なぜ、いま、「量子論」を学ぶのか?
なぜ、いま、「量子論」を学ぶのかを考えてみました。 ひとつ目の理由は、私たちが自然と物質を理解する上で、それが、もっとも基本的な枠組みをあたえてくれるからです。 それは、自然と物質に対する、私たちの日常的な「常識」を変えると思います。 もっとも、量子論を学んだからといって、世界は少しも変化しないかもしれません。ただ、現象の世界から、その世界の奥にあるものに関心が向くのはいいことだと思います。 ふたつ目の理由は、近年の量子論が、情報理論との急速な接近を果たしていて、大きな変化が進行中だからです。 「量子情報理論」は、物理学の長い間の課題だった量子論と相対論の統一の舞台になりそうですし、遠くない未来の、ITだけでなく、ほとんど全てのテクノロジーの基礎理論になっていくと思います。 また、その応用は、新しい量子デバイス、量子暗号、量子通信、量子コンピューティング、常温超電導等の新素材の開発等を通じて、私たちの近未来の生活を大きく変える可能性を持っています。 みっつ目の理由は、量子論の基礎で利用されている「数学」は、比較的単純なものだからです。それは、高校数学の、ほんの少し先にあるものです。 量子コンピューティングの基礎である量子ゲートの働きの理解について言えば(もちろん、それだけでいいわけではありませんが、それについては別の機会に述べます)、それは、ベクトルと、2 x 2 あるいは、たかだか 4 x 4 の行列の掛け算として、大抵の量子ゲートの働きは理解できます。 それは、物理学のもう一つの重要な分野である、「一般相対論」の数学の枠組みの「難しさ」とは、好対照をなすものです。物理の数学が、全て、難しいわけではないのです。 いま、「量子論」を自分で学ぶべき、最後の理由は、そうした重要性と理解のしやすさにもかかわらず、それをキチンと学ぶ機会がほとんどの人に与えられていないからです。 高校の生物の教科書は、この50年で大きく変わりましたが、高校の物理の教科書は、この50年、ほとんど変わっていません。そこでは、「量子論」は、ほとんど触れられていません。それは、とても残念なことです。 学ぶ機会がないのなら、自分で学ぶしかありません。 「紙と鉛筆で学ぶ量子情報理論基礎演習 I」は、物理好きの人だけでなく、高校生、大学生を含む、老若