投稿

2018の投稿を表示しています

意味を考える 6 -- 鏡

我々は、他人の顔は見れるのだが、自分の顔を直接見ることはできない。写真やビデオがこんなに普及する以前、自分の顔を見る手段は、鏡しかなかったと思う。

自分の顔を鏡で見る時、「見る人」と「見られる人」は、同じ人だ。ただ、この同じ人が、鏡によって「見る人」と「見られる人」の二人に分離される時、普段は見ることのできない自分の顔を見ることができる。

以前に、「私はあなたを愛しています」という文の「意味」を考えるより、「 "I love you." の「意味」は、「私はあなたを愛しています」だ」と考える方が簡単だと書いたのだが、このことも、「翻訳」はある言語を他の言語にうつす鏡のようなものだと考えれば、いいのだと思う。

確かに、鏡に映る自分の顔は、他人のみんながいつも見ている顔であることに変わりはないし、「私はあなたを愛しています」を "I love you." と言い換えたところで、「愛」についての認識が深まるわけではない。

ただ、ある二つのものの関係の中で、あるものを考えるのは、あるものだけをじっと見ているより、普段は気づくことのないものへの気づきが生まれると僕は考えている。

「意味」についてもそうだ。意味についてのアプローチは、様々あるのだけれど、ソシュールのシニフィアン(signifiant:意味するもの)とシニフィエ(signifié:意味されるもの)にしても、オグデン=リチャードの「意味の三角形」の「シンボル」と「指示するもの」「指示されるもの」にしても、こうした「二項関係」が基本になっている。(三角なのに二項なのかにというツッコミは、あとでこたえる)

こうした二項関係は、もっと深いところでは、「主体」と「客体」、「認識するもの」と「認識されるもの」という認識の構造そのものに基礎を持っている。

図は、ペンローズから。彼は、ビデオで鏡に映るビデオを撮影しても、ビデオは何も認識していないという。確かにそうだ。ただ、彼は、機械は、それだけでは意識を持ち得ないという立場を取っている。コンピュータのプログラムに意味など理解できるはずはないというのだ。

意味を考える 5 -- 辞書

言葉の意味を調べようとするとき、我々に一番身近な行為は、「辞書」を引くことである。ただし、辞書が与えるのは、語の意味である。

翻訳が文を対象にするのに対して、辞書は語を対象にする。文は語からできているので、辞書が与える語の意味の情報は、その語を含む文の意味を考えるもっとも基本的な情報を与える。

辞書で 、I = 私、love = 愛する、you = あなた という情報が得られたとしよう。この情報だけから、"I love you"という文を翻訳すると、「私 愛する あなた」になるのだが、これはどうも日本語としてはうまくない。

その理由ははっきりしている。

語から文が構成されているのは明らかなのだが、語から文を構成するときに、日本語でも英語でも、ある構成規則に従う。それを「文法」という。文法は、ある言語での語の出現順序に強い制限を与える。「私 愛する あなた」は、日本語の語の出現順序にそぐわないのだ。

辞書だけに頼る翻訳がうまくない理由は、もう一つある。辞書が与えるのは、名詞でも動詞でもその基本形だけだからである。名詞は「格」によって変化し(日本語だと、「私は」「私に」「私を」 ... というように、名詞の部分は変化しないように見えるのだが)、動詞は「活用」する。こうした語の「屈折」形は、その語のその言語の文法上の情報を与えるのだが、辞書はその屈折形を網羅しない。それは、文法規則として基本的には辞書の外部でカバーされることになる。

先に、簡単に「文は語からできている」といった。それはそれで間違いではない。もう少し正確に言えば、「文は、文法という構成規則に従って、語から構成される」ということになる。

「異なる語から異なる構成規則で構成された文が「同じ意味」を持ちうるのはなぜか?」というのは、言語の意味についての最も重要な問題なのだが、その問題に入る前に、ここでは、辞書上の語彙項目と実際に発せられる文と文法の関係について、基本的な事実を確認しようと思う。

全ての言語において、基本的な語彙の数は、有限である。例えば、26文字のアルファベットで15文字以内で構成される語の数は、高々、26^15である。ところが、10万語の語彙を持つ言語で、10語の語からなる文の数は、100000^10で、約10^50になる。10語文というのは、そんなに長い文章ではない。が、…

意味を考える 4 -- 接触

イメージ
翻訳は、基本的には、外国語を母語に変換する。外国語に接する必要がなかったら、翻訳ツールのお世話になることはない。僕のひいおじいさんやひいおばあさんの世代は、おそらく、翻訳の必要はほとんど感じなかったようにも思う。僕の世代の場合は、おじいさんやおばあさんの世代に「敗戦」と「進駐軍」を体験する。外国語事情は、大きく変わる。

ただ、歴史的には、近年の「グローバル化」が始まる遥か以前から、異なる言語を用いる共同体の接触は、珍しいことではなかったと思う。
世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。  ... 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 (創世記11章) なんて意地悪な神だと思うのだが。人間だって「互いの言葉が聞き分けられぬ」ままでいたわけはない。異なる言語が接触した場合、直ちに、翻訳の必要性は生まれたはずだ。

そこで一番大事なことは、言語が異なっても、それが伝えようとすることが「同じ意味」を持ちうることを双方が確信することだと、僕は思う。それは、自明のことのように思えるが、とても大事なことだ。

相手が宇宙人であって同じだと、我々人間は考える。

太陽系外に飛び出すパイオニアにもボイジャーにも、宇宙人に向けたメッセージが積まれていた。それが知性を持つ宇宙人に発見される可能性は、我々が異星人からのメッセージを受け取る可能性と同じくらいに低いのだが。

図1は、パイオニアにつまれたプレート。水素の構造、男女の姿、探査機の外形、銀河系中心と14個のパルサーに対する太陽の相対位置、太陽系が描かれている。

図2は、ボエジャーにつまれたゴールデン・レコード。地球上の様々な音や音楽、55種類の言語による挨拶や様々な科学情報などを紹介する写真、イラストなどが収録されている。「ボエジャーのゴールデンレコード」https://goo.gl/5NZ8Wn

これらでは、画像・音・科学的な知識が、「共通言語」として想定されているのは興味ふかい。科学的な知識をメッセージに使うというアイデアは、電波を用いた「アレシボ・メッセージ」では、も…

