ローヴェールが考えたこと

【 ローヴェールが考えたこと 】

このセッションでは、理論とモデルの関係を、カテゴリー論的にとらえなおしたLawvereのFunctorial Semantics を紹介します。

このFunctorial Semantics は、ことばとその意味に、数学的モデルを与えようとする今回のセミナーの基本的なツールとなります。

数学は、一般的には抽象的な議論を積み重ねていきます。カテゴリー論と呼ばれる数学の分野は、そのなかでももっとも抽象的なものかもしれません。

ある人は、カテゴリー論を"general abstract nonsense"な数学だと言いました。それは、一般化と抽象化を進めて、ついには、何の役にも立たないナンセンスなものになってしまった数学がカテゴリー論だということです。

ローヴェールは、現代のカテゴリー論の始祖の一人なのですが、最初から少し違ったことを考えていたと思います。彼は、抽象的な形式を取る数学にも、そうした数学を生み出す「背景」があると考えます。その「背景」は、数学者がある数学理論を、一般化・抽象化を通じてを完成させる、その以前から存在するものです。

そうした「背景」の一つが、集合論です。集合に対する直観は、決して抽象的なものではなく、具体的なものです。ほとんどの数学理論は、集合論の上で解釈されます。

ローヴェールは、カテゴリーCからカテゴリーDへの、構造を保存するようなFunctor Fは、Dの中でCのある「解釈」を与えることに気づきます。このとき、カテゴリーDは、カテゴリーCより、「具体的」だと考えることができます。

カテゴリーCが記号の結合方法を抽象的な”Syntax”として記述し、カテゴリーDは、その具体的な解釈を”Semantics”として与えるということです。

ルールの世界 vs, たとえの世界
理論 vs. モデル
syntax vs. semantics

こうした流れの上で、
grammar vs. meaning
を考えていきたいと思います。

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「 Functorial Semantics 」 を公開しました。
https://youtu.be/Gt4y5cmqwf8?list=PLQIrJ0f9gMcN2nXtvKCK4ApBaVglV8Drx

スライドのpdf
https://drive.google.com/file/d/1RI6z5Ub_ucZLHiDHdV9t6bKtztPO6DjP/view?usp=sharing

blog:「ローヴェールが考えたこと」
https://maruyama097.blogspot.com/2022/12/blog-post_05.html

まとめページ「ことばと意味の「構成性」について 」

参考資料
F. William Lawvere
Functorial Semantics of Algebraic Theories,





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