量子コンピュータと量子通信

【 量子コンピュータと量子通信 】

すこし、小難しい話がつづいたので、今回は、概論ですので、わかりやすいと思います。

「量子コンピュータと量子通信」を公開しました。お楽しみください。

https://youtu.be/9EK0i2ik0fc?list=PLQIrJ0f9gMcOLx0Fm-G0wbNnIRr-GfP2z

まとめページは、 https://www.marulabo.net/docs/info-entropy3/ です。スライドのpdfにアクセスできます。

9/4 マルレクでは、情報とエントロピーにまつわる、様々なエピソードを紹介しようと思っています。ぜひ、お申し込みください。https://info-entropy3.peatix.com/

この間のショートムービーで伝えたかったことの一つは、言葉足らずだったのですが、「量子の世界」に飛び込んだ時、はじめて、「物質の世界」と「情報の世界」のつながりが見え始めるということです。こうした現象は、20世紀後半から21世紀初頭にかけて、科学・技術の非常に広い分野で確認できることです。

量子論のIT技術への「応用」では、「量子コンピュータ」をイメージする人が、一番多いのではと思いますが、もう一つ重要な応用分野があります。それが「量子通信」の分野です。9月のマルレクの出口では、この「量子通信」の分野にフォーカスしようと思っています。

「量子コンピュータ」と並んで「量子通信」が重要であることは、現在のIT技術の中心が、大雑把に言って、コンピュータ技術とネットワーク技術の二つであることを考えればわかります。どちらか一つだけでは、現代のITの世界は成り立ちません。

丸山が、量子通信の理論を重要だと考えるのには、他にもいくつか理由があります。

第一に、量子コンピュータより量子通信の「実用化」が、早く進むだろうということです。

何をもって「実用化」というかは、いろいろ議論があると思います。ただ、現在のスマートフォンやクラウドが、「量子コンピュータ」に置き換わることを展望する必要はありません。それらの技術とその発展系は、今後も生き続けると考える方が現実的です。

(その意味では、「トポロジカルな量子素子」の研究が、足踏みをしているのは残念なことなのですが。)

それにもかかわらず、量子通信技術は、ネットワークの世界で現実的な応用課題を見出して、じわじわとその影響力を広げていくのは確実だと考えています。

第二に、量子通信の理論は、古典的ですが、しっかりとした理論的基礎をもっています。それは、シャノンが創設した「情報理論」です。情報理論は、通信の理論に他なりません。そこでの考察の中心は「情報量=エントロピー」です。

もちろん「情報理論の量子化」の課題は、簡単なものではありません。それでも、多くの知見が得られています。

8月20日開催のMaruLabo片桐ゼミで取り上げる「量子通信路符号化定理 」も、その重要な成果のひとつです。https://www.marulabo.net/docs/katagiri5/

第三に、量子コンピュータの「実用化」の鍵を握っているのは、環境のノイズの影響を強く受け不安定な量子コンピュータを、安定的に動作させる「量子エラー訂正技術」です。ここでも、量子通信の理論が中心的な役割を果たします。

MaruLabo小又ゼミの「誤り訂正符号の初歩—古典と量子 」というテーマも、こうした問題意識を掘り下げたようとしたものです。https://www.marulabo.net/docs/komata01

次回のショートムービーでは、量子通信のトピックスとして、「量子暗号」「量子テレポーテーション」「量子誤り訂正」の三つを紹介します。いずれも、1980年代の IBMの研究所の成果です。

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