相対論と量子論の統一

20世紀の物理学の大きな問題は、宇宙の巨大な時空を記述するのに成功した相対論と、極微の素粒子の世界の記述に成功した量子論をどう統一するのかということだった。
二つの理論の統一を目指す理論を、「量子重力理論」というのだが、大雑把に言って二つの立場があった。一つは、量子論の枠組みに相対論を取り込もうというアプローチだ。もう一つは、相対論の枠組みに量子論を取り込もうというアプローチだ。
ただ、両者とも、自分のホームグランドに、相手を引き込もうと、いろいろやったのだが、どうもうまくいかない。
そこに登場したのが、アルゼンチンの物理学者マルデセーナだ。彼の理論は、両陣営の対立(といっても、どちらも成功していなかったのだが)の、いわば、「斜め上」をいくものだった。
マルデセーナは、時空の理論と量子論的場の理論が、住む世界が違うことを発見する。キャンベルの缶スープに喩えれば、時空の理論が棲んでいるのはスープの部分で、量子論が棲んでいるのは、缶の部分だという。

(彼の発見は、100年近く経っても、二つの理論の統一ができなかったことを、別の見方から、説明するものになっているのは、面白いことだ。スープは缶ではないし、缶はスープにはなれない。)
重要なことは、彼が、二つの理論を、「全く別世界に棲むもの」として切り離したのではなく、両者の対応関係を発見したことだ。スープの「境界」が、缶であることが、本質的に重要だった。
(ブラックホールのエントロピーを担う、その「地平」も、ブラックホールの内部と外部を隔てる「境界」だ。)
両陣営とも、マルデセーナの主張を受け入れることになる。相対論と量子論の統一は、新しい段階に突入する。
その中では、時空を結びつけているのは、エンタングルメントのエントロピーだとする主張が登場する。これは、時空を結びつけているのは「情報」であるという、驚くべき主張だ。

この辺りは、以前に blogにまとめたことがある。興味のある読者は、次を読んでいただければと思う。「ER=EPRに先行したもの (超入門編)」https://maruyama097.blogspot.com/2017/06/erepr.html

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