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「エンタングルする認識」ページ更新しました

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 【 「エンタングルする認識」ページ更新しました 】 MaruLabo「エンタングルする認識」ページを更新しました。 https://www.marulabo.net/docs/philosopy/ 10/29マルレク「エンタングルする自然 ver. 2」の開催に合わせたものです。 https://www.marulabo.net/docs/science-entanglement2/ 10/29セミナーの理解に、参照ください。 「エンタングルする自然」「エンタングルする認識」二つのページは関連しています。 「エンタングルする自然」のページは、21世紀の自然観の中核に「エンタングルする自然」という自然観が生まれていることを紹介しています。「エンタングルする認識」のページは、こうした自然観を、我々がどのように形成・獲得してきたかをみようとしたものです。 「自然の認識」は、「自然」と「認識」という二つの項からできています。ただ、その二つの項はまったく切り離された別々のものではありません。「自然」が新しい相貌の下に立ち現れ始めたということは、「認識」の飛躍が起きつつあるということに他なりません。それは、人間が新しい認識のスタイルを獲得しつつあることを意味します。 僕は、エンタングルメントの認識が、現時点での人間の認識能力の飛躍の中心舞台だと考えています。 小論は、こうした進行中の転換を、1964年のベルの定理(第一部)、1985-6年の対話型証明の登場(第二部)、そして2020年のMIP*=RE定理(第四部)の三つのトピックを中心に概観したものです。 これらは、1930年代のアインシュタイン、チューリング、フォン・ノイマンの仕事に淵源するものです。 このページの各Partの関係については、スライドの図を参考にしてください。 量子コンピュター(第三部)のトピックは、「自然」と「人間の認識」という二項のコンテキストからではなく、「自然と人間と機械」という三項の関係として捉えるのがいいと考えています。 (このあたりの問題については、機械の利用と認識能力の拡大を扱った次のショートムービーをご覧ください。 https://youtu.be/j8flZDzL6yA?list=PLQIrJ0f9gMcMlJbm6pdZKdXwrzWSGyeqL ) 認識の「飛躍」と言いましたが、大き

ベルの再評価

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 【 ベルの再評価 】 今度のマルレクで、量子のもつれあい=量子エンタングルメントが実在することを理論的に示し、量子論の基礎を固めた物理学者ジョン・ベルの話をしようと思っています。 残念ながら、ベルはその大きな功績に比して、あまり知られていないように思います。多分、それは、一般の人には、彼がノーベル賞をもらっていない物理学者であることが大きいように思います。 今年のノーベル賞が、エンタングルメントの実証実験の分野に与えられたことは、ベルの再評価の大きなきっかけになったと思います。 事実、1964年のベルの論文の引用数は今年2022年になって、ロックスターがニュー・アルバムを発表した時のように飛躍的に伸びました。(例えば、https://inspirehep.net/literature/31657 ) このことは、一般の人だけではなく一般の物理学者の少ない部分も、ベルの論文にこれまであまり関心を払っていなかったことを示しているのではと思っています。杞憂でしょうか。 ノーベル賞の影響力、あらためてすごいなと思います。 ベルは、1990年の10月1日、ジュネーブで脳出血で不慮の死を遂げます。 20世紀最大の物理学者の一人だと、多くの人が(僕も)思っているのですが、なぜ、ノーベル賞が与えられなかったかについては、Wikipedia には次のような記述があります。  「ベルは知らなかったのだが、彼はこの年の   ノーベル賞の候補に指名されていたと、   広くいわれている。」 確かめることはできないのですが、ありそうなことかもしれません。ベルは運が悪かったのかも。ただ、それは、そうであってほしいという「都市伝説」かもしれません。 去年も今年もノーベル物理学賞は、10月4日に発表されています。もしも、実証的な実験が重視されるノーベル物理学賞をベルが1990年に受賞することができたのなら、アスぺやクラウザーも受賞できたかと思います。1990年のノーベル物理学賞は、フリードマンら「クォーク模型」の三人に与えられています。 ベルの研究とその評価の流れを見ていると、科学的な研究の評価には、想像以上に長い時間がかかることがわかります。エンタングルメントの発見以来の簡単な年表を作ってみました。   1935年 アインシュタインらエンタングルメント発見   1964年 ベル エンタングルメン

