ランダムさの不思議さ

【「ランダムさの不思議」公開しました 】

9/30 マルゼミ「計算科学とエントロピー」 https://info-entropy4.peatix.com/ にむけたショートムービー「ランダムさの不思議」を公開しました。ご利用ください。

https://youtu.be/3V-AeDtR8Zs?list=PLQIrJ0f9gMcOWKDmKxI3aJ6UYf6gaPa2K

スライドのpdfは、こちらからアクセスできます。https://drive.google.com/file/d/1FzXttmm_FMEpqiSKf6XIHb7CeKObVo1Q/view?usp=sharing

「ランダムさ」に対して、我々はある種の直観を持っているように見えます。ただ、そうした直観が、必ずしも正確なものでないことを、次のような例で話そうと思います。

 ・ランダムな0と1の並び
 ・ランダムな文字列

「ランダムさ」というのは、実は、定義するのが難しい、不思議な性質を持っています。

ランダムな 0と1の並びを作ろうと思ったら、コインを投げて、表が出たら0、裏が出たら1とすればいいですね。そうして作られた並びは、きっとランダムなものに見えるでしょう。

ところで、もしも、0が30個並んでいる並びを見せられたら、それはランダムなものには見えないでしょう。

なぜでしょう?

 「コインを投げて、30回連続して表が出ることは、確率的にあり得ないから」

ただ、確率的には、コイントスで得られる30桁の0,1の 並びは、全て同じ確率 \( (1/2)^{30} \) を持っています。みなに「ランダム認定」されるだろう 0,1の30桁の並びと、0が30個並ぶ並びとは、同じ確率で出現します。

確率だけでは、ランダムなものとそうでないものを区別することはできません。

ランダムな文字列を得るために、猿にタイプライターを叩かせましょう。
猿が打ち出す文字列は、ランダムと言えるでしょうか?


アルファベット(小文字)は、‘a’から‘z’まで26文字です。 もしも猿が26キーのタイプライターを6回適当に叩いたとすると、この時、猿がうちだすことが可能な文字列の総数は、26の6乗で、308,915,776になります。9桁の数字で3億ちょっとです。

この中には、”monkey”という文字列が含まれています。“monkey”はランダムな文字列でしょうか? 英語の辞書で6文字の単語は、全てこの中に含まれています。それらは、ランダムな文字列とは言われないような気がします。

宝くじの番号は、75組 159149番のように8桁なので、タイプライター猿が、“monkey”と打ち出すのは、サマージャンボで5億円当てるより、30倍ほど難しいことがわかります。

30回コインを投げて全部表が出る確率は、 \( 2^{30}=2^{10 x 3} ≈ {10}^{3 x 3} = 10^9 \)ですので、宝くじに当たるより、10倍ほど難しいことになります。 

ランダムさを定義することの難しさに関して、フォン・ノイマンは、かつて、こう言っていました。

“There is no such thing as a random number— there are only methods to produce random numbers, and a strict arithmetical procedure is of course not such a method.”

ただ、コロモゴロフは、この問題に新しい光を当てることに成功します。






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