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7/30 マルレク 「並列・分散アルゴリズムの基礎」講演ビデオ公開

【 7/30 マルレク 「並列・分散アルゴリズムの基礎」講演ビデオ公開 】 MatuLaboでは、開催したセミナーの講演ビデオを公開しています。 今回は、7月30日に開催されたマルレク「並列・分散アルゴリズムの基礎」の公開です。 ---------------------------- このセミナーには、大きく二つの目的があります。 第一は、「排他制御 Mutual Exclusion 」「生産者・消費者同期 Producer-Consumer Synchronization 」といった基本的な並列アルゴリズムを、改めて学ぶことです。 これらのアルゴリズムは、1960年代の半ばにダイクストラらによって定式化されたもので、計算科学のいわば「古典」と言ってもいいものです。 ただ、こうした知識が、現代では不要になったわけではありません。 セミナーの第二の目的は、こうした並列・分散アルゴリズムの基礎理論が、現代ではどのように捉え返され新しい理論化がなされているのか、その一端を紹介することです。 ---------------------------- 次が、講演ビデオの再生リストのURLです。 https://www.youtube.com/watch?v=BS0UByMriBM&list=PLQIrJ0f9gMcOxhU_wwXXGuExXdLqRKuWP この再生リストは、次の四つのビデオを含んでいます。 ● 並列・分散アルゴリズムの基礎 (1) 排他制御 ダイクストラ https://youtu.be/BS0UByMriBM?list=PLQIrJ0f9gMcOxhU_wwXXGuExXdLqRKuWP ● 並列・分散アルゴリズムの基礎 (2) 排他制御 ランポート https://youtu.be/LnVpLb2WFI8?list=PLQIrJ0f9gMcOxhU_wwXXGuExXdLqRKuWP ● 並列・分散アルゴリズムの基礎 (3) 生産者消費者同期 https://youtu.be/EwZsNCYsFow?list=PLQIrJ0f9gMcOxhU_wwXXGuExXdLqRKuWP ● 並列・分散アルゴリズムの基礎 (4) アルゴリズムの正しさへのアプローチ https://youtu.be/Qg9FzNcTC78?list=PLQIrJ0f9g

ベルの定理のブルース

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【 ベルの定理のブルース 】 面倒な話が続いたので、今回は、休憩です。 1990年の1月に、ベルはCERNで "Indeterminism and non locality 非決定論と非局所性"という講演をします。ビデオが残っています。 https://www.youtube.com/watch?v=3l9HtG-VZCU&t=1909s    遠隔作用がないという立場をとれば、決定論になる。  ただ、決定論の立場をとれば、遠隔作用が出てくる。 ベルが発見したのは、簡単にいうとそういうことなのですが、それがミュージシャンを刺激して「ベルの定理のブルース」という曲ができたと、講演の中で楽譜と歌詞の一部紹介しています。 (  https://quantumtantra.tumblr.com/post/101941768645/bells-theorem-blues-doctor-bell-say-we  から曲が聞けます。)  Doctor Bell say we connected  He call me on the phone  Doctor Bell say united  He call me on the phone  But if we really together, baby  How come I feel so all alone?  ドクターベルは、私たちはつながっているという  彼も、電話をかけてきてそういう  ドクターベルは私たちは一体だという  彼も、電話をかけてきてそういう  でも、私たちが本当に一緒なら、あなた  どうして、私はいつも一人だと感じるの?  It’s so easy to forget you  Last night I did it fifty times  And I never think about you  Except from nine to nine  Since we got tangled up in quantum honey  Can’t get that sweet thing off my mind.  あなたを忘れるのは簡単なこと  昨日の夜は、50回もそうした  あなたのことなど考えもしない  9時から9時までの時間以外は  私たちは、量子のよ