第五回マルレク 「人工知能と意味の形式的理論」

イメージ
来年早々になりますが、1月8日に、マルレク第五回を、富士ソフトさんのアキバプラザで開催します。テーマは、「人工知能と意味の形式的理論」です。

告知ページ・募集要項は、近日中に公開します。
募集期間が、年末・年始の時期に重なっているため、いつもより募集時期を若干早めたいと考えています。ご注意ください。

【講演概要】

人工知能研究の大きな課題の一つに、意味の理解をどのように機械上で実現するかという問題があります。

講演では、まず、この分野で、現時点で一定の成功を収めている三つのアプローチを紹介します。

第一は、Amazon Alexa, Google Home 等のボイスアシスタント・システムで多く利用されている、ヒューリスティックなアプローチです。そこでは、チューリング・テストをパスすることを意識した、意味のプラグマティックで「操作主義的」理解が中心にあります。

第二は、Google等の大規模な検索エンジンやDiffbot等が利用している。Knowledge Graph的なアプオーチです。グラフの規模の大小はあるのですが、そこで中心的な役割を果たしているのは、「エンティティ・モデル」です。

第三は、Googleニューラル機械翻訳の成功に刺激を受けた、「機械翻訳技術」の発展と普及を背景としたアプローチです。そこでは、大規模なパラレル・コーパスを大規模なハードウェアを利用して「学習」が行われます。

講演の後半は、現在の実装技術の紹介を目的とした前半と切り口が異なります。「意味の理解」は、「意味」についても「理解」についても、新しい枠組みが必要だというように、丸山は考えています。また、そうした理論は形式的なシステムで記述できるとも考えています。

次のような話をします。

・文法の構造と意味の構造の対応、あるいは二つの構造の「二重化」の必要について。
・理論とモデル。数学での意味の扱いに学ぶ。
・ローヴェールのFunctor Semantics
・新しい「型の理論」



意味を考える 3 -- ジャンボジェット

イメージ
先の投稿、億単位のパラレル・コーパスを「学習」する機械学習技術にケチをつけるみたいな終わり方をしたので、若干、釈明を。

同じことが人間にできず(人間がこういうスタイルで、言語の「意味」を「学習」しているわけではないのは明らかだと思うのだが)、機械にそれができるのなら、それはそれでもいいのではとは思う。

空を飛ぶのに、生物の進化は昆虫や翼竜や鳥類を生み出したが、人間が発明したのは飛行機だった。同じ目的を達成するのに、生物と人間が発明した機械とが、違うアプローチをとってもいいのだ。

我々が、蝶々や鳥のように空を飛べないのは残念なことだが、空を飛ぶことについては、機械の勝ちかもしれない。翼竜のプテラノドンよりジャンボジェットの方が巨大だし、それに、ロケットなら宇宙にも行ける! (と言っても、「となり」の火星程度までなのだが)

もしも我々が妖精のように自由に空を飛べていたら、「空を飛ぶ機械」の進歩の歴史は、今とは少し違っていたとは思う。(妖精は、自力では火星に行けないもんね。多分。)

機械翻訳に要するデータの巨大さだけに驚いてはいけない。それに必要なハードと計算時間も巨大である。先の論文によれば、Googleニューラル機械翻訳では、GPU100個を使って、フルトレーニングには最大1,000万ステップ、収束までには3週間かかることがあるという。

ただ、巨大さと複雑さで言えば、人間の脳だって負けてはいない。脳には、この銀河系の星の数より多い、860億個のニューロンが存在する。大脳新皮質には100億のニューロンがある。もっとすごいのは、その星の数ほど多いニューロンがお互いに結びついてネットワークを構成していることである。そのグラフなど書けっこない。

(人間の脳の構造と発達については、最近読んだ次の本がとても面白かった。「我々自身を発明する:ティーンエイジャーの脳の秘密の生活」"Inventing Ourselves: The Secret Life of the Teenage Brain" https://goo.gl/RBLn3H いつか紹介したい。)

今はどうなったかわからないが、ついこの間まで、人間が生物のニューロンの正確な接続のグラフを書けたのは、302個のニューロンと8,000のシナプを持つ C-Elegance だけだった。名前は優雅だが、線…

意味を考える 2 -- パラレル・コーパス

イメージ
「私はあなたを愛しています。」

この文の「意味」は、何かと言われると、なかなか答えるのが難しい。(日本語では、まずこういう言い方はしないと思うのだが、そのことはおいておく。) ただ、"I love you." の「意味」はと聞かれれば、「私はあなたを愛しています。」だと答えるのは易しい。

「それは、意味の意味が違う。」 確かに、そうかもしれない。

それでは、「二つの言語で、同じ意味が表現されている」と考えるのは、どうなのだろうか? この文章で使われている「意味」は、先に「なかなか答えるのが難しい」と考えた「意味」そのものではないだろうか?

とりあえず、二つのことを、この後の議論のために、作業仮説として確認しておこう。

 1.  二つの言語を比較すると、意味は取り出しやすく(感じる)。
 2.  意味は、言語によって表現されるが、言語によらないものを指し示す。

実は、現代の自動翻訳技術は、二つの言語で、同じ意味を持つ文を大量に集め、それを学習させるのが基本技術だ。「私はあなたを愛しています。」= "I love you."  という文例をたくさん集めておく。「私はあなたを愛しています。」の「意味」を考えて、頭を抱えることはない。

ただ、そのデータ(「パラレル・コーパス」「パラレル・データ」と言ったりする)の規模は、多分多くの人の想像を超えていると思う。

機械翻訳についての基本的なカンファレンスは WMT "Workshop on Machine Translation" である。(2018年のページは、こちら。http://www.statmt.org/wmt18/ もっとも、僕は、二年近く最近の動向をフォローしていない) 

WMTは、機械翻訳の研究のために、基本的なパラレル・コーパスを研究者に提供している。WMT 14  https://goo.gl/9d4cyi

WMT‘14の英語(En)<-> フランス語(Fr)データセットには、 3,600万の文のペアが含まれている。
WMT‘14の英語(En) <-> ドイツ語(De)データセットには、 500万の文のペアが含まれている。

かなりの規模だ。

ところがである。僕が、Google ニューラル機械翻訳の論文 https://goo…

Q2Bカンファレンス

イメージ
来週から、Q2Bカンファレンスが、マウンテンビューのコンピュータ歴史博物館で始まる。去年に続いて二回目の開催。https://q2b2018.qcware.com/

第一回でのプレスキルの基調講演は、とても勉強になった。僕は、その全文を日本語に訳した。「NISQ時代とそれ以降の量子コンピューティングについて」 https://goo.gl/6qh1oE これは、量子コンピュータの動向について知る上の必読文献と言っていい。

