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マルレク「量子コンピュータをやさしく理解するための三つの方法」

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本日のDMMさんでのマルレク「量子コンピュータをやさしく理解するための三つの方法」と懇親会の様子です。

「量子コンピュータで学ぶ量子プログラミング」ハンズオン

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今日の角川さんでの「量子コンピュータで学ぶ量子プログラミング」ハンズオンの様子です。 僕も、立ち上がりました(少しだけど)。今度、「黒板とチョークで学ぶ量子コンピュータ」というのもやれるかも。 参加者の皆さん、ボランティアのTAの皆さん、長時間、お疲れ様でした。

3/25マルレク「量子コンピュータを やさしく理解する三つの方法」講演資料

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3/25マルレク「量子コンピュータを やさしく理解する三つの方法」の講演資料です。ご利用ください。 https://goo.gl/UEmoSL 現在申し込み受付中です。 https://easyq.peatix.com 図は、アリスに「量子テレポーテーション」を、やさしく教えようとするドゥードゥー鳥の先生です。 以下、資料の「はじめに」から   --------------------     はじめに   -------------------- 量子コンピュータに対する関心の高まりの中で、一見近寄りにくくみえるこの素材を、多くの人にわかりやすく理解してもらおうとする模索も活発に行われている。小論は、その中から三つの試みを紹介したものである。 最初に紹介したTerry Rudolphの本は、著者自身が、「15歳の時の自分に向けて書いた」と言っているように、中・高生の読者をも意識したものだ。その特徴は、一切、数式を使わないところにある。 古典的な論理ゲートとの対比で、ボールを入れるとボールが出てくるPETEという名前の不思議なボックスの振る舞いを通じて、量子ゲートの働きを直感的に理解させようとする。 Terry Rudorpfの本で興味深いのは、「エンタングルメント」のトピックを、真正面から取り上げていることである。「エンタングルメント」という言葉や概念は用いていないのだが、彼の本の「超能力者ゲーム」は、「エンタングルメント」の不思議さを、中高生にもわかる形で見事に表現した出色のものだと思う。 二番目に紹介するUmesh Vaziraniのアプローチは、高校生・大学生をターゲットにしたものである。このアプローチでは、数学が必要になる。ただ、ここが重要なことなのだが、そこで利用される数学は、高校生でも理解できる、ベクトルと行列の演算を中心とする初歩的な線形代数である。   線形代数にも難しい部分があるのだが、量子コンピュータを構成する量子ゲートの基本的な働きを知るには、難しい数学は必要ないのだ。実は、こうした「わかりやすさ」は、これまで見落とされてきたことである。 Vaziraniのアプローチの特徴は、広い分野からなる難しい量子力学から、基本的な量子の情報理論を分離して取り出すことである。そして、量子の振る舞いの基本

「超能力者」の不思議なゲーム3

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AliceとBobには、必勝法があるのですが、その秘密は、彼らが大量に持ち込んだ箱の中ににあります。 この箱の中には、次のような状態のボールが入っていました。 (白いボール、黒いボールを、いちいち書いて説明するのが大変なので、白いボールを|0>、黒いボールを|1>で表すことにします。) 箱の中のボールの状態は、{白白, 白黒, 黒白}なので、 |00>+|01>+|10>と表せます。 この状態は、二つの状態のテンソル積では表せないので、エンタングル状態にあります。ただ、典型的なエンタングル状態のBell Stateとは少し異なっています。 Aliceが|0>を観測したとします。 この時、状態は|00>+|01>に変化します。ただ、この状態では、Bobの状態には、|0>, |1>の二つの可能性があります。 Aliceが|1>を観測したとしましょう。 この時、状態は|10>に変化します。この時、Bobの状態は|0>に確定しますので、Aliceは、直ちにBobの状態を知ることができます。たしかに、エンタングルしています。 Bobが|0>を観測したとします。 この時、状態は|00>+|10>に変化しますので。この時、Aliceの状態には、|0>, |1>の二つの可能性があります。 Bobが|1>を観測したとしましょう。 この時、状態は|01>に変化します。この時、Aliceの状態は|0>に確定しますので、Bobは、直ちにAliceの状態を知ることができます。たしかに、エンタングルしています。 二人は、ゲーム中のコミュニケーションが禁じられているのですが、あらかじめエンタングルした状態のデータを持ち込むことによって、相手のボールの状態を知る手がかりを得ることができるのです。このゲームの必勝法の鍵は、エンタングルメントにあります。 ではどうやって、このゲームに勝てるのでしょうか? エンタングルした状態のボールを持ち込んだからといって、それだけではゲームに勝てません。 続きは、3/25のマルレクで。 明日、3/18の12時から、申し込み受付開始です。 https://easyq.peatix.com/vi

