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セミナーの名称変更について

お伝えしていた3月23日開催予定の量子プログラミングのハンズオンですが、名称を「実際の量子コンピュータで学ぶ量子プログラミング入門」から「量子コンピュータで学ぶ量子プログラミング入門」に変更します。 今年に入って、IBMさんが量子コンピュータの商用サービスを開始したことをご存知の方は多いと思います。(例えば、次の記事「IBMが世界初となる商用量子コンピュータ「IBM Q System One」を発表」https://goo.gl/yqn5tv ) 同時に、IBMさんが、無償で実際の量子コンピュータにアクセスできるサービスを始めていることも、画期的だと思います。今回のハンズオンは、このサービスを使ってみようという企画です。 今はもう、誰でも、ネット越しに無料で量子コンピュータを動かしてみることができる時代になっているんですね。思っていたより、だいぶ早いですね。 今まで展開してきた「紙と鉛筆で学ぶ ... 」というシリーズに対して、「実際の量子コンピュータで学ぶ ...」という対比も面白いと思いました。 ただ、少し問題があります。 一つには、ハンズオン当日に、お目当の量子コンピュータが、ちゃんと機能しているか保証がありません。昨日の状態ですと、IBMさんが無償で提供している4台の量子コンピュータのうち、3台が「メインテナンス中」でした。(その点は、有償の「商用サービス」とは、違っても仕方ないですね。) もう一つには、もしも、実際の量子コンピュータが動いていたとしても、ハンズオンで数十人が一斉にログインした時の挙動の予測がつきません。多分、ハンズオンの参加者だけでなく、世界中からのアクセスもあるでしょうから。やってみないとわかりません。 というわけで、すべてのハンズオンを実際の量子コンピュータ上で行うというわけではないことを明確にしたほうがいいと思っています。 次のようなことを考えています。   ・ハンズオンの課題は、量子コンピュータのシミュレータを使います。 ・実際の量子コンピュータを使う手順を解説します。 ・実際の量子コンピュータにアクセスし、いくつかの課題を実行します。 もしも、ハンズオン当日に、実際の量子コンピュータにアクセスできないことがあっても、最低限、後日、機会を改めればアクセスできるようにしたいと思っています

「紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門」講演資料更新

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2/23開催の「紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門」講演資料です。ご利用ください。https://goo.gl/cu3HPm 三回目の更新です。以前に「紙と鉛筆 ... 」を受講された方、今回の資料の方がわかりやすくなっていると思いますので、資料を更新していただけますか? 以下の項目で加筆・修正があります。  ・「テンソル積」  ・「エンタングルメント」  ・「Bell State ゲートの働きを 暗算で計算する」 資料を、読んでもらってもいいのですが、実際に、手を動かして「計算」するのが理解の上では重要かと。お時間がありましたら、来週開催の6時間演習セミナーに、是非、ご参加ください。https://goo.gl/jKEEh7 企業内での「量子コンピュータ」の勉強会も引き受けています。丸山まで、コンタクトください。 このセミナーを皮切りとする、この春の4つの量子セミナーの日程と会場が決まりました。 2月23日(土) 「紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門」@角川 13:00~19:00 3月23日(土) 「量子コンピュータで学ぶ 量子プログラミング入門」@角川 13:00~19:00 3月25日(月) マルレク「量子コンピュータをやさしく理解するための三つの方法」@ DMM 19:00~21:00 4月21日(日) 「紙と鉛筆で学ぶ量子アルゴリズム入門」@角川 13:00~19:00 こちらにも、是非、ご参加ください。

量子コンピュータを、なぜ難しく感じるのか? 