今年は、僕が大好きなスコット・アーロンソンが、プレスキルと並んで基調講演に登壇する。二人の基調講演にとても期待している。

プレスキルの基調講演のタイトルは、「短期的・長期的に見た量子テクノロジー:応用の探求」、アーロンソンの基調講演のタイトルは、「量子優越性とその応用」だ。

プレスキルもアーロンソンも、量子コンピュータの世界を代表する研究者なのだが、Q2Bカンファレンスの特徴は、量子テクノロジーの「ビジネスへの応用」にフォーカスしようとしていること。

「Q2Bにようこそ」という呼びかけは、こう述べている。「Q2Bのミッションは、近未来の量子コンピュータのリソースを使った、最適化・シミュレーション・機械学習・暗号等のアプリケーションの開発を刺激することです。」「量子コンピュータを実世界の問題に応用する方法を開拓するために、研究者と産業界の実践者のコラボレーションを進めます。」

日本では、「量子コンピュータの応用は、まだまだ先のこと」と考えている人が多いのだが、アメリカでは実践的な応用への関心は、年を追うごとに大きく拡大している。

Q2Bカンファレンスの紹介のセミナー、日本でもやりたいなと思う。

意味を考える1 -- 「皇帝の新しい心」

ペンローズの「皇帝の新しい心」(1989年)の冒頭には、お母さんがコンピュータ科学者、お父さんがコンピュータを破壊しようという、今でいう「テロリスト」を両親に持つ子供が登場する。これって「銀河鉄道999」のメーテルの家庭環境と同じだ。

舞台は、国をあげて開発した、その国の全ての人間のニューロンの数より多い10の17乗個の論理ユニットを持ち、その知能は想像もつかないほど高いと言われている、巨大コンピュータUltronicの火入れとお披露目の場。

その子は、お母さんが有力な開発者だったので、セレモニーの前から三列目にいる。(お父さんは、爆発物が見つかって拘束されている)。司会者が、「誰か、Ultronicに、最初の質問をしてみませんか?」と会場に声をかける。みな、自分の無知を晒されるのがいやと思ったのか、誰も手を上げない。

その子は、Ultronicの開発と一緒に育ったようなものだったので、「彼」が何を感じているのか自分のことのようにわかるように思っているので、臆せず手を挙げる。司会者が彼を指名する。

その時、何かが起きる。

約400ページほど省略すると、あれ、これってネタバレ? でもネタバレしないと話が進まないな。まあ、いい。会場で起きたことについては、次のポストで書く。

それは、コンピュータによる「意味」の理解に関連した、とても面白い寓話だ。

(ちなみに、ペンローズの次の本「心の影」の冒頭にも寓話が掲げられているのだが、それは、プラトンの「洞窟の喩え」を寓話にしたものだ。彼は、数理哲学的には、プラトン流の「実在論者」なのだ。)

ペンローズのこの本は、30年前のものだけど、人工知能論としては、頭三つぐらい飛び抜けている。サールらの「強いAI」「弱いAI」論の批判などは、痛快なものだ。

僕は、人工知能論では、「計算主義」の立場に立つのだが、この本は、全力で「計算主義」を批判している。ペンローズの「計算主義」批判は、避けて通れない問題だ。

ある意味皮肉な話だが、個人的には、この本が出た頃、哲学では飯が食えなくて、僕は哲学からITの世界に転進する。この本が扱っている問題は、当時の僕の哲学的関心には、とても身近な話題だったのだが、ITの問題としては僕は真面目に考えてはいなかったと思う。それは、僕の視野の狭さのせいだと思う。

ITの世界に30年いて、最近は、人工知能がある意味…

万延元年のアメリカ情報

イメージ
スコット・アレクサンダーという作家がいる(SF作家かもしれない。"Science Fiction"じゃなくて"Speculative Fiction"だと、誰かが言ってた)。彼のblog("Slate Star Codex")、時々見ているのだけど、そこで見つけた画像。https://goo.gl/vZRpiy


2020年11月21日が、メイフラワー号アメリカ到着の400周年に当たるらしく、アメリカでは、自国の歴史への関心が高まっているのかもしれない。

この絵は、江戸時代の1861年に日本で出版された「童繪解萬國伽」("Osanaetoki Bankokubanashi"と読むらしい)からのもの。コロンブスのアメリカ大陸「発見」から、イギリスからの独立戦争までのアメリカの歴史を、日本の読者に伝えている。

160年前の日本人の知識欲は驚くほど旺盛である。もっとも、黒船騒ぎでアメリカへの関心は高かったのだろうが。でも、江戸時代にこんな形で、アメリカについての情報が広まっていたのは知らなかった。これ、子供向けの本ということになっている。

1860年は、万延元年だ。幕府はアメリカに大型の遣米使節を派遣して同年11月日本に帰ってくる。僕は、勝海舟や福沢諭吉やジョン万次郎もこの使節団の一員だと思っていたのだが、違うようだ。彼らは、この使節団を護衛する咸臨丸に乗っていた。(「万延元年遣米使節団員名簿」https://goo.gl/ArGZ53 ) 多分、そこでの知見が、この本に生かされているのだと思う。

確かに、いろいろおかしいところはある。弓を引いて戦っているのは、ワシントンだという。「國父 話聖東」は「建国の父 ワシントン」だ。(絵師は、アメリカ見ていないのだから。インスタもなかったし。)

ジョン・アダムスの母は、大蛇に飲み込まれ、アダムスはその敵討ちをするらしい。おいおい。ほとんどフェークだ。

「独立」とか「民主主義」がどう紹介されていたのか、興味があったのだが、ワシントンが虎と素手で戦い、アダムスが巨大なワシを召喚して大蛇と戦うんだから、多分、そんな話は出てこないだろう。

でも、160年前の日本人、一生懸命、こうした情報集めてたんだな。エライと思う。この本だけではないのだ。あとで見るNick…

画像を探す

イメージ
Adam Brownの学会でのプレゼン "Complexity and Geometry" を探していたのだが、表紙に格好いい絵が使われていた。https://goo.gl/Zuyg7Z よく見ると、持っているものに(元々は、ハープだったらしい)量子回路の図が書いてあって、「あっ。すごいな。この絵も彼が書いたのかな。」と感心した。