なぜ、入門コースで「量子エンタングルメント」を取り上げるのか?

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3/23ハンズオン、3/25マルレクは、いずれも量子情報理論の「入門コース」なのですがどちらのコースでも、「量子エンタングルメント」の話題を取り上げます。 量子論の周辺には「学ぶべきこと」がたくさんあります。その中でも、僕が、入門コースでも、「エンタングルメント」の紹介は外せないと考えているのには、いくつかの理由があります。 第一に、二つの量子が「もつれあった」状態は、とても不思議なものですが、現代の量子論では、それは量子のもっとも基本的な性質の一つと考えられています。 「エンタングルメント」を発見したのはアインシュタインです。物理学者のサスキンドは、これを「アインシュタインの最後の偉大な発見」と呼んでいます。(この点では、いくつか「因縁話」があるのですが、それについては別ポストで。) 第二に、量子論の歴史は古いのですが、「エンタングルメント」への注目が本格化したのは、21世紀になってからのことです。それは、新しい量子情報理論の重要な一部になっています。その点では、「エンタングルメント」を扱わない古い量子論との対比は明確です。学ぶなら、新しい理論を学んだ方がいいのです。 第三に、「エンタングルメント」は実践的にも重要な意味を持っています。量子情報理論の応用としては、「量子コンピュータ」のことを考える人が多いと思いますが、それ以外にも、「量子通信」や「量子暗号」といった重要な応用分野があります。おそらく「量子コンピュータ」より、こちらの分野が先に立ち上がりそうです。こうした分野では、「エンタングルメント」は、本質的で重要な役割を果たします。 3/25のマルレクで紹介する予定の、「超能力者の不思議なゲーム」の「必勝法」は、エンタングルメントを使ったものです。 3/23のハンズオンの最終課題は、量子通信の基本的なプロトコルである「量子テレポーテーション」の回路をプログラミングすることです。 ご期待ください。 ------------------------------ 3月25日マルレク 「量子コンピュータをやさしく理解するための三つの方法」 告知ページはこちら。 https://easyq.peatix.com/ 予告編のビデオはこちらです。 https://goo.gl/AuPbwh --------------

「超能力者」の不思議なゲーム2

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昨日の続きです。 「超能力者」チームにとって最善の戦略を考えてみましょう。(図1) チームが勝てるのは、コインが両方とも「裏」で両方とも「黒」と叫んだ時だけですから、「裏」が出たら「黒」と叫ぶのは必須です。これが基本戦略です。 それでは、コインが「表」だったら、どうすればいいのでしょう? 「白」と叫ぶか「黒」と叫ぶか? 「表」が出たらを「白」と叫ぶことにしましょうう。図のオレンジの線で囲まれたところが、可能な組み合わせです。(もちろん、「裏」が出たら無条件で「黒」を選んでいます。) この時、6通りの場合があるのですが、その中で、「超能力者」チームが勝つ場合の数は一回で、胴元が勝つ場合の数が二回ということになります。この戦略では、胴元に敗れます。 それでは、「裏」が出ても「黒」と叫ぶという戦略はどうでしょう? 要するに、コインの「裏・表」に関係なく、二人とも「黒」と叫び続けるという戦略です。 図の青い線で囲まれたところが可能な組み合わせになります。この時、「超能力者」チームが勝つ確率と、胴元が勝つ確率は同じになります。 多分、これが最良の戦略です。ただ、これは必勝の戦略ではありません。 ところが、勝負の当日、「超能力者」チームは、それぞれの部屋に膨大な数の容器(4000個! これはゲームの予定された回数です)とPETEと書かれた機械を持ち込みます。 これ、量子コンピュータなんです。量子コンピュータを持ち込んじゃいけないというルールはありませんでしたから。 勝負の結果は、「超能力者」チームの圧勝で、胴元は一ゲームも勝つことができませんでした。このゲーム、量子コンピュータを使うと、「必勝法」があるのです! どうすればいいかわかりますか? 続きは、3/25マルレクで。 --------------------- 3月25日、DMMさんで開催のマルレク「量子コンピュータをやさしく理解するための三つの方法」の告知ページ公開しました。 https://easyq.peatix.com/ 予告編のビデオはこちらです。 https://goo.gl/AuPbwh

