還元された密度行列

【 図形で分かること 】

今回のセッションのテーマは、還元された密度行列です。ただ、数学の話だけでは、退屈かもしれませんので、テンソル・ネットワークを使った、数学への図形的なアプローチをすこし紹介しようと思います。

こんな感じです。

ベクトル空間Vのベクトルを、丸に一つの直線をくっつけた図形で表します。
ベクトル空間Vとベクトル空間Wのテンソル積 V⨂Wで作られる空間のベクトルは、丸に二つの直線をくっつけた図形で表します。丸に2本の足がある図形です。2本の足は、空間Vと空間Wに対応しています。

今回は、この二本足のベクトルで説明します。

ちょっと数学が入りますが、たいしたことはありません。このベクトルを|A>で表すことにしましょう。|A>は2本の足を持つ丸です。

今度は、|A><A|という式が表す図形を考えます。(実は、密度行列というのは、基本的にこの式で表されます。)

|A> と<A|はよく似ています。真ん中に鏡を置けば、お互いの姿が映ります。ただ、鏡でも、目の前に鏡を置くのと、頭の上に鏡を置くのとでは映り方が変わります。目の前の鏡は左右を逆にしますが、頭の上の鏡は上下を逆にします。

丸い図形の左右を反転させても、たいして変わりは出てきませんので、頭の上に鏡を置くことにしましょう。そうすれば、下に2本の足を出していた元の図形|A>は、上に2本の足を出している図形に変わります。これを、<A|の表す図形だということにしましょう。

これで、|A>を表す図形と<A|を表す図形ができました。今度は、|A><A|を表す図形を考えます。

|A><A|は、じつは、数学的には、|A>⨂<A|と同じものです。なんか話が難しくなりそうな予感がするのですが、そんなことはありません。図形をテンソル記号⨂で結びつけるということは、実は、何もしないことなのです。二つの図形を、何も手を加えず、そのまま並べておくことなのです。

ですので、|A><A|を表す図形は、下向きに2本の足をもつ丸と、逆立ちして上に足を伸ばした丸が、二つ並んだ図形だということになります。お互いが関係があることをわかりやすくするために、この二つの図形を、丸と丸を近づけて、上下に積み重ねることにしましょう。

こうして、二つの丸と4本の足(2本は下向き、2本は上向き)を持つ図形が、|A><A|を表す、すなわち数学的には密度行列を表す図形になります。

文字で書くと長いけど、言ってることは、図を書いてみると簡単なことです。

今度は、還元された密度行列を図で表現してみましょう。

 「まだ続くんですか。いい加減にして。」

はいはい。今度はすぐに終わります。

同じ側にある上下の足を取り払って、代わりにループ状に結びます。右側にループを作るか、左側にループを作るか、二つのやり方があります。これが還元された密度行列を表す図形です。簡単です。

最初4本あった足は、還元された密度行列を作ることで、上下に一本の2本の足を持つ図形に変わりました。また、このループによって、上下の図形は結び付けられました。

図形上では、密度行列から還元された密度行列を作るのは、とても簡単なことなのです。


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