ところが、この学会 Strings 2017 自体のアイコンに、この絵が使われていることに気づく。もちろん、量子回路は書かれていない。画像は、http://www.strings2017.org/ でみれる。「あれ? おかしいな?」と思って、画像検索をする。




そうしたら、見つかったのがこの写真。これは、1965年に、ガザで見つかった7世紀初頭のビザンチン時代のモザイクらしい。ダビデ王がハープを弾いているところだという。wikiにも、このモザイクが紹介されている。"Gaza Sinagogue" https://goo.gl/56LYzn


この学会、イスラエルのテルアビブで開かれた超弦理論の国際カンファレンスなので、この地の文化遺産からハープを選んだのは、まあ、わからなくもない。

ただ、二つの絵、よく似てはいるが、いろいろ細部は異なっている。だいたい、僕には、Adam Brownの表紙は女性に見える。ダビデ王は、ヒゲを蓄えているように見える。

問題は、学会のアイコンが発掘されたダビデのモザイクより、回路図を除けばBrownの表紙の方に似ているように見えること。

この三枚の絵は、どういう関係なんだろう?

----------

酒井さんの指摘もあって、こう考えることにしました。

・この絵は、3枚とも、ダビデのもので、少女ナウシカではないですね。元の絵は、発見された古いやつです。

・元のモザイクは断片で古いものだから、修復されて綺麗になった画像(あるいはモザイクそのものかもしれません)が、使えるようになっていたと思います。美少年だったダビデは、少女のようにも見えます。ヒゲはありません。

・大会の主催者は、この修復バージョンを使いました。もちろん、この絵がダビデのものであることを知っています。

・ブラウンは、大会のアイコンを見て茶目っ気を出します。ハープをゲート回路に書き換えます。

・(細かい話)僕は、回路…

科学と哲学

12月14日開催の連続ナイトセミナー「人工知能を科学する」の今回のテーマは、「人工知能と哲学」です。https://lab-kadokawa72.peatix.com/

「人工知能を科学するのに、哲学必要ですか?」と思われた人も少なくないと思います。たしかに。

科学や数学は、確立された体系(少なくとも「これまでに確立された」という意味ですが)を持っています。その成果は、多くの人に等しく共有されています。今では誰もが、「地球が太陽のまわりを回っている」「リンゴが木から落ちるのは重力があるから」と考えています。もちろん「1+1=2」で「直角三角形ではピタゴラスの定理が成り立つ」ことも。そういう知識のあり方を「累積的知」と呼ぶことがあります。

哲学には、残念ながら、確立された体系も万人が認める真理も存在しないように見えます。人によって物事の捉え方が異なるのですから、哲学にも色々な立場があります。「残念ながら」と書きましたが、それはそれでいいことだし、これからも哲学が「完成」するようには思えません。

そうした意味では、科学と哲学は、かなり違っています。

ただ、科学と哲学は、想像以上に広い接点を持っています。それは、おそらく、技術がビジネスや経済合理性と強い結びつきを持っているのと同じだと思います。「科学と哲学」と「技術とビジネス」の二つの結びつきをくらべれば、その結びつきのの質はずいぶん違うし、「科学と哲学」のつながりはあまり意識されることは少ないのですが。

科学も数学も「発展」して、その体系を「更新」します。現在の科学が全ての問題に解答を用意しているわけではないのです。現在の科学では説明できない「謎」の存在こそ、科学を発展させる原動力です。「謎」に立ち向かうには、様々な「立場」、ある場合には矛盾する「仮説」が必要になります。そのような局面では、科学者も哲学していると考えていいのだと、僕は考えています。

今回のセミナーでは、三つの話をしようと思います。

一つ目は、「コンピュータは人間を超える」という「シンギュラリティ論」や、「そんなことはない。人間の脳の働きはコンピュータのアルゴリズムを超えている」というペンローズらの「量子脳」理論を、「計算主義」の立場から批判してみようと思います。

二つ目は、言語の意味の理解を例に、文法の理論と双対の意味の理論が必要だという話をします。…

複雑性と重力 3

ブラウンとサスキンドの論文「複雑性理論の第二法則」を紹介しているのだが、それは、もちろん、ITの世界でも関心が高まりつつある「量子コンピュータ」に関連しているのだが、どこかずっと遠くをみていることが面白い。

「ブラックホールは、宇宙で一番高速なコンピュータである。ただ、このコンピュータは、何の役にも立っていない。」

もちろん、ブラックホールの内部にあるのは量子コンピュータだ。何の役にも立っていないというけど、それは、自身の量子状態を、カオスなスクランブルの時期を経て更新する。でもそれは、「計算過程」であると同時に、自然の「物理過程」そのものだ。ニュートンの木から落ちるリンゴだって、自分の運動を「計算」しているのかもしれない。

この論文が面白いのは、次のような問題提起をしていることだ。

ブラックホールの量子コンピュータは、その複雑性がマックスに達すると、お腹がいっぱいになって、もはや計算することができなくなる(かれらは、それをブラックホールの周りにはファイアーウォールができていて、なにものも侵入できないという「AMPSパラドックス」と結びつけて論じている。)それは、エントロピーが最大の状態になると、熱機関に「仕事」をさせることができなくなるのと同じだ。

ところが、そこに、qubitが一個落ち込むと、光速の衝撃波とともにスクランブルが始まるのだが、それでブラックホールの複雑性Cが大きく変わるわけではない。ただ、その複雑性の取りうる可能な最大値がCmaxが大きく変わるという。

K個のqubitからなるシステムの複雑性の最大値は2のK乗だ。一個のqubitが増えると、それは2の(K+1)乗になる。複雑性の最大値は、ちょうど二倍になる。

彼らは、システムが取りうる可能な複雑性の最大値と、そのシステムの現在の複雑性の差を、uncomplexity (先に「非複雑性」と訳した)と呼ぶ。熱力学でいう「ネガ・エントロピー」と同じようなものだ。uncomplexityがあると、我々は、そのシステムに「仕事」をさせることができる! もちろん、その仕事は「計算する仕事」である! uncomplexityは、量子コンピュータの「計算資源」なのである。

「伝統的な熱力学の理論は、断熱圧縮・熱機関・冷却機械・マックスウェルの悪魔等々の一連の思考実験を通じて発展してきた。量子複雑性を含めて、同じ…

複雑性と重力 2

量子論と相対論の統一の思考実験の舞台は、ブラックホールだ。

ブラックホールは、奇妙な性質を持っていて、質量と電荷と角運動量という三つの物理量しか持たない。外から見る限り、全てのブラックホールは、この三つの量でしか区別できないのだ。ウィーラーは、これを、「ブラックホールには毛がない」と言った。(毛は、三本はあるのだが。オバQと一緒だ。)