3/23マルレク「量子コンピュータをやさしく理解するための三つの方法」告知ページ公開しました

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3月25日、DMMさんで開催のマルレク「量子コンピュータをやさしく理解するための三つの方法」の告知ページ公開しました。 https://easyq.peatix.com/ 予告編のビデオはこちらです。 https://goo.gl/AuPbwh 量子コンピュータ、とっつきにくいと思っている人も多いと思います。それも当然です。ほとんどの人は、量子コンピュータについて、いままでどこでも学んだことがないのですから。 量子コンピュータを、難しそうと感じるのは、基本的には、それを学ぶ機会がなかったからだと、僕は考えています。 150年前の日本では、英語を理解できる人は、ほとんどいませんでした。今は、小学生でも英語を学んでいます。江戸時代の寺子屋は英語は教えてくれませんでしたが、論語は教えていました。江戸時代の人たちは、英文は読めなくても、現代人よりずっと漢文は読めていたと思います。 学ばないと理解できないことがあります。 多くの人にとって、明日からの日常に、あるいは、来年以降のビジネスに、量子コンピュータについての知識が生きるとは限りません。ただ、いつか必ずそうした知識が必要になる時代が来るのは確実だと僕は考えています。 そうした時代を、学ぶことで準備する時間的余裕があるというのは、ある意味、幸いなことです。 量子コンピュータ、まず、学ぶことから始めませんか? 僕の6時間の演習コース「紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門」には、これまで300人以上の人が参加しました。僕の周りだけでも、すでに、数百人規模の人が、基礎から量子コンピュータの勉強を始めているということです。丸山は、また、色々なレベルに応じた量子コンピュータ関連のセミナー、ハンズオンを展開中です。 今回のテーマは、最近、活発に模索されている「量子コンピュータをやさしく理解するための方法」の紹介です。 もちろん、このセミナーに出れば、量子コンピュータのことがすぐに理解できるようになるというわけではないとおもいます。それは、英語の勉強でも、セミナーに一回出れば、英語がペラペラになることはないのと同じです。少し、難しいところもあると思います。ただ、勉強を進めるきっかけにはなると思います。 これから量子コンピュータの勉強を始めようと思っている方の参加をお待ちしています。