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量子コンピュータへの関心が高まっています。 その一方で、それへの「近づきがたさ」を感じている人もたくさん存在しています。むしろ、量子コンピュータへの関心の高まりとともに、そうした人の数は、増大しています。 量子コンピュータを難しいと感じるのには、いくつかの理由があるのですが、僕は、その最大の理由は、その「なじみのなさ」「これまで、どこでも習ったことがない」ことにあると考えています。量子コンピュータを学校で習ったことがある人は、あまりいないでしょうから、その意味では、難しく感じるのは、ある意味当然のことかもしれません。 ただ、その難しさは、見かけだけのことかもしれません。 外国語の学習で考えてみましょう。250年前の日本には、英語を理解できる日本人は、おそらく、一人もいませんでした。でも、今では、中学生は全員、英語を学んでいます。江戸時代の日本人が、外国語を理解する能力が低かったのでしょうか? そんなことはないと思います。「學而時習之,不亦說乎?有朋自遠方來,不亦樂乎?」というような漢文を、多くの日本人は子供を含めて、理解できたのですから。 量子コンピュータを「近づきがたい」と感じるのは、理解力がないからではありません。それは、江戸時代の人が、おそらく英語のアルファベットに感ずるであろう「近づきがたさ」と同じようなものだと僕は考えています。それは「受けて来なかった教育」のせいといってもいいのですが、基本的には、その時代に多くの人が手に入れることのできる情報の問題です。 ただ、この点では、現在は、250年前とも100年前とも50年前とも、大きく違っています。これはとても大事なことだと、僕は考えています。 現在では、たとえ「学校」で「教育」をうけていなくても、いくらでも情報は手に入ります。自分だけで学ぶことも可能です。また、新しいことの学習をを助けるコミュニティや勉強会がたくさん存在します。ITの世界で働いている人は、以前に学校で習った技術的知識がすべてではないことは、よく知っていると思います。 量子コンピュータについても同じです。学ぶ機会がなかったから難しく感じるだけで、最初から難しいと身構える必要はありません。 そうは言っても、量子コンピュータを学ぶことは、英語を学ぶことより、対象が「不可思議」で、内容的にずっとずっと難しいことな

マルレクの今後の予定について

新年度の4月から、マルレクの運営事務局を「丸山事務所」から「MaruLabo」に移行して一本化します。 もちろん、「マルレク個人協賛会員」は、新しい事務局にそのまま引き継がれます。 2019年のマルレクは、基本的には隔月開催で、当面、次のような予定を考えています。ご期待ください。 --------------------------- 2019年 マルレクのテーマ ---------------------------  1月 「人工知能と意味の形式的理論」 (2019/01/08 終了)  3月 「量子コンピュータをやさしく理解する三つの方法       -- String Diagram 入門」  5月 「人工知能と論理的数学的推論      -- Yet Another AI 入門」  7月 「構成的意味論      -- DisCoCat 入門」 マルレクで概論を述べたら、MaruLaboのセミナーで、それを補う講義・演習・ハンズオンを行いたいと考えています。角川さんと共催の形が多いと思います。 当面、昨年 11月2日に開催したマルレク「量子アルゴリズム入門 -- 量子フーリエ変換を学ぶ --」の演習を、角川さんとの共催で、2月末に開催したいと思っています。「紙と鉛筆 ...」の第二弾の新しいコンテンツで、6時間のコースです。詳しくは、後ほど公開します。  -----------------------------------------------  2/23 「紙と鉛筆で学ぶ 量子情報理論基礎演習 II   -- 量子アルゴリズムの基礎と量子フーリエ変換を学ぶ」  ----------------------------------------------- また、IBM-Q, Google CirQ, MS Q# (多分、全部いっしょではなく)を使った、量子コンピュータのプログラミングのハンズオンをやりたいと考えています。 実は、2017年度のマルレク、僕の個人的事情で 5回しか開催できませんでした。2018年度のマルレク 7回しますと言っていたんですが、2018年は、路線を変えて手を広げたせいで、セミナーはたくさんやったのですが、マルレクの約束果たせませんでした。ごめんなさい。 2017年の「つけ」を

「意味の形式的理論」ビデオ配信始まる

1月8日に開催したマルレク「人工知能と意味の形式的理論」のビデオ配信が始まりました。ご利用ください。 https://crash.academy/video/630/1961 講演資料はこちらです。 https://goo.gl/CPXndH