ブラックホールは、周囲のものすべてを飲み込むのだが、飲み込まれたものの持っていた情報は、全て失われたように見える。ホーキングは、ブラックホールのシンギュラリティ(特異点)で情報は失われるとした。それに反対したのが、トフートとサスキンドだ。

この論争は、半ば冗談めかして語られるのだが(論争で負けを認めたホーキングは、プレスキルに、「野球百科」を送ったらしい)、僕は深刻なものだったと考えている。それは、サスキンドの"Black Hole War"を読めばわかる。かれは正直に、ホーキングという「カリスマ」に対する激しい反発の感情を語っている。

この論争から、「ホログラフィック原理」が生まれ「境界」の重要性が認識され、それは、マルデセナによろAdS/CFT対応の発見に繋がっていく。

ブラックホールには、毛がないとして、それでは、その内部では何が起きているのだろうか? サスキンドの理論の基本的なイメージを述べる。

ブラックホールの内部の状態は、ある量子状態 |Q>をとっている。それがK個のqubitの状態として記述されるのなら、その複雑性の最大値はC_{max}は(maxはCの添え字)、2^K(2のK乗)で与えられる。

量子状態 |Q> (複雑性をCとしよう)を持つブラックホールに、(|0>+|1>)/√2で表されるqubitが一個吸い込まれたとしよう。その時、ブラックホールの量子状態は、|Q>から、|Q'> = (|0>⨂|Q> + |1>⨂|Q>)/√2 に変わる。qubit一個が取り込まれただけで、ブラックホールの量子状態は、全面的に組み変わることになる。

式は簡単だが、状態ベクトル|Q>が巨大な時には、この|Q>から|Q'>への状態変化には膨大な計算が必要になる。qubit一個でも、外部から何かがブラックホールに落ち込んだ…

複雑性と重力

イメージ
先に、量子情報理論での「量子テレポーテーション」を、エンタングル状態にある二つのミクロなブラックホールが形成する「ワームホール」をqubitが通り抜ける過程として解釈しようとする理論を紹介した。 今回は、現在進行中の量子論と相対論の統一を目指す動きの中で中心的な役割を果たしているのは、「複雑性」というコンセプトであることを紹介したい。 まず、ここでの「複雑性」の定義から。 サスキンドは、状態|A>と状態|B>との間の相対的な複雑性 C(A, B)を次のように定義する。
  C(A, B)= 状態|A>から状態|B>を得る為に必要な最小の量子ゲートの数
すなわち、C(A, B)は、|B> = gggg....|A> となるような最小の量子ゲートgの数である。 この時、C(A, B) =  C(B, A), C(A, B) = 0 iff A=B と、C(A, B) ≦ C(A, D ) + C(D, B ) (三角不等式)が成り立つ。こうして、相対的な複雑性 C(A, C)は、正規化された状態空間の計量(距離)になる。さらに、ある状態の絶対的な複雑性 C(A)を、単純な状態、すなわちエンタングルしていない状態への最小の距離として定義する。 こうして、量子の状態の空間に、この複雑性を計量とした複雑性の幾何学を構成できる。この幾何学上に、一般相対論の基本的命題との対応物を構築していく。「測地線」とか「最小作用の法則」が働く「作用」の量子複雑性幾何学バージョンが存在するのだ。 この対応づけが、驚くような対応関係を明らかにしつつ、面白いように進むのだ。 例えば、この量子複雑性は古典的なエントロピーに対応する。ただし、N個のqubitからなるシステムの複雑性の最大値は、2のN乗になるのだが、古典的な統計力学では、N個の状態からなるエントロピーの最大値はNである。 このことは、N個のqubitからなるシステムの量子複雑性が、2のN乗個の自由度を持ったシステムの古典的エントロピーのように振舞うことを示している。 それらの対応関係は、次の論文「量子複雑性の第二法則」に展開されている。先の紹介は、この論文の第一章を要約したものだ。もちろん、この論文のタイトルは、「熱力学の第二法則」との対応を強調したものだ。 "The Second Law…

六本木一丁目駅の不思議

イメージ
昨日は訪問先の渋谷のオフィスが見つからず困る。「〇〇ビル一階」の「〇〇ビル」はGoogle様のお告げでなんとかたどり着いたのだが、そのビルの一階には、めざすオフィスがないのだ。なんどさがしてもないものはない。 理由は簡単だった。一階と思っていた道路に面したエントランスが、実は二階だったのだ。坂道に建てられているビルには、時々そういうことがある。後から来た友人が、掲示板を見てすぐに気づいた。彼が来なければ、諦めて家に帰っていたと思う。まぎらわしい。(ちゃんと掲示板見ろよ。) 次の六本木一丁目のミーティングでも困る。相手が現れないので、メッセすると、「もうついてます」という。なんど店内を見回しても、いないものはいない。 もしやと思って店員さんに聞くと、「この近くタリーズ、三軒あります」という。 彼がいたのは一丁目店で、僕がいたのは三丁目店だった。二つの店は地下鉄の線路をはさんですぐ近くにあるのだが、六本木一丁目駅、工事中で、駅を通り向けることができないので、彼は、大回りをすることに。 あとになって、気づいたことがある。 彼がいった一丁目店が、本当は、僕も行こうと思っていた店だったことに。前に行ったことがある。その時は、駅員さんにずうずうしく「反対側に行きたいんだけど」と言ったら、通行証みたいのを渡されて、すんなり通してくれたんだ。彼にそのこと教えればよかった。 僕がいたお店は、実は、以前に行ったお店ではなく、違うお店で、初めてのお店だったことになる。同じタリーズなので気づかなかった。六本木四丁目のバス停で降りて、六本木一丁目駅に向かって最初に見つけたタリーズだったのだが、それが三丁目店だったんだ。 きっと、六本木の一丁目と三丁目と四丁目は、すぐ近くにあるんだと思う。おそらく二丁目も。
地図を調べてわかりました。

