旧約の「創世記」の「光よあれ」は、ビッグバンを思わせて、物理学者はちょっと萌えるかもしれないのだが、新約の「ヨハネによる福音書」には、言語学者が喜びそうなフレーズがある。 「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。」 僕が知っていたのは、「はじめにことばありき」という訳だったのだが。この口語訳での「言」は、英訳だとこうなっている。 "In the beginning was the Word, and the Word was with God, and the Word was God." 「言」= "Word" である。はじめにあったのは、Wordであって、Language ではない。だから、新しい口語訳では、普段、あまり馴染みない「言」という訳語を使ったのかも。「初めに語があった」では、なんかしまらないんだろうな。(僕は、「はじめにことばありき」というフレーズの方が好きだ。) ちなみに、「ヨハネによる福音書」は、英語では、"Gospel of John" という。「ジョンのゴスペル」である。でも、そう日本語に訳してしまうと、ジョン・レノンがバラードではなく、ゴスペルを歌っているようで、まずいんだろうな。 「ことば」・「言」・"Word" と訳されている、元々の言葉を調べてみると面白い。 キリスト教のオーソドックスな原典であるラテン語訳聖書では、この部分は、こうなる。 "In principio erat Verbum, et Verbum erat apud Deum, et Deus erat Verbum" 「イン・プリンキピオー・エラト・ウェルブム」 英訳 Word のラテン語の原語は、Verbum である。この単語、英語に直訳すれば、Verbである。「初めに、動詞があった。」 言語学の「従属性文法 (Dependency Grammar) 」理論の人たち、喜びそう。 もっとも、英語のVerbは、元々は、動詞というより広く言葉全体をさしてたらしい。そのことは、「ノンバーバル・コミュニケーション (Non-Verbal Communication) 」というのが、動詞を使わないコミュニケーション...
アインシュタインは、先のEPR(Einstein, Podolsky, Rosen)論文を5月に公開してすぐに、ローゼンと一緒に、次の論文を公開する。1935年7月のことだ。この論文をER論文と呼ぶことがある。 "The Particle Problem in the General Theory of Relativity" 「相対性の一般理論における粒子の問題」 https://goo.gl/KG4mjp 一般には、二つのブラックホールを結ぶ「橋」が存在しうることを発見した論文だと言われている。この「橋」は、"Einstein-Rosen Bridge" と呼ばれる。別名「ワームホール」とも呼ばれる。(ただ、"wormhole" でWeb をググっても、あまりスジのいい情報は引っかからない。) 1935年に、アインシュタインは、「エンタングルメント」(ただし、パラドックスとして)と「ワームホール」を発見しているのである。ほぼ同時期に行われた、この二つの発見に何か関連があるのだろうか? 80年前になされるべきこうした問いかけを、現代に蘇らせたのは、マルダセナ(Maldacena、AdS/CFT 対応の発見者)とサスキンド(Susskind)だった。2013年の論文 "Cool horizons for entangled black holes" https://goo.gl/wU1pKK で、二人は、大胆な仮説を提示する。 「二つのブラックホールの間のアインシュタイン・ローゼン・ブリッジは、二つのブラックホールのミクロな状態のEPR状の相関関係(エンタングルメント)によって生成される。 ... 我々は、これを ER = EPR 相関関係と呼ぶ。別の言葉で言えば、ERブリッジは、その中では、量子システムに関連するEPRが、アインシュタインの重力の記述に弱く結合している特殊なタイプのEPR相関関係なのである。」 要するに、1935年にアインシュタインが発見した「エンタングルメント」と二つのブラックホールを結ぶ「アインシュタイン・ローゼン・ブリッジ」は、スケールが全く違うのだが同じものだというのである。これを、「ER = EPR仮説」と呼ぶ。 ...
コメント
コメントを投稿