ごめんなさい

Macでバッテリーが、時々、充電できなくなって困っていたのですが、原因わかりました。 昨年10月、Mojaveにバージョンアップして、すぐに症状が現れ、アップル・ストアに駆け込みました。運悪くマーフィーの法則の逆が起きて、ついさっきまで、あんだけ言うことをきかなかったマシンが急にいい子になって、お店ではちゃんと充電ができるのです。チェックしてもらったのですが、本体にも電源アダプターにも異常がなく、症状にも再現性がなく、変なクレーマーとして退散。 家に帰ったら、症状が再発。ハードに問題がないなら、ソフトが原因だろうと、Mojaveを疑う気持ちが高まりました。 11月に、Mojaveのバージョンアップ(10.14 --> 10.14.1)が出て、それを使ったら、症状が現れなくなりました。やっぱり、Mojaveが原因だったろうとその時は思いました。Facebookにも、Mojaveのバージョンアップでなおりました報告。   ただ、幸福な時間は長く続きませんでした。数日たって、症状が再発。でも、以前より、発症の頻度は落ちたように思えたので、Mojaveのバージョンアップと機械の自然治癒力を信じて、だましだまし使っていました。 ところが、今年に入ったある日、激しい発作が起きました。10月にアップル・ストアに駆け込んだ時のように。なんど、あんなリセットやこんなリセットを繰り返しても、ダメなんです。バッテリー残量ゼロのまま、たまらず、またアップル・ストアに。 で、本題です。 対応してくれた彼女、すぐに原因を見つけてくれました。素晴らしい。 原因は、電源コードでした。 電源アダプターじゃなく、コードの方です。僕のコードとお店のコードを交換すると、なんどやっても僕のコードでは充電できず、お店のコードでは充電できるのです。見事な再現性。 前回のように、カマトトぶりを発揮して無理にいい子ぶることはありませんでした。疲れたのでしょうか、もう限界だったのかも。 Mojaveがおかしいと言いふらして、Mojaveさん、ごめんなさい。濡れ衣でした。思い込みは、よくないですね。 Mojaveに更新した段階で、症状が起きたのは、多分、まったくの偶然だったのでしょう。いろんなことが起きるものです。偶然ですから。でも、同時に起きた偶然には、因果関係は

「楽しい数学」「同じ」を考える--「型の理論入門」

明日開催の「楽しい数学」「同じ」を考える--「型の理論入門」 https://mathnight4.peatix.com/   の講演資料です。ご利用ください。 https://goo.gl/nbrFcU 本資料の第三部は、次次回開催のマルレク「コンピュータで数学する -- Yet Another AI」につながっていきます。この分野に興味のあるかた、目を通しておいてもらえますか?  ------------------  「はじめに」から  ------------------ 「同じ」あるいは「同じではない」という判断は、知覚にとっても認識にとっても、最も基本的な判断の一つである。認識の対象が、自然であれ、人間であれ、あるいは、思惟が産み出す抽象的な概念であれ、その認識の土台には、対象の「同一性」についての判断があるように思う。 小論の第一部では、まず、日常の生活の中にも現れる「同じ」をめぐる問題を、いくつかのサンプルで考えてみようと思う。その後で、「哲学者」たちが、こうした問題をどのように考えていたのかを、きわめて簡単に振り返ろうと思う。 残念ながら、小論は、「同一性」についての、「哲学的」議論を紹介することを目的とはしていない。ただ、第一部での議論を通じて、日常の中にも、浅からぬ哲学への入り口が存在していることを意識することを楽しんでもらえれば嬉しいと思う。 小論の第二部では、20世紀の科学が、すくなくとも自然認識の領域では、「同一性」概念の大きな変化を引き起こしたことを述べようと思う。 相対論は、宇宙規模の巨大な空間では、時間の「同時性」が成り立たないことを示し、量子論は、極めて微小な領域では、すべての物質と力は、「同じ」性質を持つ不断に変化する素粒子の運動として記述できることを示した。同時に、両者ともに、その法則性は、ある種の「不変性」として記述される。 物理的な「同一性」は、基本的には「情報」の「同一性」として表現されるのだが、この分野でも、量子情報理論の発展は、エンタングルメントや量子テレポーテーションといった、「同一性」にかかわる思いがけない知見を我々にもたらしている。 小論の第三部は、数学での「同一性」にまつわる議論を、「型の理論」の成立と発展を中心に概観したものである。 「

