「形」を数える – オイラーの「標数」

【 「形」を数える – オイラーの「標数」 】

このセッションでは、図形の「大きさ」に関係した量として、「オイラーの標数(Euler characteristic)」を紹介しようと思います。

【 3次元の多面体の頂点と辺と面の数 】

オイラーは、3次元の空間上の図形を構成する基本的な要素として、「点」と「線」と「面」に注目します。

彼は、点(頂点)と線(辺)と面から構成される3次元の(凸な)多面体について、頂点の数を v 、辺の数を e 、面の数を f とすると、 次の関係が成り立つことに気づきました。

  𝑣 − 𝑒 + 𝑓 = 2

この 𝑣 − 𝑒 + 𝑓 = 2 を(凸)多面体の「オイラー標数」と言います。

スライドでは、「プラトンの正多面体」について、この関係が成り立つこと確かめています。ご自身でも、確認ください。

【 凸集合(convex set) 】

物体が凸(とつ、英: convex)であるとは、その物体に含まれる任意の二点に対し、それら二点を結ぶ線分上の任意の点がまたその物体に含まれることを言います。

先に見た、𝑣 − 𝑒 + 𝑓 = 2 を満たす多面体は、全て、凸集合です。

【 convex hull (凸包) 】

convex hull は、与えられた集合を含む最小の凸集合です。

X がユークリッド平面内の有界な点集合のとき、そのconvex hullは直観的には X を輪ゴムで囲んだときに輪ゴムが作る図形と考えていいです。

【 𝑣 − 𝑒 + 𝑓 = 2 とサッカーボール 】

サッカーボールの表面は、5角形と6角形で構成されています。5角形の数をP、6角形の数をHとすると、次の式が成り立ちます。

  𝑓 = 𝑃 + 𝐻
  𝑒 = ( 5𝑃 + 6𝐻 )/2
  𝑣 = ( 5𝑃 + 6𝐻 )/3

この式を、オイラーの式 𝑣 − 𝑒 + 𝑓 = 2  に代入すると、Pの項が消えて、H = 12 がわかります。

どんなサッカーボールにも、6角形は必ず、12個あります。

【 オイラーの標数 𝑣 − 𝑒 + 𝑓 は変わらない「大きさ」 】

オイラーの標数 𝑣 − 𝑒 + 𝑓 は、どんな「大きさ」なのかを考えてみましょう。確かにそれはある自然数ですので「大きさ」を持ちます。

ただ、先に見たように、それは、凸な多面体の種類やその多面体の実際の大きさが変わっても、オイラーの標数 𝑣 − 𝑒 + 𝑓の「大きさ」は変化しません。

それは、変わらない「大きさ」なのです。
(そういう量を「位相不変量」と言います。)  

【 オイラーは、何を数えたのか? 】

それでは、オイラーは、どのようにして、多面体に対して「変わらない大きさ」を見つけたのでしょうか?

それは、多面体を構成する「同じ形」の要素の数を数えることによってです。

彼は、「同じ形」を持つものとして、多面体の「頂点」の数vと、「辺」の数eと、「面」の数 f を数えました。

【 「同じ形」とは? 】

それらが「同じ形」をしているとは、どういうことでしょう?

・「頂点」については、それは「点」ですので、どれも同じ形です。
・「辺」については、長さや向きを無視すれば、それは同じ「線分」とみなせます。
・「面」については、「頂点」や「辺」より複雑です。先の例でも、「面」は三角形だったり四角形だった五角形だったりしました。

まあ、 当面、「面」は二次元の図形で「平らなもの」という直感で進んでいいと思います。

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blog 「「形」を数える – オイラーの「標数」 」
https://maruyama097.blogspot.com/2025/09/blog-post_06.html

セミナーのまとめページ

スライド「「形」を数える – オイラーの「標数」 」のpdf ファイル
https://drive.google.com/file/d/1Z6TaOoiFEv6j-hF0cRJ5VcxgHgv2ySyr/view?usp=sharing

ショートムービー「「形」を数える – オイラーの「標数」 」
https://youtu.be/Ve_UBdrPxhY?list=PLQIrJ0f9gMcPmPimhgAIUUh98fyLSM6iB

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