわかりやすく把握するために、一方では宇宙の始まりに遡り、もう一方では、宇宙の遠い未来の姿を考えて、それを比較します。 宇宙の始まりのBig Bangは、  ・超高温  ・超高密度  ・超高エネルギー の世界です。 一方、遠い宇宙の未来は、  ・超低温 (≒ 絶対零度)  ・超低密度 (密度≒ ゼロ)  ・超高エントロピー の世界になると考えられています。 なにからなにまで真逆の世界です。 ところが、それにもかかわらず、二つの世界には意外な共通点があります。 それは、この二つの世界を構成しているのは、主要には、質量のない光子だということです。ビッグバンを強烈な光の爆発とイメージしても構わないのですが、宇宙の終わりの最大級のイベントは、ブラックホールの蒸発です。ブラックホールは、光に変わります。 彼らは、空間を移動しますが、時間を知りません。 それがどういう意味を持ちうるかについては、次回以降に! pdfの資料は、次のページからアクセスできます。 https://www.marulabo.net/docs/science-entropy/ セミナーのお申し込みは、次のページからお願いします。 http

ショートムービー「宇宙を旅する光子の物語」公開しました

 【 ショートムービー「宇宙を旅する光子の物語」公開しました】 7月17日開催 マルレク 楽しい科学「宇宙と生命と知性とエントロピー」に向けたショートムービー第四弾「宇宙を旅する光子の物語」公開しました。お楽しみください。https://youtu.be/1mSSlal1gOQ?list=PLQIrJ0f9gMcPgRVThfw4w9WeDcdlweIV3 宇宙を旅するのは、光子(こうし)で、光子(みつこ)さんではありません。今回は、宇宙の至る所に偏在する光の話です。 我々に一番身近な光は、太陽が地球に降り注ぐ光です。 宇宙から見た地球は、青く美しい星ですが、地球が発する光は、基本的には、太陽の発する光の反射です。宇宙は、星々を除けば、ほとんど暗黒です。地球の近くでは、宇宙の暗黒の一点を、光り輝く太陽が占めています。それには、我々にとって大事な意味があります。 もしも、太陽と地球のシステムが、高エントロピーの「熱的平衡状態」にあったとすれば、地球上の生命は、太陽のエネルギーから、生命に役立つエネルギーを汲み出すことはできなくなります。 そのことをシュレジンガーは、「生物は、(熱的)平衡への衰退を回避している」と表現しました。生命現象を、エントロピーの関係で特徴づけたのは、彼が初めてです。慧眼です。 地球に降り注ぐ太陽からの光について述べましたが、太陽は宇宙に存在する無数の恒星の一つに過ぎません。その恒星系に生命が存在すると否とにかかわらず、恒星は、無数の光子を宇宙に送り出しています。 宇宙には、無数の光が飛び交っています。ビッグバンの直後に生みだされた光子を観測したものが、「宇宙マイクロ波輻射」です。137億年前に発せられた光を、我々は、目にしているのです。 宇宙の遠い未来(10^99年後)に、ブラックホールがホーキング輻射で蒸発するというのですが、ブラックホールからは光子が飛び出して、それは光に変わるのです。 以前に、「宇宙が終わるまでには、途方もない時間がかかる」と書きました。人間にとっては、ほとんど「永遠」といって時間がかかります。また、それは耐えられないほど「退屈」だろうとも書きました。 ただ、それは人間にとっての話です。光速で運動する光子にとっては、宇宙の終わりまでの様子は、全く変わったものになります。 宇宙を旅する光子は、何億光年の空間を移動しようと、全

ショートムービー「宇宙の始まりの「前」と 宇宙の終わりの「後」」公開しました

【 ショートムービー「宇宙の始まりの「前」と 宇宙の終わりの「後」」公開しました】 7月17日開催 マルレク 楽しい科学「宇宙と生命と知性とエントロピー」に向けたショートムービー第三弾「宇宙の始まりの「前」と 宇宙の終わりの「後」」公開しました。お楽しみください。 https://youtu.be/n6Op4eqru3A?list=PLQIrJ0f9gMcPgRVThfw4w9WeDcdlweIV3 これまで、「宇宙の終わり」の話をしてきたのですが、今回は、「宇宙の始まり」の話をします。もう少し踏み込んで、「宇宙の始まりの「前」と 宇宙の終わりの「後」」の話をしようと思います。 宇宙が、137億年前に突然起きたBig Bang で始まったことは、今では、多くの人が「知って」います。でも、それって、本当は不思議だと思いませんか? なぜって、Big Bangによって、時間と空間が生み出されるのであって、Big Bangの前には、時間も空間も存在しないというのですから。 哲学者のカントは、時間と空間に(それは「宇宙」と考えてもいいのです)、始まりがあると考えても、終わりがないと考えても、どちらの考えも正しいのに、二つの考えを合わせると矛盾すると考えました。それは、それで正しいように思います。 「宇宙はBig Bangで始まった」と教えられたことを、そのまま正しいと思い込むより、突き詰めて考えたら、矛盾に陥ったとしても、それはそれで意味のあることだと、僕は思います。 今回は、僕らの宇宙がBig Bangで始まる「前」に、僕らの宇宙と何らかのつながりがある、もう一つの宇宙があるのかもしれないという宇宙論を紹介します。この宇宙論では、僕らの宇宙が終わって、何もなくなったた「後」に、僕らの宇宙と何らかのつながりがある、もう一つの宇宙が生まれるかもしれません。 宇宙が、生成・発展・消滅を繰り返すという宇宙論を、「サイクリック宇宙論」といいます。去年ノーベル賞を取った、ペンローズの宇宙論は、そうした「サイクリック宇宙論」です。 もう一つ。小さなことですが、宇宙が生成・発展・消滅する場、あるいは宇宙達の集まりを、"Aeon (イーオン)" と呼びます。あのスーパーのイオンと、多分、語源は一緒です。Aeon自身は、我々が住む宇宙の時空とは独立です。 面白いのは、Aeo