アメリカの大学のネット上での量子論講義

ネットがとても便利なのは、数学や理論物理の分野では、重要な論文がすぐ手に入ること。(皮肉なことに、情報科学の「アカデミー」の「情報」共有は、むしろ遅れている。お金を払わないと情報が取れないことが多い)
ただ、ネットで手に入るのは、論文だけではない。アメリカの主要な大学は、競って大学での「講義」の公開を進めている。それぞれの大学が、どんなことを、どんな風に、学生に教えようとしているかがわかるのだ。
論文読むのは好きだけど、講義を聴くのは苦手なのだが(すぐ眠ってしまう)、自分で、量子力学や量子コンピュータの話をしてみようと思っているので、いくつかの大学の講義をのぞいてみた。
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● ハーバード大の Alán Aspuru-Guzik の講義 "The Quantum World"の紹介ビデオ  https://goo.gl/YNNymJ
コンピューター・グラフィックでビジュアルなイメージをふんだんに使って、pythonでシミュレーションもさせる。(写真)
お金かけている。貧乏人には、真似るのは無理げ。
彼は、化学の人。日本は、この分野で、結構、たくさんノーベル賞をとっているのだが、彼の「ゴージャス」な講義をみて、日本、そのあと続くのかなとちょっと心配になった。
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● MITのAllan Adamsの"Quantum Physics"の第一回目の講義 "Introduction to Superposition" https://goo.gl/jhvEJS
学生に思考実験させ、学生を巻き込んで、盛り上げる。うまい。思考実験のクライマックスは、以前紹介した、「量子消しゴム」の実験だった。(ただし、思考実験)
思考実験だけではなく、その後に、「量子消しゴムキット」https://goo.gl/hr3Wfk で実際に、確かめさせればいいのになと思う。と言っても、僕も、「量子消しゴムキット」買えていない。
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● スタンフォード大の、Susskindの "Quantum Mechanica: Theoretical Minimum" https://goo.gl/uv2snG
黒板だけの講義だが、僕の一番のおすすめ。講義を聴くのが嫌いな僕だが、このビデオは、全部見た。
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● UCバークレー校のVazirianiの"Quantum Mechanics and Quantum Computation" https://goo.gl/VA81bT
この中で、一番地味な講義にみえるのだが、量子コンピュータにフォーカスすることで、その新しい教え方を作り出している。僕は、目から鱗だった。
「Observable」も「固有ベクトル・固有値」も「シュレジンガー方程式」も「Hamiltonian」も、出てこない(もちろん、最後の方で説明があるのだが)。「ユニタリー」で、十分だという思い切りがいい。
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いろいろ、ザッピングして見たのだが、浅く眺めただけでも、つくづく、アメリカはすごいなと思う。
ただ、大事なことは、英語と数学が少しだけできれば、僕らは、どこにいても(多分、ハーバードに入学できなくても)、ネットを通じて、新しい知識を獲得できる環境が作られつつあるということだと思う。
若い世代に期待しよう。

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