10月29日 マルレク「エンタングルする自然」を開催します

【 10月29日 マルレク「エンタングルする自然」を開催します 】  10月29日 マルレク「エンタングルする自然 -- 「逆理」から「原理」へ」を開催します。 お申し込みは、次のページからお願いします。https://entangled-nature.peatix.com/ 今回のマルレクのテーマは「量子エンタングルメント=量子もつれ」です。 2022年のノーベル物理学賞は、アラン・アスペ、ジョン・クラウザー、アントン・ツァイリンガーの三人に与えられました。三人は、いずれも「エンタングルメント」にかかわる実証的な実験の分野で大きな仕事をしてきた人たちです。三人のノーベル賞受賞をきっかけに、量子の世界の不思議な現象である「量子エンタングルメント」に対する関心が高まることを期待しています。 エンタングルメントは、現代では量子の世界ひいては自然のもっとも基本的な現象だと考えられています。今回のセミナーでは、「エンタングルする自然」という新しい自然観の成立を、一つのドラマとして紹介しようと思います。 アインシュタインが今から80年以上前に、量子論の矛盾を示す「逆理」として提示したこの現象は、当時の量子論の主流派であったボーアたちからは、黙殺されました。ベルは、ボーアたちとは異なる立場からこの問題を考え、量子論の正しさを理論的に確立します。 21世紀になって、マルデセーナやサスキンドは、量子論と相対論の統一を目指す取り組みの中で、エンタングルメントの重要性に改めて気づきます。先にも述べたように、エンタングルメントは、現代では、量子論の重要な「原理」の一つとして扱われているのです。 「逆理から原理へ」というタイトルは、そのことを指しています。 今回のセミナーは、以前マルレクでおこなった「 楽しい科学 -- エンタングルする自然」 というセミナー https://www.marulabo.net/docs/science-entanglement/   と基本的には同じ内容にしようと思っています。「楽しい科学」というタイトルが示すように、科学が好きな多くの人に、自然観の変化の大きな流れとエンタングルメントの重要性を、楽しく伝えられればと思っています。 前回のセミナーとの違いは、主に、次の二点にあります。ご期待ください。 ● エンタングルメントについて、ベルの果たした大きな役割を

タイプで打つ数式

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 【 タイプで打つ数式 】 ある論文の参考文献に挙げられている本をネットで見かけたので、チラ見。全ての数式がタイプで打たれている。確かに、昔はそうだった。プリンストンの赤い表紙のレクチャー・ノートもみなそうだった。もう忘れていた。 ハーフ・スペース、半改行を駆使していて、ちょっと感心する。Theta関数についての本なのだが、肝心のthetaはすべて手書き。すごい手間だと思う。これ本人がタイプしたのかしら。助手がタイプしたのなら、すごく優秀な助手。どちらにしても、バグ取りも大変だったと思う。 今では、ワードでもパワポでもWebでも、かなり自由にLateXが使える。TeXやLaTeXをつくったクヌースやランポートは、本当にエライと思う。数学の論文を書く手間、講義のスライドを作る面倒さは、大幅に改善された。その上、読みやすい。感謝しかない。 LaTeXでつくったスライドなしで、講義すること学会で発表することは大変だったと思ったが、多分、実は、それはそうでもないことに気づく。黒板とチョークを使えばいいのだ。 論文のアイデアやその理解は、ただ、そうした表現手段とは独立に生まれるものだ。それには、頭さえ動けば、紙と鉛筆で十分なのかも。多分それは、時代が変わっても変わらないだろう。 CS(計算科学)専攻の院生に、「この本読んどいて」とMumfordの本を指示するCSの教授も格好いいな。

2022年ノーベル物理学賞の三人

 【 2022年 ノーベル物理学賞の三人 】 2022年のノーベル物理学賞は、アラン・アスペ、ジョン・クラウザー、ア ントン・ツァイリンガーの三人に与えられた。三人とも「エンタングルメント」つながりだ。 アスペは、局所実在論を否定し、量子論とエンタングルメントの実在的基礎を確立した画期的なジョン・ベルの仕事「ベルの不等式」を、実験的に検証した人。 クラウザーは、「ベルの不等式」をわかりやすい対話型ゲームで置き換えた「 CHSHゲーム」を考えた人。 ツァイリンガーは、エンタングルメントを利用した、ベネットらの「量子テレポーテーション」を実験的に成功させた人。 自分も、関心を持っている分野なので、これでエンタングルメントに関心を持つ人が増えればと少し嬉しく思う。 その反面、なんで、これらすべての元祖であるジョン・ベルにノーベル賞が与えられなかったのかと、いつも残念に思う。理論より実験が重視されるとは言われているのだが、アスペの実験がなされたときに、ベルとアスペが一緒にノーベル賞あげてもよかったと思う。 MaruLaboには、エンタングルメント関連のコンテンツがたくさんある。興味ある人は、参照してほしい。 ● アスペの仕事の関連 MaruLabo「 エンタングルメントで理解する量子の世界」 https://www.marulabo.net/docs/entangle-talk/ MaruLabo 「エンタングルメント」関連ページ https://www.marulabo.net/marulabo-entanglement/ ●  クラウザーの仕事の関連 MaruLabo「nonlocal game とInteractive Proof」 https://www.marulabo.net/docs/nonlocal-game/ https://youtu.be/ABqomQKq8FI?list=PLQIrJ0f9gMcMzPu0NUHkZz9n7mU7UzwkB ●  ツァイリンガーの仕事の関連 MaruLabo「 エンタングルメントと量子テレポーテーションを学ぶ」 https://www.marulabo.net/docs/teleportation/ MaruLabo「 量子通信入門 -- 量子ゲートで学ぶエンタングルメント」 https://www.marulabo.