対話型ゲームの射程

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【 対話型ゲームの射程 】 CHSHゲームのように、出題者と回答者の二組の対話で進行するゲームを対話型ゲームと言います。 このセッションでは、まず、アスペによるベルの定理の実証的な検証実験とCHSHゲームという対話型ゲームによるアプローチの対応関係を見ていきます。 二つの入力 X, Yを受け取って、二つの出力 A, Bを返す実験装置があるとしましょう。最初は、どんな仕掛けで入力を出力に変えているのか直接にはわからないにしても、実験を繰り返すと、入力と出力のデータの間にある統計的な相関を見つけることができるようになるかもしれません。 まあ、ある場合には二つのデータの間に何の相関も見つからないかもしれないのですが。話は飛ぶのですが、現代の暗号技術の主流になりつつあるラティス暗号のLWE( Learning With Errors )は、一様にランダムなデータと、その中に正規分布する小さなノイズ紛れ込ませたデータを、相互に区別することが難しいことを利用しています。 実験装置が受け取る入力データ X, Y は、対話型ゲームでプレーヤー二人が出題者から問題として受け取るデータに対応します。実験装置の出力データ A, B は、対話型ゲームでプレーヤー二人が出題者に返す回答に対応します。 こうしてみると、対話型ゲームのチーム・プレーヤー二人は、観測装置との比較では、ブラックボックスの「中の人」として振る舞っていることになります。 このプレーヤーは、頭を絞ってゲームに勝つための最良の「戦略」を追求します。それは、隠れた相関を最も敏感に感じ取るための最良の観測装置にゲームを変えます。 入力と出力の相関は、入力 X,Y が与えられた時の出力 A, Bの条件付き確率  P(A, B | X, Y) で表現できます。入力と出力の具体的な値を、x, y, a, b として、これら全てが 0か1の値を取るとすると、先の相関は、次のように分解できます。  p( a, b | x, y )       = p( a, b | 0, 0 )+ p( a, b | 0, 1 )+ p( a, b | 1, 0 )+ p( a, b | 1, 1 ) このとき、 xy = a + b (mod 2) でゲームの勝敗は決まるのですが、プレーや二人はこのルールのもとで、ゲームの勝率が最大になるような「戦

non-local ゲーム

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 【 non-local ゲーム 】 「二人がエンタングルした量子を共有する」 CHSHゲームのnon-local 版は、こうした想定から始まります。ただ、この想定に違和感を持つ人も多いと思います。 一つは、「量子を「持つ」ことなんかできるの?」というものです。確かに、ベルの思考実験でもアスペの実験でも、最初に想定され実験されたエンタングルする量子は光の量子である光子でした。光子は、文字通り光のスピードで運動しますので、もちろん手に持つことはできません。 ただ、non-localゲームの想定は、「二人がエンタングルしたボールを共有する」と考えてもいいのです。 光子だけでなく、電子も陽子も中性子もエンタングルします。それは、原子もエンタングルするということです。エンタングルした原子から、エンタングルした分子が作れます。そうしていけば、エンタングルしたボールだってできるはずです。 物理学者のサスキンドは、二つのチームに別れてエンタングルした物質の片方づつを集めていけば、地球大のエンタングルした物質も、太陽系大のエンタングルメントした物体も、ついには、エンタングルメントするブラックホールだって作れるはずだと言っています。この話は、今回のセミナーでサスキンドとマルデセーナの「ER=EPR仮説」の中で紹介しようと思います。 non-local CHSHの前提を「二人がエンタングルしたボールを共有する」と言い換えても、まだ誤解がありそうです。 それは、多分「共有する」という言葉がまずいのだと思います。これだと一つのボールを二人が共有するというイメージが、先に浮かびます。 そうではないのです。ボールは物理的には二つあります。片方のボールをアリスが、もう片方のボールをボブが持っているのです。アリスが自分のボールをツンツンしようが、ボブが自分のボールでキャッチボールしようが、それは自由にできます。 ただ、二つのボールが全く独立かというと、そうではありません。この二つのボールは、相互にエンタングルメントしています。そのうえ、そのつながりは、直接には目には見えません。不思議な関係です。 こうした non-local なCHSHゲームの想定は、量子を対象にした大規模な実験施設でしか検証できないものとしてのエンタングルメントのイメージを大きく変えるものです。それがその後、どのように発展してい

CHSHゲーム -- local

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【 CHSHゲーム -- local 版 】 今回は、簡単なゲームを紹介します。  アリスとボブのチームが、胴元の出す問題に答えて勝負します。アリスとボブは、チームなのですが、ゲーム中は会話を禁じられています。二人は、別々に胴元の質問に答えなければなりません。 突然、ゲームの話を始めたので、これまでのエンタングルメントやベルの定理の話となんの関係があるんだと思われるかもしれません。 たしかにそうですね。今回のセッションで紹介するゲームは、実は、エンタングルメントとは、直接は関係ありません。 ただ、次回、このゲームにエンタングルする量子が登場します。そこでは、アリスとボブが、エンタングルした量子の片割れをそれぞれ持つという想定が加わります。 それ以外、ゲームの勝ち負けのルールも、アリスとボブがゲーム中会話してはいけないというルールもそのままなのですが、ゲームの様相が変わります。 今回紹介するゲームでは、アリスとボブのチームが勝つ確率は、最大でも75パーセントなのですが、次回紹介するゲームでは、アリスとボブのチームが勝つ確率は85パーセントになります。 それは、古典論=局所実在論のもとでのベルの不等式を、量子論での観測が破ることと同じ現象です。エンタングルメントは不思議なパワーを持っているのです。 今回のゲームを localなゲーム、次回紹介するゲームを non-local なゲームと呼ぶことにしましょう。 ------------------------ 「Bellの定理 (3) -- CHSHゲーム local」を公開しました。 https://youtu.be/O3tyWqWiSFs?list=PLQIrJ0f9gMcN3x9bET7QoK2YWs8dfsKNa スライドのpdf https://drive.google.com/file/d/1IdJAg3Vuiop-sczc5wXEqJ8Xay8_M77a/view?usp=sharing blog:「CHSHゲーム -- local」 https://maruyama097.blogspot.com/2022/10/chsh-local.html まとめページ「エンタングルする自然 ver.2 」 https://www.marulabo.net/docs/science-entanglement2/ まとめ