「六本木一丁目駅」は、一丁目と二丁目と三丁目の三つのエリアが、ちょうど接するところに建てられているんですね。近いはずです。

「泉ガーデン」があるのが一丁目、「グランドタワー」があるのが三丁目です。「アパホテル六本木一丁目駅前」の住所は、実は二丁目です。

二丁目と四丁目も近くて、「ガリシアヒルズ」は二丁目ですが、「Speee」は、もう四丁目です。二丁目と四丁目が隣り合っています。

一丁目、二丁目、三丁目、四丁目、全然、一直線上には並んでいません。といって、綺麗に渦巻き状…

コップの中の「宇宙」

イメージ
11月の講演も一段落したので、今回は、もう少し基本的な話をしようと思う。

量子情報理論や複雑性理論が、現代の物理学の中心課題である量子論と相対論の統一に重要な役割を果たしているという話である。

以前にも、量子論と相対論の統一については、ここで、サスキンドとマルデセナによる「ER=EPR」理論を紹介してきた。

 ●「量子論と相対論の統一としての ER = EPR 」https://goo.gl/fah5bn
 ●「ER=EPRに先行したもの (超入門編)」https://goo.gl/FxTjR2

この分野で、この間、大きな進展がある。課題をスローガンにすることの好きなサスキンドは、もう「GR=QM」というスローガンを掲げている。GRはGeneral RelativityでQMはQuantum Mechanicsだから、「一般相対論=量子力学」ということだ。

「GR=QM」については、サスキンド自身による、次のビデオがわかりやすい。"QM=GR?" https://goo.gl/WKYNdD
(論文で言えば、"Dear Qubitzers, GR=QM." https://goo.gl/weJedZ )

この理論的進展に、決定的な役割を果たしているのが、量子情報理論での「量子テレポーテーション」を、もつれ合ったミクロな二つのブラックホールの間の「ワームホール」をqubitがくぐり抜けることとして捉え直そうというアイデアである。
(図は、"Teleportation Through the Wormhole" https://goo.gl/pX6d9P から)

「ワームホール」は、アインシュタインが1935年に予見した、二つのブラックホールを繋ぐ「橋」である。サスキンドやマルデセナら現代の物理学者は、このワームホールの存在が、二つのブラックホールがエンタングル(もつれあい)状態にあることと同じであると考えている。

ただ、アインシュタイン=ローゼンの「ワームホール」は、誰も通り抜けることはできないものだったのだが、これが通り抜けられることになれば、どうなるか? 彼らは、「量子テレポーテーション」がそれに当たるという。

こうしたブラックホールは、どこにでも存在していると彼らはいう。(理論的には、そうした主張は新し…

稚内に初雪

イメージ
稚内についに雪が降りました。 一週間前にも「稚内に初雪」というニュースが流れたのですが、僕の知り合いは、だれもその「初雪」をみていなかったのです。今日は、ちゃんと誰にもわかる形で降りました。この程度の雪は、毎年、早ければ10月の終わりには降るのですが。 一週間前の幻の「初雪」も「観測史上最も遅い初雪」だったのですが、実際は、それより一週間も遅いというのが本当のところかなと思います。 東京は、今年は暖冬で、去年のようには雪は降らない可能性があるのですが、稚内で雪が降らないということはありえません。 面白いことに、稚内の人は、あまり「今年は暖冬で雪が少ないだろう」とは言いません。「今年は雪が少ないだろう」と思った途端、倍返しのようにとんでもないドカ雪に降られる経験をなんどもしているからです。 でも、今年は、雪がすくないといいなあ。

連続セミナー第三回「人工知能と量子コンピュータ」の様子です

イメージ
今日の角川さんでの連続ナイトセミナー「人工知能を科学する」の第三回「人工知能と量子コンピュータ」の様子です。参加された皆さん、3時間の長い時間、お疲れ様でした。 前回のマルレクすこし飛ばしすぎだったようで今回は少し反省して、「NP-完全」という概念にフォーカスして、全体の流れを伝えることに語り口を変えてみました。どうだったんでしょうね? 今日の資料です。ご利用ください。https://goo.gl/ymYfFY このシリーズ次回は、12月14日開催の「人工知能と哲学」です。ご期待ください。

パソコン甲子園2018の結果です。

【プログラム部門】  1位 筑波大学付属駒場高校
 2位 北九州工業高専
 3位 開成高校
 4位 N高校
 5位 灘高校
 6位 京都府立堀川高校
 7位 東京都立両国高校
 8位 灘高校 審査員特別賞
 灘高校 【モバイル部門】  グランプリ 
  沖縄高専
 ベストアイデア賞
  大阪府立大手前高校
 ベストデザイン賞
  鳥羽商船高専 ------------ モバイル部門グランプリの沖縄高専(女子二人のチーム)の作品は、沖縄を訪れる外国人観光客を対象にしたアプリ。レストランや食堂の日本語のメニューをカメラで写すと、その食品の説明が画像とともに日本語・英語・中国語(今の所は)で表示される。宗教やアレルギーの有無を入力すると、食べていいものなのかを教えてくれる。よくできている。 ------------ 帰り道、遠藤さんと上野の「デリー」でカレーを食べる。お店に置かれていた「上野のれん会」発行の無料のパンフレット「うえの」が、とてもよくできているのに感心する。

角川連続講座 第三回「人工知能と量子コンピュータ」

イメージ
あさって 11/19のセミナーですが、「はじめに」の部分できました。(遅い!)遅かったせいか、まだ、席に余裕があります。よろしかったら、聴きに来てください。https://lab-kadokawa71.peatix.com/ 資料公開しました。ご利用ください。https://goo.gl/ymYfFY ---------
はじめに
--------- 人工知能のもっとも基本的な問題の一つは、機械と人間にとっての「認識」の限界を正確に知ることであると僕は考えている。 量子コンピュータの登場が、こうした問題にどのような新しい地平を切り開くのかということは、人工知能論にとっては大事な問題である。 こうした観点から、量子コンピュータと量子複雑性理論については、これまでいくつかの機会で紹介してきたのだが、計算可能性理論や複雑性理論そのものについては、あまり語ってこれなかった。 今回は、第一部で、改めて複雑性理論の中核である「NP-完全」問題という不思議なコンセプトを説明しようと思う。「NP-完全」の発見なしには、複雑性理論は生まれなかったと言っていい。その理論的インパクトは、計算可能性理論の創出にゲーデルの不完全性定理が与えたインパクトと同じものだと思う。 「NP-完全」問題は、基本的に、力まかせの総当たりでやれば必ず解は見つかるはずというところが、どう頑張っても原理的に証明することが不可能な命題が存在することを主張する「不完全性定理」とは異なっている。 ただ、総当たりで問題を解くには、n個の条件が成り立つか否かというように問題を単純化しても、試すべき条件の組み合わせは、2のn乗個になる。nが小さいうちは(例えば、n=10なら、1024個の場合をチェックすればいい)なんとかなるのだが、nが大きくなるにつれ、問題は、文字通り指数関数的に難しくなる。それは、総当たり法では、現実的には、全く手に負えない問題となる。 量子コンピュータに対する期待の一つは、それがn-qubitの入力に対して、それに対応する2のn乗個の状態の演算を同時に実行することができるので、それをNP-完全問題の攻略に利用できるのではないかというものである。 量子コンピュータなら、NP-完全問題も解けると思っている人も少なくないのだが、それは誤解である。そんなにうまくはいかないのだ。その誤解を解くことが、「NP-完全…

