エントロピーの生成

【 エントロピーの生成 】

前回見たように、古典的な熱力学では、ある系のエントロピー𝑆は、次の式で特徴づけられます。それを熱力学の第二法則と言います。

  𝑑𝑆 ≥ 0

古典的な熱力学は、エントロピーが定義されている系が外部の世界とエネルギーや物質を交換することを想定していません。

ですので、古典的な熱力学での第二法則は、孤立した系では、熱力学的平衡状態と呼ばれるエントロピーが最大の値を取るまでエントロピーは単調に増大することを意味します。

古典論での孤立した系のエントロピーの変化𝑑𝑆を、「外部」を持つ系に拡張することは容易です。

𝑑_𝑒𝑆を、系が外部との境界を通じて外部と交換するエントロピーの変化とし、
𝑑_𝑖𝑆を系の内部で生成されるエントロピーの変化として、

  𝑑𝑆 = 𝑑_𝑒𝑆 + 𝑑_𝑖𝑆

と表せばいいのです。

エントロピーの変化が 𝑑𝑆 = 𝑑_𝑒𝑆 + 𝑑_𝑖𝑆 で表される時、 一般的には、𝑑𝑆 ≥ 0 は成り立ちません。

この時、外部を持つ系のエントロピーの変化を表す第二法則は、次の式で表されることになります。

  𝑑_𝑖𝑆 ≥ 0

ここでは、可逆過程と不可逆過程の区別が重要です。不可逆過程のみが、エントロピーの生成に寄与します。

明らかに第二法則は、不可逆過程が時間の流れの一方向性を導くという事実を表現しています。時間の正の方向がエントロピーの増大に関連しています。

次に、その中で第二法則の時間の一方向性が表れる、もっと強くかつ特別な方法を紹介したいと思います。

この定式化に従えば、孤立した系では、それは時間の中で増加するだけであるという事実で表現される特別な性質を持つある関数の存在が導かれます。

このような関数は、Lyapunovの研究によって始まった「安定性理論」において重要な役割を果たします。このため、これらの関数はLyapunov関数と呼ばれています。

エントロピーSは、孤立した系のLyapunov関数です。 HelmhortzやGibbsの自由エネルギーといった熱力学的ポテンシャルも、ある「制約条件」のもとで、 Lyapunov関数になります。


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ショートムービー「 エントロピーの生成 」を公開しました。

https://youtu.be/b9XpidRku2c?list=PLQIrJ0f9gMcM1CSCpFfUuf25kD7b1JMM2

資料 pdf「 エントロピーの生成 」

https://drive.google.com/file/d/1-EBSIEqxcEldVVk7bVcOmYwAGU1FJl5z/view?usp=sharing

blog:「 エントロピーの生成 」 
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