文法を計算する(2)
1958年の論文の後、Lambekは数学の世界で研究を続けることになる。ところが、それから50年経った2008年、Lambekは興味ふかい言語学の論文 "From Word to Senrence" を発表する。http://www.math.mcgill.ca/ba…/lambek/pdffiles/2008lambek.pdf
なぜ彼は50年経って、また言語学に興味を覚えたのか?
その理由は、明らかだと思う。かつての僚友 Chomskyが、1998年に発表し、現在の言語学の大きな潮流となった "Minimalist Program"とその"Merge"という基本コンセプトに大きな刺激を受けたからだと僕は考えている。
基本的なアイデアは、1958年の論文と同じだ。ただ、ノテーションが異なっている。
かつての二つの基本的な計算ルール
(x/y)y --> x
y(y\x) --> x
y(y\x) --> x
は、次のように表現される。
Xl・X --> 1
X・Xr --> 1
X・Xr --> 1
本当は、XlのlもXrのrも、Xの右肩上に添字として乗っかっているのだが。(Facebookじゃ表現できないのでお許しを。)
lはleftのl、rはrightのrである。
lを右肩上の添字に持つXの後ろにXが現れれば、それは、消えてしまうし(積として1をかけるということは、なにもしないことだから)、同様に、Xの後ろに、rを右肩上の添字にもつXrが続けば、それは消えてしまうということ。
lを右肩上の添字に持つXの後ろにXが現れれば、それは、消えてしまうし(積として1をかけるということは、なにもしないことだから)、同様に、Xの後ろに、rを右肩上の添字にもつXrが続けば、それは消えてしまうということ。
同じことだが、Xに「左から」Xlを作用させると打ち消し合い、Xに「右から」Xrを作用させると打ち消しあうということ。
文字で説明すると面倒だが、慣れると、スラッシュとバックスラッシュを使った58年の論文の記法より、わかりやすくなる。
Lambekが言いたいことは、二つのものから一つのものを作るChomskyのMergeの本質は、こうした数学的操作の導入で、もっとわかりやすくなるということだと思う。
それだけではない。 58年の論文では、基本的な型として、nとsだけを使っていたのだが、2008年の論文では、もっとたくさんの基本的な型を導入している。
面白いのは、例えば、"Whom will she see ? "という疑問文を、我々が、"Whom" "will" "she" "see" と頭から順番に聞いたとき、なぜ、リアルタイムにそれが理解できるのかという問いを立て、それを可能にする「計算」を示している!
おみごと!
今度のマルレクでは、こうした計算主義的文法理論の紹介をします。お楽しみに。https://language1.peatix.com/
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