届かない郵便

簡易書留で送られた新幹線の切符を取り逃がし「みどりの窓口」に並ぶ破目に。もちろん、あとで旅費の精算はしてもらえるのだが。面倒くさい。 不在ということで、切符は送り主に返送されたらしいが、昨日の時点ではまだ送り主に届いてなかった。早く着かないと、明日の指定券なので、先方が指定券払い戻しできなくなるんだけど。(先方もいい迷惑だろうな) アマゾンやクロネコのサービスに慣れてしまうと、不在配達の通知票を一回おいただけで、時間切れで送り返すというのは、どうかと感じてしまう。届かなかったことと返送されたことの追跡確認はできたのだけど、それは、今回の場合は、あまりありがたいサービスではない。 たしかに、宅急便のようになんども再訪問するのは過剰サービスなのかもしれないんだけど。 それに、僕、天地神明に誓って(いつから、神様信じるようになったんだい)、不在配達の通知受け取ってないんだけど。 切符は手に入れたし、まあ、いいか。
関係者の皆様、おさわがせしてすみません。

ETロボコンでwakhokチーム優勝する

イメージ
ETロボコン2018ガレッジニア部門で、ネパール出身のゴータム先生率いる、wakhok(稚内北星学園大学)チームが、「最優秀賞」「一般審査部門最高賞」「IPA賞」を受賞し、ガレッジニア部門のタイトルを総取りしました。

受賞したプロジェクトは、5000年前から使われている「石臼」を現代に蘇らせようとするもの。ソーラーパネルで発電した電気を使って、音声コマンドで、石臼でコーヒーを引くもの。次のビデオをご覧ください。https://goo.gl/Gbz7Af 昨日、築地の大沼に集まった ひでやさん、川添さんと僕は、10数年前、一緒にネパールに行っていました。佐藤直生 さん、石原直樹 さん、ひがやすお さん、一戸伸哉 さん もカトマンズで一緒でした。 ひでやさんと川添さんは、その時以来の再会で「懐かしいね」という話をしていたばかり。 カトマンズで、wakhokの主催でJavaコンテストを開いたのですが、優勝したのはとても優秀な高校生でした。あの子は、今、どうしてるのかな。

MaruLabo 「大沼」へ

イメージ
今日は、稚内に初雪が降ったというニュースを見たのだが、彼女に聞くと「ふってないわよ」という。稚内のどこかで、一瞬降っただけらしい。 今日は、MaruLaboのメンバー 古川新君・ Hideya Kawaharaさんと、築地の川添真智子さんの「 大沼」に行ったら、 佐々木さんとMSの 廣瀬さんにあった。狭い世界だ。


企業内 量子コンピュータ勉強会

イメージ
今日は、とてもいい経験をしました。 ある会社さんが、社内の勉強会に僕を呼んでくれて、朝10時から夕方6時まで(もちろん休憩を含めてですが)「紙と鉛筆で学ぶ量子情報理論基礎演習 I」をみっちり展開することが出来ました。 社内勉強会に呼ばれるのは、これで二社目なのですが、僕の予想を超えて、今回は20名以上の人が参加してくれました。 先日のIBMさん会場でのセミナーでも、社内セミナーというわけではなかったのですが、IBM社内の人がたくさん熱心に参加してくれたのが、とても印象的でした。 IBMさんを含めると、量子コンピュータに興味を持っている社員が一定数以上いる会社は、少なくとも、これらの3社以上存在することがわかったのは、嬉しいことです。 相変わらず、時間配分が下手で、最後はいろいろ駆け足になってしまっていろいろ反省もしているのですが、この「紙と鉛筆」の基礎演習講座、もう少し頑張って続けてみようかと思っています。

丸山の今後の講演について -- 冬は「哲学」しようと思います

11月17日角川さんで開催の、連続ナイトセミナー「人工知能を科学する」の第三回のテーマは、「人工知能と量子コンピュータ」です。講演概要については、最後をご覧ください。https://lab-kadokawa71.peatix.com/

12月14日開催の「人工知能を科学する」の第四回目のテーマは、「人工知能と哲学」です。こちらもご期待ください。

この「人工知能と哲学」では、ペンローズの計算主義批判を取り上げたいと思っています。僕は、ペンローズの大ファンなのですが、彼の「量子脳」の議論には反対なのです。

この「人工知能と哲学」を皮切りに、冬の間、すこし「哲学」的な話もしたいと思っています。

次回のマルレクのテーマは、「意味の形式的理論」です。「意味の意味」については、様々な議論があるのですが、「理論とそのモデル」というモデル論的なアプローチを中心に、意味の形式的な理論について考えたいと思っています。現実的な話題としては、DiffbotやBERTの話題も取り上げようと思います。

次回の「楽しい数学」のテーマは、「数理哲学入門2 -- 「同じ」を考える」です。一年前に亡くなったヴョブドスキーのメモリアルで、彼が根本的に刷新した「型の理論」の話をしようと思います。その理論が、数学の基礎づけに大きな影響を与えたことを、「「同じ」とは何か?」という問いに対する探求として説明できればいいと思っています。

少し違う角度から、また、専門家でなくてもわかることから、我々の「認識」の能力の不思議さについて考えられればいいと思っています。冬の哲学三講座、ご期待ください。

最後に、量子コンピュータ関連の取り組みについてです。

先日のマルレク、量子フーリエ変換にフォーカスしようとしたのですが、テクニカルな議論が多すぎて、あまりうまく伝わらなかったのではと、反省しています。こちらは、「紙と鉛筆で学ぶ量子情報理論 II」でフォローします。