Regevが示したこと (3)

【 Regevが示したこと (3) -- LWE問題の古典論的還元 】 「ラティス暗号入門」のセミナーは、ひとまず終わりました。そこでは、「ラティスとは何か?」「LWE暗号とは何か?」について入門的な解説を行いました。 今回のセミナーの第三部では、「ラティスとラティス暗号」という章を設けていたのですが、時間の関係で、セミナーではほとんど語ることができませんでした。 入門講座という性格にもよるのですが、このセミナーでは、この分野で最も重要な貢献を果たしたRegevの仕事の紹介は、十分なものではありませんでした。その上、セミナーで主要に取り上げたのは、2005年のRegevの論文だけでした。 Regevはこの2005年の論文以降も、活発に活動を続け、暗号の世界に理論的に大きな影響を与えました。 ここでは、彼が2005年以降発表した論文から、次の三つのトピックを補足しようと思います。 ● 2013年 LWE問題のラティス問題への古典論的還元 Regev et al., Classical Hardness of Learning with Errors , 2013 ● 2015年 DGサンプリングとラティス問題の関係 Regev et al., Solving the Shortest Vector Problem in 2^n Time via Discrete Gaussian Sampling, 2015 ● 最近の話題 Regev, Quantum Computation and Lattice Problems, 2018(<= 2003) 今回は、2013年の「LWE問題の古典論的還元」論文についてです。 --------------------- 動画「LWE問題の古典論的還元」を公開しました。ご利用ください。 https://youtu.be/jJTSzzsJXNI?list=PLQIrJ0f9gMcPtw-6OwIOO2rFKu_A-7OfF この動画のpdf は、こちらからアクセスできます。 https://drive.google.com/file/d/1FVbyQVmgg1yNl2nBxMDtKsIXuV7rX6Hd/view?usp=sharing 「ラティス暗号入門」のまとめページはこちらです。 https://www.marul

6/25 マルゼミ「エントロピー論とカテゴリー論」の講演ビデオ公開しました

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  【 6/25 マルゼミ「エントロピー論とカテゴリー論」の講演ビデオ公開しました】 MaruLaboでは、以前に行われたセミナーのビデオを公開しています。今回は、6月25日に開催されたマルゼミ「エントロピー論とカテゴリー論」の講演ビデオの公開です。 ご利用ください。 6/25 マルゼミ「エントロピー論とカテゴリー論」の講演ビデオの再生リストのURLです。 https://www.youtube.com/playlist?list=PLQIrJ0f9gMcO9a52VkdEjtFr-N4ihNrnS この再生リストは、次の三つのビデオを含んでいます。 ● 「第1部 新しいエントロピー論の登場」 https://youtu.be/gsXwFsk9gIg?list=PLQIrJ0f9gMcO9a52VkdEjtFr-N4ihNrnS ● 「第2部 カテゴリー論的アプローチの基礎」 https://youtu.be/jR0sMfzkacA?list=PLQIrJ0f9gMcO9a52VkdEjtFr-N4ihNrnS ● 「第3部 相対エントロピーのカテゴリー論的解釈」 https://youtu.be/AJtHytcOVYg?list=PLQIrJ0f9gMcO9a52VkdEjtFr-N4ihNrnS このセミナーの講演資料は、次からアクセスできます。 https://drive.google.com/file/d/1kVIW8rTV-nqvG31HLNEzGmeQ9MMMEyG8/view?usp=sharing このセミナーのまとめページは、次のページです。 https://www.marulabo.net/docs/info-entropy5-addendum/