Shorのアルゴリズムを発見した時、Shorが考えたこと

【 Shorのアルゴリズムを発見した時、Shorが考えたこと 】 

Shorが、Shorのアルゴリズムを発見した時、Shorは、量子コンピュータの可能性について、どんなことを考えていたのでしょうか?

「コンピュータサイエンスの歴史において、最も重要な問題は、多項式時間またはNP完全問題のいずれかであることがわかっています。 したがって、量子コンピュータは、NP完全問題を解くことができない限り、おそらくそれほど広くは役に立たないでしょう。」

「 NP完全問題を効率的に解くことは、理論的コンピュータ科学の「聖杯」です。それが、古典的なコンピュータ上で可能であると期待するのは、非常に少数の人々だけです。量子コンピュータ上で、これらの問題を解決するための多項式時間アルゴリズムを見つけることは、画期的な発見となるでしょう。」

「 量子コンピュータはNP完全問題を解くのに十分に強力ではないといういくつかの弱い徴候があります[Bennett et al。1994]。しかし、私はこの可能性がまだ排除されるべきであるとは思いません。」

Shorは、現代のコンピューターが多項式時間では解けない「NP完全問題」を、量子コンピュータが解く能力を持つだろうと期待していました。

残念ながら、彼は彼の期待が実現可能だと示すことはできませんでした。

同じ頃、Vazirani たちは、量子チューリング・マシンを定義して、その上で多項式時間で計算可能な量子複雑性のクラス BQPを定義します。そして、このBQPクラスが、古典的なチューリング・マシンが多項式時間で計算可能なクラスPを包摂することを証明します。P ⊆ BQP 。

BQPクラスの発見は、現在のコンピューターを上回る能力を量子コンピューターが持ちうることを、複雑性理論の言葉で述べたものです。

量子コンピューターで多項式時間で計算可能なShorのアルゴリズムは、まさに、BQPクラスに属するものでした。

しかしながら、BQPクラスが「NP完全クラス」を包摂する可能性があるという展望は、現在では、ほとんどの複雑性の理論家は、「正しくない」と放棄しているように思えます。


動画 「Shorのアルゴリズムの発見 −− 計算複雑性の新しいクラス BQP」を公開しました。 

https://youtu.be/wcsbtH7Ig1k?list=PLQIrJ0f9gMcMOiLc6py4lKrk3xAG_g0FH




この動画のスライドのpdf

https://drive.google.com/file/d/13EbYFZRkPbRdx_jABjcqp256orFcIsNh/view?usp=sharing

関連blog 「Shorのアルゴリズムを発見した時、Shorが考えたこと」 https://maruyama097.blogspot.com/2022/08/shorshor.html 

−−−−−−−−-----

このセミナー「ポスト量子暗号技術の現在」のまとめページ

https://www.marulabo.net/docs/cipher2/ このセミナーへのお申し込みはこちらから

https://cipher2.peatix.com/view

MaruLabo 関連ページ

「チューリングマシンの拡大と複雑性」 https://www.marulabo.net/docs/turing-complex/

コメント

このブログの人気の投稿

マルレク・ネット「エントロピーと情報理論」公開しました。

初めにことばありき

人間は、善と悪との重ね合わせというモデルの失敗について