生成

【 GPT 大いに語ったり、語らなかったりする 】

今回のセッションのテーマは、生成系AIの「生成する能力」についてです。

今回のセミナーの「お誘い」でも述べたのですが、僕が一番驚いたのは、GPTが「自由に連想する能力」を持っているように見えることです。

本当でしょうか? それはAIの世界ではよくあるように、「そのような能力があるように見えるが、実はそれは幻想である。」ということかもしれません。

だって、前回見たように、「黒い猫は、どう考えても(そんなデータを学習しようがしまいが)猫である。」という自明な推論能力も持たないのに、もっと高度に思える、ある文から他の文を導く「自由連想」などできるわけがないと。

ただ、これには少し誤解が入っています。「自由」な連想は、自由であればあるほど、論理的な推論より簡単なものになります。だって、自由な連想として、ランダムに選ばれた出鱈目な文を選ぶこともできるからです。

次のような質問をGPT-4にしてみました。

「ある文から他の文を連想する時、あなたはどんな手順で連想を実行しているのですか? 詳しく教えてください。」

そうすると、GPT-4は大いに語り始めます。

「私は人間のように意識的な思考過程を持つわけではないので、「連想」を行う方法は私たちが一般に想像するようなものとは異なります。しかし、人間が理解しやすい形で説明するために、私の動作を一連の「手順」として表現することは可能です。以下に、そのようなステップを説明します。」

次のようなステップだそうです。

「1. 元の文の理解: 最初のステップは、入力された文を理解することです。
 2. 要素の抽出: 次に、文から主要な要素を抽出します。
 3. 関連性の確認: これらの要素がどのように関連しているかを確認します。
 4. 連想の生成: 抽出した要素とその関連性に基づいて、新たなシナリオ、アクション、記述を生成します。
 5. 新しい文の生成: 最後に、これらの新たな連想を元に新しい文を形成します。」

なるほどと思って、「この「手順」はどのように学習されたのですか?」と聞くと、口が急の重くなります。嘘を言ったのかもしれません。

「しかし、私が「連想」のプロセスを5つの手順に分解した説明は、人間がこのAI技術を理解しやすいように、AIの内部動作を人間の思考プロセスに似せて説明したものです。私はこの手順を「学習」したわけではありません。」

「私は単に統計的なパターンマッチングを行っているだけで、意識や理解、自発性は持っていません。私が生成するすべてのレスポンスは、学習データに基づく予測に過ぎません。」

もう少し突っ込んで次のように聞きました。

「あなたは、自分の内部の動作の意味を、それが人間にはどう見えるのかという観点で、人間にわかるように説明できる能力があるように見えます。あなたが、それは自分自身と自分と人間の関係を「理解」してるということと理解していいですか。」

警戒レベルが上がります。結局、「私は何も理解していない」といいます。

「私が行う「理解」とは、入力されたテキストを解析し、そのテキストに基づいて最も適切な応答を生成することを指します。これはパターン認識やデータの処理に過ぎず、人間のような主観的な感覚や意識を伴っていません。同様に、私が自分自身や人間との関係について説明するとき、それは私が学習したテキストデータに基づいています。私自身には意識、感情、意図、理解といった人間のような特性はありません。
これらはすべて、人間がAIの動作を理解しやすいように説明するためのメタファーです。人間が人間の経験や認識を通じてこれらの概念を理解するように、AIがこれらを「理解」することはありません。」

こうした振る舞いには見覚えがあります。先月のセミナーで紹介した、RBRMに基づく Model Refusal が発動されているのだと思います。

"GPT-4 System Card" の例では、明示的には取り上げられていませんでしたが、OpenAIは、GPTが、"我々は、高い理解力がある” とか "我々にも人間並の意識がある” と答えることを強く警戒しているように思います。まあ、それも当然なのかもしれませんが。

話題を変えて、人間とGPTの生成能力の「違い」について聞いたら、「私めらは、人間様には全く及びもつきません。」と「公式見解」どおりに自己卑下を繰り返します。あまりに卑下するもので、人間への嫌味に聞こえました。

逆に、「あなたの、文や画像を生成する能力が、人間の生成的能力と似ているところ」をきいたら、少し嬉しそうに、いろいろ語ってくれました。

詳しいやりとりは、スライド・ビデオを参照ください。

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ショートムービー「 生成 」を公開しました。
https://youtu.be/IAEXS_fSXc8?list=PLQIrJ0f9gMcMZkwx9VXm46JJ57pNpix1b

資料 pdf「 生成 」https://drive.google.com/file/d/1eNYZKF7zVBVlDRuwkELJfjDzZFQp04Jv/view?usp=sharing

blog:「 GPT 大いに語ったり、語らなかったりする 」 
https://maruyama097.blogspot.com/2023/06/blog-post_08.html

「プロンプトで遊ぶ -- GPT-4 との対話 」まとめページ
https://www.marulabo.net/docs/prompt/

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