3/25 マルレク「量子コンピュータをやさしく理解するための三つの方法」

3月25日、DMMさんで「量子コンピュータをやさしく理解するための三つの方法」というセミナーを開催します。マルレクです。 この間、同時並行的に「紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門」(2/23終了)、「量子コンピュータで学ぶ量子プログラミング入門」(3/23開催)と、量子コンピュータ関係の6時間の演習コースを展開しているのですが、こちらは、量子コンピュータに興味を持ちはじめた人を対象にした、コンパクトな2時間のセミナーです。 量子コンピュータを難しく感じている人は多いと思います。それにはいろいろな理由があるのですが、このセミナーで伝えたいことは、おもに二つあります。 一つは、量子の世界の理解が難しい本当の理由は、量子の世界がとても不思議な世界であるということにつきます。セミナーでは、その不思議さを伝えたいと思います。これについては、不思議だが自然はそうなっているんだと納得するしかないように思います。それが出発点です。 もう一つは、それではそうした不思議さに、どう向き合うかということです。ビジネス志向で量子コンピュータに関心を持ってもらうのも結構ですが、残念ながら、まだまだ市場が成熟している訳ではありません。ビジネス志向だけだと、現状にきっとがっかりします。僕が考えているのは、そこには「知的好奇心」が必要だということです。 むしろ重要なことは、ビジネスが成熟して多くの人が参入できるまでの時間的猶予があるということだと考えています。その間に、それぞれが準備すればいいのです。きちんと時間をとって勉強しなければなりませんが。 幸いなことに、こうした状況を反映して、量子コンピュータをわかりやすく理解するための方法が、いろいろ模索されています。セミナーでは、それらの試みから、次の三つを紹介します。 一つ目は、Terry Rudolph の、PETEという不思議な箱の振る舞いを通じて、量子の世界を考えさせるアプローチです。彼の紹介している量子ゲームは、どう考えても勝てないはずなのに、PETEを使えば、テレパシーを使ったみたいに勝てるという不思議なものです。 二つ目は、Umesh Vazirani らの、量子論の前提を簡単に整理して、そこから高校生程度の数学で、量子の振る舞いを理解するというアプローチです。僕の「紙と鉛筆 ... 」のシリーズは、彼

2/23「紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門」

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本日の「紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門」の様子です。 本日のセミナーに向けて、資料を更新したのですが、資料が増えたので、結局、全部は説明しきれませんでした。この「更新」は、よかったのかな? 悪かったのかな? ブータンからの留学生が二人と高校生が一人(お父さんと一緒に)参加していたようです。今日の参加者は、30人を越えました。 参加者の皆さん、長い時間、ご苦労様でした。

セミナーの名称変更について

お伝えしていた3月23日開催予定の量子プログラミングのハンズオンですが、名称を「実際の量子コンピュータで学ぶ量子プログラミング入門」から「量子コンピュータで学ぶ量子プログラミング入門」に変更します。 今年に入って、IBMさんが量子コンピュータの商用サービスを開始したことをご存知の方は多いと思います。(例えば、次の記事「IBMが世界初となる商用量子コンピュータ「IBM Q System One」を発表」https://goo.gl/yqn5tv ) 同時に、IBMさんが、無償で実際の量子コンピュータにアクセスできるサービスを始めていることも、画期的だと思います。今回のハンズオンは、このサービスを使ってみようという企画です。 今はもう、誰でも、ネット越しに無料で量子コンピュータを動かしてみることができる時代になっているんですね。思っていたより、だいぶ早いですね。 今まで展開してきた「紙と鉛筆で学ぶ ... 」というシリーズに対して、「実際の量子コンピュータで学ぶ ...」という対比も面白いと思いました。 ただ、少し問題があります。 一つには、ハンズオン当日に、お目当の量子コンピュータが、ちゃんと機能しているか保証がありません。昨日の状態ですと、IBMさんが無償で提供している4台の量子コンピュータのうち、3台が「メインテナンス中」でした。(その点は、有償の「商用サービス」とは、違っても仕方ないですね。) もう一つには、もしも、実際の量子コンピュータが動いていたとしても、ハンズオンで数十人が一斉にログインした時の挙動の予測がつきません。多分、ハンズオンの参加者だけでなく、世界中からのアクセスもあるでしょうから。やってみないとわかりません。 というわけで、すべてのハンズオンを実際の量子コンピュータ上で行うというわけではないことを明確にしたほうがいいと思っています。 次のようなことを考えています。   ・ハンズオンの課題は、量子コンピュータのシミュレータを使います。 ・実際の量子コンピュータを使う手順を解説します。 ・実際の量子コンピュータにアクセスし、いくつかの課題を実行します。 もしも、ハンズオン当日に、実際の量子コンピュータにアクセスできないことがあっても、最低限、後日、機会を改めればアクセスできるようにしたいと思っています

「紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門」講演資料更新

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2/23開催の「紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門」講演資料です。ご利用ください。https://goo.gl/cu3HPm 三回目の更新です。以前に「紙と鉛筆 ... 」を受講された方、今回の資料の方がわかりやすくなっていると思いますので、資料を更新していただけますか? 以下の項目で加筆・修正があります。  ・「テンソル積」  ・「エンタングルメント」  ・「Bell State ゲートの働きを 暗算で計算する」 資料を、読んでもらってもいいのですが、実際に、手を動かして「計算」するのが理解の上では重要かと。お時間がありましたら、来週開催の6時間演習セミナーに、是非、ご参加ください。https://goo.gl/jKEEh7 企業内での「量子コンピュータ」の勉強会も引き受けています。丸山まで、コンタクトください。 このセミナーを皮切りとする、この春の4つの量子セミナーの日程と会場が決まりました。 2月23日(土) 「紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門」@角川 13:00~19:00 3月23日(土) 「量子コンピュータで学ぶ 量子プログラミング入門」@角川 13:00~19:00 3月25日(月) マルレク「量子コンピュータをやさしく理解するための三つの方法」@ DMM 19:00~21:00 4月21日(日) 「紙と鉛筆で学ぶ量子アルゴリズム入門」@角川 13:00~19:00 こちらにも、是非、ご参加ください。

Proof Generalのアイコン

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次の次のマルレクで、数学の証明にコンピュータを使う「証明支援システム」の話をしようと思っている。 この分野、しばらくご無沙汰していたので、VoevodskyのプロジェクトUniMath (  https://github.com/UniMath/UniMath  )をスクラッチからインストールした。 coqide の他にも、EMACSをインターフェースに使う Proof General と言うのもあるよと書いていたので、やってみて、EMACSを開いたら、最初に出てきたのがこの画面。ちょっとびっくり。 思わぬところでオタクをみつけた。これ、日本のカルチャーの影響だよね。日本、ある意味、スゴイのかも。Contributorに日本人の名前は見つけられなかったけど。(それでいいのかな?) 面白そうなので、触ってみたが、僕、vi派だったので、EMACS苦手なんだ。

「同じ」という言葉は何を意味するのか? 2

先に、「同じ」型A に属する二つの項 aとb(a : A かつb : A)が「同じ」だという a = b : A で表現される「同じ」さと、二つの型AとB(A : Type かつB : Type)が同じだという A = B : Type で表現される「同じ」さは、同じ「同じ」でも、違う「同じ」であるという話をした。 前者は、例えば、Aを「三角形」という型だとして、三角形a と三角形b が「同じ」だと言っているのだが、後者は、例えば、Aを{異なる三つの点を結んでできる図形}、Bを{平行でない三つの直線で囲まれた図形}とした時、AとBは、同じ型の図形であることを主張している。 型を持つプログラミング言語の場合、あるインスタンスがどの型に属するかを意識することは大事なことだ。面倒と言えば面倒なのだが、そのことがプログラムの誤りを少なくするのに効果的なのだ。 型を持つプログラミング言語のうちのいくつかは(例えば、COQ, Agda, Haskell, 部分的にはScalaも)は、不思議な型 dependent type をサポートしている。dependent type は、パラメータによって(パラメータにdepend して)、型が変わる型だ。 パラメータxが型Bを持つなら、このdependent type E(x)を次のように表す。    (x : B) E(x) また、あるsが、dependent type Eを持つことを、次のように表す。    (x : B)  s(x) : E(x) あまり正確ではないが、B={ 整数、実数、複素数 }として x : B なるパラメータ x によって、dependent type E(x)は、整数型、実数型、複素数型 に型が変わるのだ。 昔のwakhok時代、同僚の浅見さんから、dependent type がすごいことはよく聞いていた。ただその頃、僕はそれをよく理解できなかったのだと思う。僕が、その重要性に気づいたのは、だいぶ後になってからだ。 5年前の2013年のマルレク「「型の理論」と証明支援システム — Coqの世界」で、ようやく後追いを始めることになる。 https://www.marulabo.net/docs/typetheory-coq/  

