ちょうど、40年前を振り返る

 【 ちょうど、40年前を振り返る 】

今回のセミナーの「量子計算の古典的検証」と言うテーマは、新しい、というか、歴史的に形成されたものです。

そのルーツは、「量子的に計算する機械 = 量子コンピュータ」を人間が作り始めたことにあります。量子コンピュータが存在しなければ、その出力を検証しようと言う問題意識が生まれる訳ありませんからね。

今回のセッションは、前回のセッションが取り上げたGoogle-IBM論争の「3年前」より、すこし歴史を遡ります。量子コンピュータのルーツである、ちょうど「40年前」のファインマンの論文を取り上げます。

「40年前」というのは、時期的には、アスぺやクラウザーたちが、ベルの定理の実証実験で成果を上げた時期です。今回のノーベル賞受賞の対象になった研究です。

ファインマンとクラウザーには接点があるようです。「量子論の基礎を研究したい」という若いクラウザーに、ファインマンは、「そんなの時間の無駄だ。量子論はもう完成している。そんなことより、もっときちんと計算しろ。」と言ったそうです。多分、60年代か70年代のことだと思います。

(ノーベル賞受賞後のインタビューで、クラウザーはそんなことを語っていたのですが、今見に行ったら、そんな発言はきれいに削除されていました。魚拓とっとけばよかった。)

とまれ、このファインマンの40年前の論文は、とても重要なものです。

彼の主張の力点は、古典的なコンピュータでは、量子の世界、ひいては自然のシミレーションなぞ出来はしないということに置かれています。

注意してほしいのは、彼のいう「古典的コンピュータ」の能力の理解は、正確なものだということです。それは、セル・オートマトンや「万能チューリングマシン」の能力に等しいことを、彼はよく理解していました。

そうだとしたら、量子コンピュータが可能にするものから、我々は何を学ぶことができるのでしょう? それは、今回のセミナーの「量子計算の古典的検証」という問題に直結します。

この疑問に答えるために、もう少しだけ歴史を遡りたいと思います。次回のセッションは、ベルやアスぺやクラウザーの問題意識を取り上げます。

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「ファインマンの洞察」を公開しました。

https://youtu.be/KH0mm79fMqk?list=PLQIrJ0f9gMcOQHQ6KmWuUxuRZkHT-2gZ-

スライドのpdf
https://drive.google.com/file/d/1LlGVxdm77gFDTEQJ0myd8q1GjyNkJvGA/view?usp=sharing

blog:「ちょうど、40年前を振り返る 」 https://maruyama097.blogspot.com/2022/11/40.html

まとめページ「量子計算の古典的検証 」
https://www.marulabo.net/docs/cvqc/

参考資料
Feynman, Simulating Physics with Computers
https://s2.smu.edu/~mitch/class/5395/papers/feynman-quantum-1981.pdf




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