翻訳の意味の世界の奇妙さ

【 翻訳の意味の世界の奇妙さ 】

このセッションでは、ChatGPTが意味を理解しているかを考えたいと思います。

僕は、彼は、「意味を理解している」と考えていいと思っています。
だからこそ、関連する話題に関連する話題で反応できるんです。 彼は、「話題の関連」「意味の近さ」を把握しています。

現代のAI技術が、コンピュータの内部でどのように意味を表現し処理しているかについては、今回のセミナーでは触れないことにしました。それは、「意味の分散表現」というものなのですが、それについては、改めて別のセミナーを開くのがいいと考えています。

ここでは、その意味理解のみかけ上の特徴について触れてみようと思います。

ChatGPTの産みの母であるGPT等の大規模言語モデルの意味理解の中核技術は、機械翻訳技術です。そして、ChatGPTの意味の扱いは、基本的に大規模言語モデルの翻訳による意味の理解に依拠しています。

翻訳で意味を把握するということは、単純な例を挙げれば、”I love you.”の意味は、「私はあなたを愛している」という意味であると考えることです。これは、ある意味では、正しい意味の把握です。

そして、この機械翻訳技術は大きな成功を収めました。

現在では、多くの言語で書かれたものの意味を、我々は理解できます。
シェクスピアでもゲーテでもランボーでも。

素晴らしい!

ただ、翻訳の意味の世界には、いくつか奇妙な点があります。

それは、その意味が明らかでないもの、あるいは、意味がないものも、「翻訳」してしまいます。

Beau comme la rencontre fortuite sur une table de dissection d'une machine à coudre et d'un parapluie.  解剖台でミシンと傘が偶然出会ったように美しい

Colorless green ideas sleep furiously 
無色透明のグリーンのアイデアは、猛烈な勢いで眠る

もっと重要なことが二つあります。

一つは、翻訳の意味の世界は、「事実」とは関係なく存在するということです。

アインシュタインはバカだった  Einstein was an idiot.
世界に戦争はない  There is no war in the world.

もう一つは、翻訳の意味の世界には、「数学的正しさ」は反映されないということです。

x=1 で y=2 なら x+y=100 である
If x=1 and y=2, then x+y=100

「事実」は経験的な認識ですが、「数学的正しさ」は、経験的なものではありませんので、二つは別のものです。

最初の例に戻りますが、機械翻訳技術を使えば、我々は簡単に "I love you"の数十言語への翻訳が可能です。機械翻訳技術以前には、複数の語学に通じた人しか持てなかった認識だとおもいますが、この広がりは、むしろ奇妙な印象を与えます。

機械は、言い換えをしているだけで、意味を理解しているのは人間の方なのかも。

こうした翻訳の意味の世界の奇妙さは、平気で嘘をつくChatGPTの奇妙な振る舞いに、一致しています。

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「ChatGPTは 意味を理解している。 ただ、…」 を公開しました。https://youtu.be/nu_fAsKmWOs?list=PLQIrJ0f9gMcOX9oSKXRR87BgMkql5dvrx

資料pdf
https://drive.google.com/file/d/1W3ZnT6Wgi8zRtkoGF_ndMnBQ1K44l2Xs/view?usp=sharing

blog:「翻訳の意味の世界の奇妙さ 」https://maruyama097.blogspot.com/2023/01/blog-post_10.html

まとめページ
https://www.marulabo.net/docs/chatgpt/

1/14セミナー「なぜ?で考える ChatGPT の不思議」の申し込みページはこちらです。https://chatgpt.peatix.com/




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