Q2Bカンファレンス

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来週から、Q2Bカンファレンスが、マウンテンビューのコンピュータ歴史博物館で始まる。去年に続いて二回目の開催。 https://q2b2018.qcware.com/ 第一回でのプレスキルの基調講演は、とても勉強になった。僕は、その全文を日本語に訳した。「NISQ時代とそれ以降の量子コンピューティングについて」 https://goo.gl/6qh1oE これは、量子コンピュータの動向について知る上の必読文献と言っていい。 今年は、僕が大好きなスコット・アーロンソンが、プレスキルと並んで基調講演に登壇する。二人の基調講演にとても期待している。 プレスキルの基調講演のタイトルは、「短期的・長期的に見た量子テクノロジー:応用の探求」、アーロンソンの基調講演のタイトルは、「量子優越性とその応用」だ。 プレスキルもアーロンソンも、量子コンピュータの世界を代表する研究者なのだが、Q2Bカンファレンスの特徴は、量子テクノロジーの「ビジネスへの応用」にフォーカスしようとしていること。 「Q2Bにようこそ」という呼びかけは、こう述べている。「Q2Bのミッションは、近未来の量子コンピュータのリソースを使った、最適化・シミュレーション・機械学習・暗号等のアプリケーションの開発を刺激することです。」「量子コンピュータを実世界の問題に応用する方法を開拓するために、研究者と産業界の実践者のコラボレーションを進めます。」 日本では、「量子コンピュータの応用は、まだまだ先のこと」と考えている人が多いのだが、アメリカでは実践的な応用への関心は、年を追うごとに大きく拡大している。 Q2Bカンファレンスの紹介のセミナー、日本でもやりたいなと思う。

複雑性と重力 3

ブラウンとサスキンドの論文「複雑性理論の第二法則」を紹介しているのだが、それは、もちろん、ITの世界でも関心が高まりつつある「量子コンピュータ」に関連しているのだが、どこかずっと遠くをみていることが面白い。 「ブラックホールは、宇宙で一番高速なコンピュータである。ただ、このコンピュータは、何の役にも立っていない。」 もちろん、ブラックホールの内部にあるのは量子コンピュータだ。何の役にも立っていないというけど、それは、自身の量子状態を、カオスなスクランブルの時期を経て更新する。でもそれは、「計算過程」であると同時に、自然の「物理過程」そのものだ。ニュートンの木から落ちるリンゴだって、自分の運動を「計算」しているのかもしれない。 この論文が面白いのは、次のような問題提起をしていることだ。 ブラックホールの量子コンピュータは、その複雑性がマックスに達すると、お腹がいっぱいになって、もはや計算することができなくなる(かれらは、それをブラックホールの周りにはファイアーウォールができていて、なにものも侵入できないという「AMPSパラドックス」と結びつけて論じている。)それは、エントロピーが最大の状態になると、熱機関に「仕事」をさせることができなくなるのと同じだ。 ところが、そこに、qubitが一個落ち込むと、光速の衝撃波とともにスクランブルが始まるのだが、それでブラックホールの複雑性Cが大きく変わるわけではない。ただ、その複雑性の取りうる可能な最大値がCmaxが大きく変わるという。 K個のqubitからなるシステムの複雑性の最大値は2のK乗だ。一個のqubitが増えると、それは2の(K+1)乗になる。複雑性の最大値は、ちょうど二倍になる。 彼らは、システムが取りうる可能な複雑性の最大値と、そのシステムの現在の複雑性の差を、uncomplexity (先に「非複雑性」と訳した)と呼ぶ。熱力学でいう「ネガ・エントロピー」と同じようなものだ。uncomplexityがあると、我々は、そのシステムに「仕事」をさせることができる! もちろん、その仕事は「計算する仕事」である! uncomplexityは、量子コンピュータの「計算資源」なのである。 「伝統的な熱力学の理論は、断熱圧縮・熱機関・冷却機械・マックスウェルの悪魔等々の一連の思考実験を通じて発展して

