意味の形式的理論 -- 意味の意味
久しぶりに縦書きの本を読む。東京のアパートには、ほとんど本はないのだが、稚内には、少し本がある。
オグデンとリチャードの「意味の意味」は、1923年発行。1920年から22年にかけて書き溜められた論文がベースだというから、ほぼ100年前の本だと思っていい。
「意味の三角形」が有名。左が邦訳、右が原著。
基本的には、左下のSymbol(「象徴」)と右下のReferent(「指示物」)を、Thought or Reference(「思想あるいは指示」)が結びつけるという図式。
翻訳、少し不満がある。
Symbolは「象徴」ではなく「シンボル」のママがいいと思う。Referentは「指示物」だと、指示するものなのか指示されるものなのかわかりにくいので、「被指示物」とか「参照対象」の方がわかりやすい。Thoughtは、「思想」よりむしろ「思考」、Referenceは「指示」よりは「指示作用」とかの方がいいと思う。
抽象的な概念を表す言葉と事実との対応付けの難しさを論じた引用部分の「religion(宗教)、patriotism(愛国心)、property(性質)」(邦訳48ページ)の「property(性質)」は、「property(所有)」の誤訳だろう。
原文は、ここで読むことができた。https://goo.gl/fEomsu
枠組みは100年前のものだが、著者らの「意味」に関係する文献についての博覧強記ぶりは印象的である。シンボルとその参照対象を結びつけるのは、人間の「認識能力」だという理解は、現代的な言語理論とも、大きな意味では繋がっている。
彼らが取り上げているトピックスに、いろいろインスパイアーされて、とても面白い。(もっとも、僕の関心は、意味の理論の形式的表現にあるので、先の図式のCorrect やAdequateを、Faithfull で Full なFunctor と読み替えるのだが。それについては後述。 )
邦訳は、大昔に読んだはずなのだが、内容はともかく、イギリスの知的エリート特有の高慢で皮肉たっぷりの文体の記憶がほとんどない。僕が鈍感だったのか、当時、僕のまわりには、そういう文体があふれていたのか。多分、後者のような気がする。
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