今月の「人工知能と量子コンピュータ」ですが、次のような話をしようと思っています。

---------------------
11/17「人工知能と量子コンピュータ」講演概要
---------------------

量子コンピュータが、人間の認識の「限界」をどのように拡大するかは、人工知能の未来を考える上で、重要な問題です。

BQP(量子コンピュータで多…

Mojaveの電源トラブル

Mac の新しいOS Mojaveの電源トラブルについての現状です。 Mojaveにしてから、電源アダプターにつないでいても、バッテリーの充電ができなくなるという現象に悩まされていました。 結論から言うと、つい先日公開されたMojaveのバージョンアップ(10.14 --> 10.14.1)で、この問題、解決されてるように見えます。まだ、4日しか経っていないのですが。 楽観できないのかもしれませんが。 Mac Shopにマシンを持ち込んで、「ハードに異常はありません」と言われた日が最悪で、1日に、7−8回、あんなリセットやこんなリセットを繰り返したのですが、状況良くならず、バッテリーが完全になくなると初めて充電が可能になると言う状態でした。 ただ、その後、電源の完全エクスパイアーを二度ほど経験したある日から、状態が急によくなりました。3日ほど、正常な状態が続いて、Facebookに「うちのマシンは「自然治癒力」を発揮しました」と投稿しようとした目の前で、バッテリーの充電ができなくなりました。ばかやろうです。 今回は、その3日の記録を1日更新しました。前回は、「自然治癒力」頼みでしたが、今回は、Apple様のOSバージョンアップ頼みですので、根拠はないですが、たぶん、ききめは大きいと考えています。 (マシンが自然治癒しただけなのかもしれません。そういえば、僕が、この時期、数日風邪で寝込んだのは、Macの病気が、僕にうつったからかもしれません。僕のバッテリーもエクスパイアーしましたから。) ありがたいMojaveの最新版 10.14.1 ですが、別のトラブルも抱えているようです。HDMIのドライバーが更新されたのか、いままで問題なかったプロジェクターへの接続がうまくいきません。 先日のMSさんでのマルレクでは、プロジェクターに繋がらず(一瞬だけ繋がるけど、すぐ繋がらなくなる)、他の人からマシンを借りて(Mojaveの10.14でした)、講演をする羽目に。 これ、困るんだけど。 一難さって、また一難。 「それでも、新しい方が好き。」
Mac Shopでは、OSのダウングレードを勧められました。 多分、僕がちょっと軽い「病気」なんですね。

11/2 マルレクの様子です。

イメージ
本日のマルレクの様子です。たくさんの方のご参加ありがとうございました。 マイクロソフトの 佐藤 直生さん、今回もお世話になりました。  内容少し詰め込みすぎでした。来年から始めようと思っている6時間コースの「紙と鉛筆で学ぶ量子情報理論基礎演習 II」で、きちんとフォローして行きたいと考えています。今日の内容、きっと完全に理解できるようになると思います。乞うご期待。



11/2 マルレク「量子アルゴリズム入門」の講演資料です。

イメージ
11.2 マルレク「量子アルゴリズム入門 -- 量子フーリエ変換を学ぶ」https://q-algorithm.peatix.com/ の講演資料です。https://goo.gl/DkRZHK ご利用ください。 大変、申し訳ないのですが、11/2マルレクの開始時間が変更になりました。会場 19:00から確保したのですが、直前まで同じ部屋でイベントがあるとのこと。 参加者が少ないならなんとかなるとも思ったのですが、参加申し込みが140人あって満員状態なので、30分遅らせて、19:30からの開始にしたいと思います。こちらの確認ミスです。すみません。 今回のは、2時間の入門講座・概論講座ですが、全体像を掴むにはいいのではと思っています。来年からは、演習形式の「紙と鉛筆で学ぶ量子情報理論 II -- 量子アルゴリズム編」を始めたいと思っています。こちらも、よろしくお願いします。

息子の所に息子が生まれて一ヶ月。

まだ5kgぐらいなので、まだまだ小さい。息子はガタイがでかいので、その何十分の一ぐらい。でも身長は5cmも伸びた。一月に、5cm背が伸びた経験、自分の記憶にはない。これで普通だというから、赤ちゃんはすごい。

よく寝て、よく泣く。

寝るのは僕も得意だが、「世界の終わり」のように、全身でガン泣きする。赤ちゃん、ジムにもマラソンにも行かないが、泣くことが、自然な運動になっているんだと思う。僕も、泣きたいことはあるし、運動不足なので、あんなふうに泣いてみたいものだと思う。(真似しない方がいいのだろうか?)

僕も子育てはしていたのだが、すっかり、忘れていたことがあった。赤ちゃんは、一ヶ月もしないうちに笑うことを覚えるんだ。

笑う時、何考えているんだろうと思ったが、決して彼のアタマは空っぽではない。目があいてものの動きを追い、耳は音に反応するようになっている。彼のアタマの、現在進行中の変化は猛烈なものだ。きっと、僕が10年間考え続けたとしても、僕のアタマの変化は、彼の一ヶ月の変化にはかなわないだろう。

そういう時に、笑い始めるんだ!

快楽原理や自己中心性や強化学習マシン、いろいろ説明はあるのだろうが、考え始めることと笑い始めることが一緒に始まるというのが、なんだか知らないが、素晴らしい!

僕も、笑いながら考えようと思う。
(真似しない方がいいのだろうか?)

連続講座「人工知能を科学する」第二回「人工知能と自然言語」

イメージ
昨日(10/26)の角川さんでの連続講座「人工知能を科学する」第二回「人工知能と自然言語」の様子です。沢山のご参加ありがとうございました。 あと講演終わってからの打ち上げの様子です。
実はこの間風邪で寝込んでいました。
皆様も、風邪など引かぬようお気をつけください。

Videos from Prospects in Theoretical Physics 2018

rom Qubits to Spacetime,” the title of 2018's Prospects in Theoretical Physics program, took place from July 16–27, 2018, and covered topics ranging from the connections between quantum information and the structure of spacetime, to how information is shared between subsystems and is manipulated by the dynamics, and how quantum effects can be included in black hole thermodynamics. Introduction to Information Theory by Edward Witten Holographic Entanglement Entropy I by Matthew Headrick Quantum Field Theory and Entanglement by Edward Witten Quantum Information and the Black Hole Interior 1 by Ahmed Almeiri Light Rays and Black Holes I by Edward Witten Holographic Entanglement Entropy II by Matthew Headrick  Quantum Information and the Black Hole Interior II by Ahmed Almeiri Entanglement in QFT by Thomas Faulkner