複雑性と重力 2

量子論と相対論の統一の思考実験の舞台は、ブラックホールだ。 ブラックホールは、奇妙な性質を持っていて、質量と電荷と角運動量という三つの物理量しか持たない。外から見る限り、全てのブラックホールは、この三つの量でしか区別できないのだ。ウィーラーは、これを、「ブラックホールには毛がない」と言った。(毛は、三本はあるのだが。オバQと一緒だ。) ブラックホールは、周囲のものすべてを飲み込むのだが、飲み込まれたものの持っていた情報は、全て失われたように見える。ホーキングは、ブラックホールのシンギュラリティ(特異点)で情報は失われるとした。それに反対したのが、トフートとサスキンドだ。 この論争は、半ば冗談めかして語られるのだが(論争で負けを認めたホーキングは、プレスキルに、「野球百科」を送ったらしい)、僕は深刻なものだったと考えている。それは、サスキンドの"Black Hole War"を読めばわかる。かれは正直に、ホーキングという「カリスマ」に対する激しい反発の感情を語っている。 この論争から、「ホログラフィック原理」が生まれ「境界」の重要性が認識され、それは、マルデセナによろAdS/CFT対応の発見に繋がっていく。 ブラックホールには、毛がないとして、それでは、その内部では何が起きているのだろうか? サスキンドの理論の基本的なイメージを述べる。 ブラックホールの内部の状態は、ある量子状態 |Q>をとっている。それがK個のqubitの状態として記述されるのなら、その複雑性の最大値はC_{max}は(maxはCの添え字)、2^K(2のK乗)で与えられる。 量子状態 |Q> (複雑性をCとしよう)を持つブラックホールに、(|0>+|1>)/√2で表されるqubitが一個吸い込まれたとしよう。その時、ブラックホールの量子状態は、|Q>から、|Q'> = (|0>⨂|Q> + |1>⨂|Q>)/√2 に変わる。qubit一個が取り込まれただけで、ブラックホールの量子状態は、全面的に組み変わることになる。 式は簡単だが、状態ベクトル|Q>が巨大な時には、この|Q>から|Q'>への状態変化には膨大な計算が必要になる。qubit一個でも、外部から何

複雑性と重力

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先に、量子情報理論での「量子テレポーテーション」を、エンタングル状態にある二つのミクロなブラックホールが形成する「ワームホール」をqubitが通り抜ける過程として解釈しようとする理論を紹介した。 今回は、現在進行中の量子論と相対論の統一を目指す動きの中で中心的な役割を果たしているのは、「複雑性」というコンセプトであることを紹介したい。 まず、ここでの「複雑性」の定義から。 サスキンドは、状態|A>と状態|B>との間の相対的な複雑性 C(A, B)を次のように定義する。   C(A, B)= 状態|A>から状態|B>を得る為に必要な最小の量子ゲートの数 すなわち、C(A, B)は、|B> = gggg....|A> となるような最小の量子ゲートgの数である。 この時、C(A, B) =  C(B, A), C(A, B) = 0 iff A=B と、C(A, B) ≦ C(A, D ) + C(D, B ) (三角不等式)が成り立つ。こうして、相対的な複雑性 C(A, C)は、正規化された状態空間の計量(距離)になる。さらに、ある状態の絶対的な複雑性 C(A)を、単純な状態、すなわちエンタングルしていない状態への最小の距離として定義する。 こうして、量子の状態の空間に、この複雑性を計量とした複雑性の幾何学を構成できる。この幾何学上に、一般相対論の基本的命題との対応物を構築していく。「測地線」とか「最小作用の法則」が働く「作用」の量子複雑性幾何学バージョンが存在するのだ。 この対応づけが、驚くような対応関係を明らかにしつつ、面白いように進むのだ。 例えば、この量子複雑性は古典的なエントロピーに対応する。ただし、N個のqubitからなるシステムの複雑性の最大値は、2のN乗になるのだが、古典的な統計力学では、N個の状態からなるエントロピーの最大値はNである。 このことは、N個のqubitからなるシステムの量子複雑性が、2のN乗個の自由度を持ったシステムの古典的エントロピーのように振舞うことを示している。 それらの対応関係は、次の論文「量子複雑性の第二法則」に展開されている。先の紹介は、この論文の第一章を要約したものだ。もちろん、この論文のタイトルは、「熱力学の第二法則」との対応を強調したもの