はじめに −− 情報ネットワークの新しい構造

【  マルレク「「知識のハブ」の変化を考える」を開催します 】

この間、「embeddingの共有・蓄積・交換の世界の拡大」という共通の視点から、

 ● マルレク「機械の言語能力の獲得を考える」
 ● マルレク「embeddingプログラミングの基礎」

という二つのセミナーを開催してきました。

マルレク「「知識のハブ」の変化を考える」は、これら二つのセミナーに続く、embedding シリーズの第三弾です。

今回の投稿では、マルレク「「知識のハブ」の変化を考える」の最初のセッション「はじめに −− 情報ネットワークの新しい構造」を紹介しようと思います。

【 はじめに −− 情報ネットワークの新しい構造 】

このセッションは、SNS等えの「コミュニケーションのハブ」や、そのより強い表現である「ハブとしてのメディア」を侵食する、新しい構造がネットワークの世界で生まれているのではないかという問題意識を述べた試論です。

基本的には、「言語能力・意味を理解する能力」を持った機械の登場が、コミュニケーション・チャンネルにどのような変化を引き起こすのかを考えようということなのですが、まだ、説得力のあるものには展開できていないことは自覚しています。

ここで直接扱っているのは、コミュニケーション・チャンネルの技術論です。ただ、そこに基礎を持つ従来型の「コミュニケーション論」「メディア論」は、「言語能力を持つ機械」の台頭という、現実の非連続的な巨大な変化の中で、その有効性・妥当性を急速に失うだろうと考えています。

【 ネットワークと「ハブ」の働き 】

ここでは、代表的なネットワーク・トポロジーの一つである、「ハブ・アンド・スポーク」トポロジーの紹介をしています。

車輪が何度も再発明・再発見されたように、「ハブ」構造も何度も何度も再発見・再利用されています。交通、物流、産業、放送、IT(USBハブなど)といった、身近なところにも様々なハブ構造があります。

ネットワークのモデルについて言えば、ネットワーク全体でのノード間の関係がいかなるものであっても、ネットワークは、ノード間の一対一の関係を基礎として構成されています。「ハブ」構造を持つネットワークについて語る前に、より基本的なノード間の一対一の関係からなるネットワークの構造を考えたいと思います。

【 「参照枠」としての Shannonの通信チャンネルモデル 】

1948年のシャノンの通信チャンネルモデルは、通信は「情報のソース」と「情報の宛て先」の二者の一対一の関係として記述されています。これを、議論の「参照枠」として取り上げたいと思います。

彼はこう言います。

「通信の基本的な問題は、情報のソースで選択されたメッセージを、正確であれ近似的であれ、情報の宛て先で再生産することである。」

また、彼はこう言います。

「多くの場合、そのメッセージは意味を持っている。すなわち、そのメッセージは、あるシステムに従って確かな物理的実体あるいは概念的実体を、参照するかそれに関連している。」

「ただ、こうしたの意味論的な諸側面は、工学的問題とは無関係である。
重要な通信的側面は、実際のメッセージは可能なメッセージの集合の中から選択された一つのメッセージだと言うことである。」

「通信システムは、実際に選択されたメッセージだけに対してではなく、全ての可能な選択に対して機能するように設計されていなければならない。なぜなら、設計の時点では、どのメッセージが選ばれるかは、わからないからである。」

このモデルにおいて「意味」は工学的な問題とは無関係とされ、重要なのは可能なメッセージの集合から一つを選択するプロセスであると定義されました。

ただ、当時「意味」が重要視されなかった背景には、意味の生成や解釈ができるのは通信システムの外部にいる人間だけであるという前提があったのではと感じています。

【 Shannonモデルの応用とエントロピー 】

このアプローチは強力なもので、かつ、極めて生産的なものでした。

このShannon由来の通信路モデルは、現代では意識されることは少ないのですが、あらゆる情報のディジタル化の基礎になりました。それは、現在のネットワーク上の「コミュニケーションのハブ」と呼ぶべきもの、例えば、ほとんどすべてのSNSに応用されています。

同時に、この通信路モデルは、その誕生時から符号化の理論を通じて、暗号理論と深く結びついていました。それは、効率的な情報圧縮の限界を示し、あわせて、情報を隠すための安全な通信の限界を明確に定義しました。

Shannonの理論は、通信システムの全ての世代交代を貫いて、その上での安全で高速な通信の基礎を提供しています。

重要なことは、Shannonが通信システムの実践的な分析を通じて、情報量=エントロピーという新しい理論的概念に到達したことです。エントロピー概念の拡大とその各分野への浸透は、現代の科学技術の大きな特徴となっています。

【 情報ネットワークの新しい構造:意味の生成と大規模言語モデル(LLM) 】

セッションのこの部分で試案として提起している、新しいネットワーク構造では、従来のネットワークが情報の「再生産」を課題としていたのに対し、この新しい構造の課題は「新しい意味を持ったメッセージを生産すること」へと変化しています。

そこでは、大規模言語モデル(LLM)がエンコーダー、デコーダー、および「埋め込み(Embedding)」の処理を担います。

もっとも、こうしたモデルがShannonのモデルのような射程を持ちうるとは、考えていません。ただ、意味の生成と解釈を担う人間が、通信システムの外部に存在するモデルは、維持し難くなるのではと感じています。かといって、意味の生成と解釈を担いうる機械的エージェントを通信システムにすっぽり取り込むのも考えものです。

元々のShannonのモデルは、「送信者」「受信者」と擬人化された解釈を許すのですが、それが人間だとは言っていません。だから人間の介在なしにチャンネルを物理的に接続・拡張することができます。

おそらく、意味の生成と解釈を担いうる機械的Agentのネットワークへの登場を過渡期として、人間もそうした同等の能力の担い手として両者ともにフラットに捉える方が見通しが良くなるのではと考えています。


−−−−−−--- リンクのまとめ −−−−−−---

マルレク「「知識のハブ」の変化を考える」Webページ
https://www.marulabo.net/docs/knowledgehub/

マルレク「機械の言語能力の獲得を考える」Webページ
https://www.marulabo.net/docs/competence/

マルレク「embeddingプログラミングの基礎」Webページ
https://www.marulabo.net/docs/embedding2/

はじめに −− 情報ネットワークの新しい構造:blog
https://maruyama097.blogspot.com/2026/04/blog-post.html

はじめに −− 情報ネットワークの新しい構造:pdf
https://drive.google.com/file/d/1ZrbsHcjjaBA5GbTd7u-3mGgCgQhQoifq/view

はじめに −− 情報ネットワークの新しい構造:YouTube
https://youtu.be/wIXawntiI-Y?list=PLQIrJ0f9gMcNclFZWE8Dmk3q1PBDnTxrU

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