CHSHのアイデア

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【 CHSHのアイデア 】 ベルの不等式は、CHSHの不等式と呼ばれることがあります。 このCHSHとは何を意味しているんでしょうか? IT系の人なら、シェルを変えるchsh (change shell)コマンドを連想するかもしれません。残念ながら、それとは関係ありません。 CHSHは、ベルの理論をわかりやすい形に書き換えた四人の物理学者のイニシャルを並べたものです。  Clauser, John  Horne, Michael  Shimony, Abner  Holt, Richard 先頭のクラウザーは、今年のノーベル賞を受賞しました。同じく今年のノーベル賞を受賞したアスぺは、CHSHたちの定式化に基づいて、ベルの理論、エンタングルメントが実際に存在するという理論を、実験的に証明しました。 CHSHの定式化がどういうものであるかは、それに基づいたアスペの実験をみるのがわかりやすいと思います。 アスペの実験装置では、エンタングルした量子の片割れを、右と左の検出器目掛けて打ち出します。左側には二つの検出器A0とA1が置かれ、右側にも二つの検出器B0とB1が置かれます。これらの計四つの検出器が観測した値を a0, a1, b0, b1としましょう。 これらの検出器が観測しようとしているのは量子のスピンです。重要なことは、量子のスピンは、上向き(+1)か下向き(−1)の二つの値しかとらないことです。どんな観測を行っても、a0, a1, b0, b1は、+1かあるいは−1の値しか取りません。 ここからが、CHSHのアイデアが光るところです。 a0 = +1 あるいは a0 = −1で、b0 = +1 あるいは b0 = −1ということは、a0 = a1か a0 = −a1 のどちらかが成り立つということ。前者なら、a0 − a1 = 0 で、後者なら a0 + a1 = 0 が成り立ちます。(ここがポイントですので、ゆっくり考えてください) この時、次の式を考えます。   CHSH =  ( a0 + a1 )b0 + ( a0 − a1 )b1 a0 = a1 なら、この式の後ろの項がゼロとなって消えて   CHSH =  ( a0 + a1 )b0 + 0 = 2a0・b0 a0 = ±1 で b0 = ±1 ですので、a0, b0の値のどの組み合わせでもこの式が

Bellの定理(1)

【  Bellの定理(1)】 Bellの定理は、自然の事象間の古典論的相関と量子論的相関が、異なるものであることを示す定理です。 基本的には、古典的相関は量子的相関に含まれます。量子論の世界には、古典論の世界には含まれない相関関係が存在します。量子エンタングルメントは、まさにそうした相関関係です。 Bellの定理には、いくつかのバリエーションがあります。 セミナーでは、次の三つのスタイルを紹介しようと思います。。  ● Bellによる証明  ● CHSH による定式化  ● CHSHゲームという定式化 このセッションでは、まず、Bellの1964年の証明を紹介したいと思います。 「Bellの定理 (1)」を公開しました。  https://youtu.be/v-tehuIdZsY?list=PLQIrJ0f9gMcN3x9bET7QoK2YWs8dfsKNa スライドのpdf https://drive.google.com/file/d/1I5zubmtMVMI_da0MlKOD5gXV3jyq-Bh0/view?usp=sharing blog:「Bellの定理(1)」 https://maruyama097.blogspot.com/2022/10/bell1.html まとめページ「エンタングルする自然 ver.2 」 https://www.marulabo.net/docs/science-entanglement2/ まとめページ「エンタングルする認識」 https://www.marulabo.net/docs/philosopy/ セミナーへの申し込み URL https://entangled-nature.peatix.com/view