「量子コンピュータを、高校生にも易しく理解させることを目指すいくつかの試みについて -- String Diagram 入門」

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次回のマルレクですが、こんなテーマにしようと思っています。 「量子コンピュータを、高校生にも易しく理解させることを目指すいくつかの試みについて -- String Diagram 入門」 長いですね。もう少し考えますが、これ以上長くならないようにします。 講演概要は、こんな感じです。 ------------- 量子コンピュータへの関心が高まっています。 その一方で、それへの「近づきがたさ」を感じている人もたくさん存在しています。むしろ、量子コンピュータへの関心の高まりとともに、そうした層は、増大しています。 こうした中で、量子コンピュータの基礎を、高校生にも分かりやすく理解してもらうことを目指す試みも、活発に探求されています。 講演では、こうした取り組みの中から、三つの試みを紹介します。 一つ目は、Terry Rudolph のアプローチで、PETEという名前の不思議な箱を通じて、量子ゲートの働きを説明しようというものです。ここでは、量子の状態は、「霧」で表現されています。高校生を対象としていますが、筆者は、小学生でも理解できた言っています。 二つ目は、量子力学から量子論の部分を分離して、少数の原則から、基本的には高校生でもわかる線形代数の問題として、量子ゲートの働きを説明するやり方です。僕の「紙と鉛筆」のシリーズは、こうしたアプローチを取っています。 三つ目は、Bob Coeckeの「量子過程を絵解きする」というアプローチです。数式を使わずに、徹底的に図解することを通じて、量子論に対する直感を養おうとしています。Coeckeには、「幼稚園児のための量子力学」という論文もあります。(これは、さすがに難しいと思うのですが) レクチャーでは、違った切り口からのいくつかのアプローチを知ることを通じて、量子論への理解が深まることを目標にしようと思っています。 図は、Cockeが使っている、String Diagram のイメージ図です。

「熊と狼」

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「熊と狼」は次のような絵本である。そのメッセージは、シンプルで、わかりやすい。  ある冬の夜、深い森の中で、熊と狼が出会う。  二人は、雪の中を一緒に、歩き始める。  寒さで凍った湖まで一緒に歩き、  一緒に、降る雪を眺めて、そして別れる。  次の年の春、二人は、花が咲き鳥がなく森で再び出会う。 「熊と狼は、お互い、また出会うことになった。二人は前とちょっと違っていて、少し姿は変わっていたが、すぐに一緒に並んで歩き始めた。彼らが共有する生き生きとした世界の中に。」 この絵本は、「彼らが共有する生き生きとした世界」を描いた絵本である。それは、ジョン・バエズのいう。「美しい世界」と同じものである。 ----------- "Bear and Wolf: A Tender Illustrated Fable of Walking Side by Side in Otherness"  https://goo.gl/kNz97f マリア・パポーヴァは、絵本「熊と狼」を、2018年の一番よかった絵本の一つにあげている。 次は、彼女のこの絵本へのコメントである。 「他者性は、常に、我々が我々自身を定義する方法であった。我々が似ていないものとの対比と区別によって、我々は、我々が何に似ているかを見つけ出す。私が以前に書いたように、我々は、我々から我々がそうでないもの全てを取り出した後に残るものである。」 「しかし、他者性は結びつきの最も美しい土台にもなりうる。表面の非類似性を削り下ろすことを通じて、我々は、同類であることの深い源泉を見出すことができる。そしてそれは、今度は、我々と他者についての、我々の理解を拡大するのである。」 「メリー・オリバーは、何が彼女の人生を救ったかについてふれた印象的な文で次のように述べていた。  「世界の他者性は、混乱に対する解毒剤である。 ... この他者性のただ中に立つことで、人は、もっとも傷ついた心に、尊厳を取り戻すことができる」 」

