記憶能力の外的拡大 -- 世代から世代へ --

【 記憶能力の外的拡大 -- 世代から世代へ -- 】

10/29 マルレクにむけたショートムービー「記憶能力の外的拡大 -- 世代から世代へ -- 」を公開しました。

https://youtu.be/ituJusOy-i4?list=PLQIrJ0f9gMcOlromnKjdDMRcVr1BnJJas

スライドのpdf版には、こちらからアクセスできます。


[ 世代から世代への 遺伝子情報の伝達 ]

生物界で最も基底的な情報システムは、生命現象の固有な部分を構成する、世代から世代への時間の流れに沿った遺伝情報の伝達です。

ウィルスは確かに自分を取り巻く環境を知覚はできません。ましてや,自分の隣にいるウィルスと会話ができるわけもありません。それにもかかわらず,彼らは,自らの複製を無数に作り出すことを通じて,そして,その過程での複製の誤りや突然変異を利用することによって,親から子へ,さらには次の世代へ と,貴重な情報を送り続けています。

こうして,たとえ隣のウィルスとは会話ができなくとも,一方向的ではあるのですが,子孫としてのウィルスヘは情報伝達を行い,自然淘汰によって、全体としては環境の変化を感じとり,環境に適応する能力を持っていると言うことができます。

[ 遺伝子情報によらない、 世代から世代への情報伝達 ]

われわれにとって,より興味深いのは,人間において,言語能力等の新たな遺伝的特質の獲得を基礎に,新しい世代間の情報伝達情報蓄積の様式を作り上げることが可能になったということです。

そこで、まず、基本的な役割を果たしたのは、人間の記憶力と言語の能力でした。「口づたえ」で過去のことを若い世代に伝えるのは、普遍的なものです。「口承文芸」は、多くの民族で見られます。

こうした、語り言葉による伝承のスタイルを、大きく変化させたのは、文字の発明とその利用の拡大です。過去のことを伝えるのに、もはや稗田阿礼のような超人的な記憶力は必要は無くなりました。歴史は、文字で書かれればいいのです。

われわれ人間は,DNAを通ずる以外の手段で,歴史上で先行する集団から情報をうけとることができ,かつ,情報を後の世代に伝達しうる唯一の生物といっ ていいのです。

われわれは先の世代が築いたものを受け継いで今日を作り,また,明目を準備します。
このことは,次の様にも表現されます。すなわ ち,われわれは,進歩するのだと。

[ 記憶能力の外的拡大 ]

ほとんどすべての動物は、記憶とその想起の能力を持つのですが、人間に起きたこうした変化は、個体としての人間の記憶能力の外的拡大として、捉えることができます。

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楽しい哲学「認識について考える」のまとめページ  https://www.marulabo.net/docs/phylosophy01/
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1. 感覚能力の外的拡大 1  -- 視覚--
https://youtu.be/6uA1pn5vv-0?list=PLQIrJ0f9gMcOlromnKjdDMRcVr1BnJJas

2. 感覚能力の外的拡大 2  -- 時間感覚 --
https://youtu.be/mjDdyCPCx2g?list=PLQIrJ0f9gMcOlromnKjdDMRcVr1BnJJas

3. 記憶能力の外的拡大 -- 世代から世代へ -- 
https://youtu.be/ituJusOy-i4?list=PLQIrJ0f9gMcOlromnKjdDMRcVr1BnJJas

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