AIとの対話の「心得」としての Interactive Proof
【 AIとの対話の「心得」としての Interactive Proof 】 グラフの認識がむづかしいことを示す例として、グラフの非同型問題を取り上げたのですが、AIと私たちの関係を考える上で、Interactive Proofの考え方を知っているのは意味があるように感じています。 「AIはなんでも知っている」と考える人もいれば、「AIは嘘ばかりつく」と考える人もいます。「AIが進化すれば、人間を超えて全知全能に近づく」と信じている人もいます。 現代のAI技術の到達点では、AIがInteractive Proofの全能な証明者の役割を果たすにはまだまだ遠いのはいうまでもないことですが、AIをProverの位置においてInteractive Proofの劣化版(Proverの能力が格段に劣ると言う意味です)のアナロジーを考えると、いろいろ面白いことに気づきます。 Interactive Proofの枠組みで重要なのは、「証明者」の与える「証明」は「検証者」による検証を経なければ「証明」としては受け入れられないということです。劣化版のアナロジーで言えば、AIの言うことは、「検証者」によって検証されなければ、正しいとはみなされないと言うことです。検証者は、もちろん、我々です。 AIでのfew shot プロンプトは、正しい答えに辿り着くための手法ですが、検証者が繰り返しAIに問いを投げかけることを通じて、AIが知らないことをあぶり出すことも可能です。 この劣化版のアナロジーが秀逸なのは、AIが嘘をつくことを織り込み済みだと言うことです。本家のInteractive Proofで、Proverが嘘をつくのは、グラフの非同型問題について言えば、Proverがプロトコル上必ず答えを返すことを義務付けられているからです。このことも、ハルシネーションが生まれるメカニズムの一端を説明するのかもしれません。 時間があったら、現代のAIと対話する上の「心得」として、Interactive Proofの知識が役に立つと言う話をしたいと思います。