美しいもの -- バエズの嘆き

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こんな文章に出会って、ハッとする。 「花たちを見て、美しいと感じるのが誰にもやさしいことなのは、驚くべきことではありません。というのも、花たちは、まさに魅力的であるように進化してきたからです。」 「最初は、人間にとってではありませんでした。花粉を運んでくれる鳥や蜂にとって、魅力的であるように進化したのです。」 「これらの生き物を惹きつけるものが、我々人間には魅力的でないことを想像することは可能です。ただ、実際には、私たちが花を愛でることと、生き物が花に惹かれることには、十分な共通性があります。」 その「共通性」は、花の「美しさ」と言うことだろう。 ということは、鳥や虫たちも、花の「美しさ」を感じていると考えることができるということだ。僕がハッとしたのは、「美」というのは、人間だけのものだと思っていたからだ。 「私は、すべての美しさの形は、密接に結びついていると考えています。」 「私は、なぜこの世界が救うに値するかという理由として、おもに美しさについて --そのすべての形で-- 考えています。」 「しかし、美の経済学ということになると、我々はとても原始的な状態にあります。絵は、数億円で売られることができますし、そのための市場も存在します。ただ、誰もこの絶滅危惧種のカエル Atelopus varius には、どんな値段もつけません。」 「私にとっては、これは、どんな絵よりも、美しく貴重なものです。もちろん、この個体ではなく、数百万年かけて進化してきたこの種がです。我々は、こうした種を、まるで価値のないゴミのよう破壊することに忙しくしています。」 「我々の子孫は、もしも存在するなら、我々を、きっと野蛮な馬鹿者と考えるでしょう。」 ---------------- エミー・ネーター100周年の国際会議に出席した、ジョン・バエズのインタビュー "A quest for beauty and clear thinking. Interviewing John Baez" から。 https://goo.gl/ndMe6a

Proof Generalのアイコン

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次の次のマルレクで、数学の証明にコンピュータを使う「証明支援システム」の話をしようと思っている。 この分野、しばらくご無沙汰していたので、VoevodskyのプロジェクトUniMath (  https://github.com/UniMath/UniMath  )をスクラッチからインストールした。 coqide の他にも、EMACSをインターフェースに使う Proof General と言うのもあるよと書いていたので、やってみて、EMACSを開いたら、最初に出てきたのがこの画面。ちょっとびっくり。 思わぬところでオタクをみつけた。これ、日本のカルチャーの影響だよね。日本、ある意味、スゴイのかも。Contributorに日本人の名前は見つけられなかったけど。(それでいいのかな?) 面白そうなので、触ってみたが、僕、vi派だったので、EMACS苦手なんだ。

エミー・ネーター

DisCoCatでの女性の活躍については、ここでも紹介した。女性科学者と言うことでは、是非とも紹介したい女性がいる。数学者のエミー・ネーターだ。   数学者なら誰でも知っている名前だが、一般には、ほとんど知られていないと思う。そう言う僕も、恥ずかしながら、高校時代にネーターが女性であることを知り、びっくりしたことを覚えている。てっきり男性だと思っていたのだ。 女性科学者というと、キューリー夫人が有名だが(だったが)、今の子供達は「偉人伝」なんか読まないだろう。おそらく、キューリー夫人も知らないかも。GAFAの創始者が新しい「偉人」になるのかも。 エミー・ネーター(1882 – 1935)は、ドイツ生まれの数学者。20世紀の抽象代数学の成立に大きな貢献をした。また、対称性と保存量の関係を示した1918年の「ネーターの定理」は、量子力学にも大きな影響を与えた。 ヒルベルトもアインシュタインもワイルもウィーナーも、彼女の傑出した才能を認めている。彼女の時代、彼女は最も重要な数学者だった。 ただ、「女性」というだけで、彼女のアカデミーでの活動は、大きな制約を受けた。 彼女を、ゲッティンゲン大学に招こうとしたヒルベルトは、教授会の強烈な反対にあった。その中心は、哲学の教授たちだったらしい。 その一人は、こう言ったという。 「我々の兵士たちが、戦場から大学に戻ってきた時、女のもとで学ぶことを要求されたら、なんと思うと思うんだ。」 ヒルベルトは激怒して、「性別なんてどうでもいいじゃないか。ここは大学だ。お風呂じゃないんだ。」と言ったという。 https://goo.gl/jDzULN 結局、彼女は、正規の教員としては受け入れてもらえず、ヒルベルトの名前を借りる形で、その代理として講義をしたらしい。 先に挙げた画期的な「ネーターの定理」も、ゲッティンゲン王立科学協会で発表されたのだが、彼女は会員でないという理由で出席を許されず、発表は同僚のクラインが行なった。 大学では、正規の教授に昇進することはなかったのだが、彼女は、自宅でも喫茶店でも、熱心に教育を行い、「ネーター軍団」といっていい、優秀な数学者をたくさん育てた。 ヒットラーが政権につくと、ユダヤ人だった彼女の立場は、更に悪くなる。一部の学生の攻撃の対象とされる。 「アーリ

もひとつ新年会

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毎日、築地の大沼で新年会をしている訳ではないのですが .... 今週は、酒井さん、岡田さんともご一緒しました。明日からは、仕事一筋で頑張ります。

量子コンピュータとシャンソンの新年会

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今日は、wipseの「量子コンピュータとシャンソンの新年会」。

応用カテゴリー論と環境問題

バエズの地球環境への関心が、彼の「応用カテゴリー理論」とどのように結びついているかの話をしようと思う。 バエズは、数学者に何ができるだろうかと自問する。彼は、それを「有限な地球上の生命に必要とされる数学を作り上げること」だと考える。 それは、どのような数学か? 彼の考えの飛躍のポイントは、「ネットワーク」への注目にある。 「環境システムを理解するということは、最終的には、ネットワークを理解すると言うことになるだろう」 「我々は、環境システムから、素粒子物理からと同じように数学的なインスピレーションを得ることができる。そして、我々がそこで見いだすことは、もっと役に立つだろう」 「エンジニアも化学者も生物学者もそのほかの人たちも、ネットワークを記述するのに、多くの異なった図的な言語を利用している。我々は、今、それらをカテゴリー理論で統一しようとしているのだ!」 この7年間、バエズを中心とするグループが、カテゴリー論の「応用」を目指して行ってきた研究分野は、きわめて広範で、かつ実践的なものである。  ・ 信号の流れのグラフと電子回路図  ・ ペトリ・ネットと化学反応ネットワーク  ・ ベイジアン・ネットワークと情報理論 もちろん、これで全てではない。ちなみに、この間僕が紹介してきた、Coeckeの"String Diagram"による量子論の書き換えの試みも、形式意味論でのDisCoCatの取り組みも、バエズの言う「応用カテゴリー論」の一部である。 技術とその基礎としての科学の接点は、今、大きく変わりつつある。その目覚ましい変化の中心の一つに、カテゴリー論の「応用」があるのだと考えている。バエズが「21世紀の数学」というのは、そのことを指しているのだと思う。 僕は、ITの世界には長くいるし、「ネットワーク」と言う言葉を、何度も何度も使ってきたのだが、残念ながら、こうしたパースペクティブで「ネットワーク」という概念を捉えたことがなかった。 もっと恥ずかしいことなのかも知らないが、若い優秀な技術者に、「先生、そんなんでいいんですか」と言われるほど、環境問題には無関心だった。 数学理論としてのカテゴリー論の初歩は、僕は理解できるのだが。 いつもなら、「まあ、いいか」で終わるところだが、まあ、そう言う

稚内、風速42.5m 。

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稚内、風が凄いことになっている。風速42.5m 。 ぼくんち、大丈夫だろうか?

MaruLabo新年会

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今日はMaruLaboの新年会でした。理事の山田さんが、ご自身で作ったワインをふるまってくれました。井上さん、ひでやさんがダウンしたのが残念でした。

人類世

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数学の一分野の「カテゴリー論」は、かつては、数学者からも「意味のない抽象化の一般化(General Abstract Nonsense)」と揶揄されたこともあったのだが、いま、その様相は大きく変わりつつある。その変化を先導しているのが、「応用カテゴリー論」という分野を作り上げた数学者のジョン・バエズだ。 口の悪い人の中には、「カテゴリー論の応用だって? 一番応用から遠い「意味のない抽象化の一般化」といわれるカテゴリー論の「応用」なんて、形容矛盾だろう」という人も、まだいるのだが。多分、それは誤解だ。 バエズは、60-70年代のフォークソングの女王だったジョーン・バエズのいとこだ。(おじいちゃんおばあちゃんが一緒)一般には、ジョーン・バエズほどは有名ではないかもしれないが、僕は、彼を、現代最高の物理学者・数学者の一人だと考えている。 彼の講演「21世紀の数学」が面白い。 https://goo.gl/Q3NbRk  ビデオは、 https://goo.gl/3zFAfk  講演スライドは、 https://goo.gl/R81GB2  からみれる。 「21世紀の数学」というタイトルだが、講演の前半には、ほとんど数学の話は出てこない。 彼が大きな関心を寄せているのは、この地球が、大きな変動の時期にさしかかっていることだ。「地質時代区分」でいうと、現代は、Holocene(「完新世」かつては「沖積世(Alluvium)」とも言っていた)から、次のエポックに移っているという。 彼によれば、「地球温暖化」などは、そうした大きな変化の中の一つの現象に過ぎないと言う。 この新しい時代を、Anthropocene という。英語で言うとHuman Epoch だ。日本語wikiには記述がないが、中国語wikiは「人類世」と訳している。(これから、中国での翻訳を日本が輸入することは増えるのかもしれない) 「人類世」!  我々人類にとっては、素晴らしい時代のようにも響くのだが、どうもそうではないようだ。イメージとしては、「風の谷のナウシカ」の時代を考えたほうがいいのかもしれない。 図は、彼の講演スライドから。 最初は、「開発」が進むアマゾン流域。確かに、人類の人口(だけ)は、爆発的に増大を続けている。だけれども、地球上の脊椎動物の数も、

Chromeでクレカ決済失敗

飛行機のチケットを予約したのだが、クレジットカードでの支払いがうまくいかない。なんどもセキュリティ・コードの入力を要求される。 おかしい。 昔、外国によく行っていた頃、多分、スキミングだと思うが、何度かカードの「不正使用」(僕が不正したわけではない)でカードが使えなくなったことがあった。 ある時などは、アフリカのどこかでだったと思うが見知らぬ世界で、僕が1ドルだか1セントだか、少額の寄付をしたことになっていた。そういう時は、クレジット会社が、すぐに僕に警告をくれて、カードの利用を停止する。クレジット会社もなかなかすごい。 ここ一年ほど外国行っていないしおかしいなと思いつつ(日本は、比較的、安全な国だと思う)、すぐ、クレジット会社に連絡する。 こういう時のクレジット会社の反応は早い。すぐ調べてくれて、「お客様のカードは、有効な状態です」という。でも、飛行機代の支払いができないことに変わりない。こまるんだけど。「航空会社の窓口にお問い合わせください」という。 航空会社のどこの窓口に聞けばいいのかわからない。音声自動案内のメニューには、クレジットカードの支払いトラブルなどという項目はない。適当なところを選ぶ。 たらい回しになることを覚悟して事情を説明したら、予想外の展開だった。窓口の女性、開口一番、「お客様、Chromeをお使いですか?」と聞いてくる。  「ええ。そうですが。」  「IEをお持ちでしたら、そちらでもう一度試してもらえませんか?」  「IE持ってないんですが。Safariじゃだめなのかしら?」  「それはよくわからないのですが、この数ヶ月前から、Chromeでセキュリティコードの入力ができないというトラブルが多数起きています。Chrome以外のブラウザーでお試しいただけますか?」 そんなことあるんだ。 多分、Validatorまわりのトラブルだと思うが、なぜ、Chromeだけで起きるのか、最近、僕はIT音痴化がすすんでいるので、よくわからない。まあ、いいか。 そういえば、この間、飛行機チケット、スマホで決済していて、Macからは、やっていなかったことに気づく。結局、今回は、本人確認の上、電話で支払いを済ますことができた。確かに、クレジットカードは有効だった。 ANAのサイトで、Chromeを使ってカード決済

スマートスピーカーでの失敗と発見

Spotifyで、ロック聴こうと思ったら、稚内の彼女に怒られた。 こういうこと。 東京のアパートと稚内の自宅に、EchoとGoogle Homeがあるのだが、東京で部屋のEchoで音楽聴こうと思ったら、指が滑って、間違って稚内のスピーカーを選んでしまった。 そしたら、稚内のEchoが、彼女にしてみれば、突然、大音響でロックを流し始めたということ。 複数台のスマート・スピーカーがあれば、出力先を選べること、皆、知ってると思うけど、これって、隣の部屋とか二階の寝室に音を飛ばすだけじゃないんだ。東京から、稚内のスピーカーに音出せるんだ。多分、アメリカにもアフリカにも音飛ばせる。 それまで、ブルートゥース接続でスマホとスピーカーを繋いでいたんだけど、それだと、ブルートゥースの設定の手間が必要だったんだけど(たいした手間じゃないけど)、今は、それもいらなくなった。もっとも、ブルートゥースじゃ、こうした「事故」はおこらないけどね。 みなさんも、気をつけてね。

マリア・パポーヴァの新刊

Brain Pickingのマリア・パポーヴァの本が出るというので予約する。 kindle版がハードカバーより高い値付けになっていた。これは初めての経験。彼女のようなBlogベースで活動してきた人の読者は、ディジタルに抵抗ないんだろうなとも思う。 "Figuring" という題名の本だ。僕が、直前に買った本が "Picturing ... "という題名の本だったのが、僕には面白かった。 きっと、みんな何かを新しい角度から理解しようとし、理解したものを説明したいのだと思う。今の時代、その「何か」は、部分的・個別的なものではなく、全体的で、一見すると連関が明らかではないものだ。それは、世界が変わるという「予兆」を、感じているからだと僕は思う。 マリアはいう。 「この本は、さまざまの複雑さと多様さ、そして愛のさまざまな矛盾について語っています。また、この400年を通じて、真理と意味と超越性について人間が行ってきた探求について、歴史的な人物達がおりなした人生を通じて語っています。」 彼女が、僕には興味ふかいのは、広い教養と詩人の心を持ちながら、科学に対する愛情を失っていないということ。この本の表紙を飾っているのは、ブラックホールだ。内容も、ケプラーに始まりレイチェル・カールソンで終わるらしい。 感性と科学性の両立はとても大事なことだと僕は思っている。その点で、彼女は、新しいタイプの文化人だと思う。 ブルックリンで活動する彼女は、ブルガリア生まれだ。ハラリもそうだが、現代の文化・文明の総体を相対化するのは、「周縁」からの視点なのだと思う。 あるいは、昨日も書いたのだが、歴史の「メインストリーム」にしがみつく男性に代わって、これからますます女性の果たす役割が大きくなるということなのかもしれない。 「私は、棚の上のバナナのように売れる本を世に出すことに興味はありません。この本が、本棚に長く置かれる本になることを望んでいます。」 そうなんだ。だったら、僕もkindle版じゃなくて、ハードカバーを買ったほうがよかったんだ。ポチってしまったので、もう間に合わない。 しょうがない。今日は、バナナを買おう。

DisCoCat の女性たち

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昨年末、マルレクの準備で一生懸命言語学関係の論文を読んでいたのだが、面白いことに気づいた。 DisCoCat (DIStributional COmpositional CATegorical )と呼ばれる新しい研究分野で女性が大活躍しているのだ。気がつけば、マルレクでこの分野で紹介した研究4つのうち3つが女性によるものだった。写真は、その三人。左から、Martha Lewis, Tai-Danae Bradley, Maaike Zwart 。 だいたい、新しい研究分野に、学会のおじさんたちが、DisCoCatなんて名前つけるはずもないと思う。きっと日本でなら「カテゴリー論的構成的分散意味表現理論」と、難しそうな名前でよんでいたろう。 そういえば、2002年に文の意味とそのグラフ表現について先駆的な論文"Knowledge Graph Theory and Structural Parsing"を発表したLei Zhangも女性だった。 中国に帰ったLei Zhangは、今、どうしているのだろう? 先駆者としてDisCoCatに加わればいいと思うのだが。中国のアカデミーは、「ディスコで踊るネコ」研究許してくれるかな? KarpathyのBidirectional Image Sentence Mappingの研究に文法理論を提供したMarie-Catherine de Marneffe も女性だ。 数学者で言語学者でもあるLambekが面白いことを言っている。(多分、あまり理解されないかもしれない発言なのだが。) 「私自身の経験が私に告げていることは、高校生達が理系のプログラムと古典的な言語の勉強に基づく人文系のプログラムの間で選択を迫られる国々では、未来の数学者は後者の流れから現れることがしばしばあるということだ。」 言語学の新しい分野での新しい数学理論の発展は、Lambekのこの言葉を、裏付けているようにも見える。 彼女らの「国籍」は、みな異なっている。共通しているのは、女性だということ。この現象には、いくつか理由があるのだと思う。普通の男性が行わない選択を、意欲的な女性達は行うことができるのかもしれない。もっと、現実的な問題もありそうだ。 ただ、彼女らが新