投稿

量子優越性のマイルストーンの達成

 【 「量子優越性のマイルストーンの達成」ビデオ公開しました 】 現在公開中のビデオ「量子計算の古典的検証」  https://www.youtube.com/playlist?list=PLQIrJ0f9gMcNwyptLu7uIZboO62Ffu-cI  (まとめページは、「量子計算の古典的検証」 https://www.marulabo.net/docs/cvqc/ です)の理解を深めるために、この問題の実践的重要性と解決の難しさを改めて明らかにした、2019年のGoogleによる「量子優越性」を達成したという実験とその意義を解説した、2020年2月のセミナー「量子コンピュータの現在 -- 量子優越性のマイルストーンの達成 」の講演ビデオを公開しました。 ビデオ 1 「Googleの量子優越性実験 -- なぜ、量子優越性を示すことが重要だったのか?」  ・2019年10月23日の前後に起きたこと  ・なぜ、量子優越性を示すことが重要だったのか?  ・Googleはどんな実験をしたのか https://youtu.be/MBIlcaJ7SnM?list=PLQIrJ0f9gMcNT0S6xsOdyasJSHMUDaUrM ビデオ 2 「Googleの量子優越性実験 -- 量子コンピュータの動作を図解する」  ・量子コンピュータの動作を図解する  ・量子優越性をめぐる「論争」  ・「拡大されたチャーチ=チューリング・テーゼ」の終焉 https://youtu.be/HzQVlP13kWw?list=PLQIrJ0f9gMcNT0S6xsOdyasJSHMUDaUrM あわせて、次のページを更新しました。 「量子計算の古典的検証」 https://www.marulabo.net/docs/cvqc/   「量子コンピュータの現在 -- 量子優越性のマイルストーンの達成」   https://www.marulabo.net/docs/q-supremacy/ ----------------------------------- これらのビデオは、以前は、crash-academy さんのサイトから配信されていたものですが、crash-academyさんのご好意で、YouTubeからの配信を行うことができるようになりました。

11/26 マルゼミ 「量子計算の古典的検証」講演ビデオ公開しました

  【 11月のマルゼミ 「量子計算の古典的検証」の講演ビデオ公開しました 】 MaruLaboでは、開催したセミナーの様子を、ビデオで公開しています。 今回は、11月26日のマルゼミ 「量子計算の古典的検証」の講演ビデオの公開です。 【「量子計算の古典的検証」問題とは何か? 】 「量子計算」というのは、量子コンピュータが行なう計算のことです。「古典的検証」を行うのは人間です。人間が古典的手段を使って、量子コンピュータが行なった計算が正しいかどうかをチェックすることを、「量子計算の古典的検証」と言います。 「古典的手段」とは、主要には、古典的コンピュータのことを指します。これも、ピンとこない言い回しかもしれません。それは、量子コンピュータとの対比で古典的と言われているだけで、最新鋭のスーパーコンピュータを含む、普通のコンピュータのことです。 「量子計算の古典的検証」とは、量子コンピュータの行なった計算が正しいものであるかを、人間が普通のコンピュータを使って、確かめると言うことです。 【 素因数分解なら量子コンピュータの計算のチェックは簡単 】 量子コンピュータが行う計算が、素因数分解ならその計算の正しさのチェックは簡単です。入力した数に対して量子コンピュータが出力した素因数を、コンピュータで実際に掛け算を行なって、それが入力したものと一致しているか確かめればいいわけですから。 ただ、量子コンピュータが行う計算の正しさが、コンピュータで簡単にチェックできるとは限りません。 【 「二日半」か「一万年」か? 】 数年前に、GoogleとIBMとの間で、Googleが開発した量子コンピュータの「計算能力」をめぐって激しい論争がありました。 Googleの量子コンピュータが行った計算をスーパー・コンピュータで行ったとすると、Googleは「その計算は、一万年はかかるだろう」と主張したのに対して、IBMは「そんなにはかからない。やりかたを工夫すれば、二日半で計算できるはずだ」と反論したのです。 面白いのは、Googleの「一万年」の計算は無理だとしても、IBMも実際のコンピュータで計算してみせたわけではないのです。 【 困ったことが起きる 】 我々は量子コンピュータのずば抜けて高い計算能力に期待しています。それは、量子コンピュータが、正しく動作することを期待しているということで

還元された密度行列

【 図形で分かること 】 今回のセッションのテーマは、還元された密度行列です。ただ、数学の話だけでは、退屈かもしれませんので、テンソル・ネットワークを使った、数学への図形的なアプローチをすこし紹介しようと思います。 こんな感じです。 ベクトル空間Vのベクトルを、丸に一つの直線をくっつけた図形で表します。 ベクトル空間Vとベクトル空間Wのテンソル積 V⨂Wで作られる空間のベクトルは、丸に二つの直線をくっつけた図形で表します。丸に2本の足がある図形です。2本の足は、空間Vと空間Wに対応しています。 今回は、この二本足のベクトルで説明します。 ちょっと数学が入りますが、たいしたことはありません。このベクトルを|A>で表すことにしましょう。|A>は2本の足を持つ丸です。 今度は、|A><A|という式が表す図形を考えます。(実は、密度行列というのは、基本的にこの式で表されます。) |A> と<A|はよく似ています。真ん中に鏡を置けば、お互いの姿が映ります。ただ、鏡でも、目の前に鏡を置くのと、頭の上に鏡を置くのとでは映り方が変わります。目の前の鏡は左右を逆にしますが、頭の上の鏡は上下を逆にします。 丸い図形の左右を反転させても、たいして変わりは出てきませんので、頭の上に鏡を置くことにしましょう。そうすれば、下に2本の足を出していた元の図形|A>は、上に2本の足を出している図形に変わります。これを、<A|の表す図形だということにしましょう。 これで、|A>を表す図形と<A|を表す図形ができました。今度は、|A><A|を表す図形を考えます。 |A><A|は、じつは、数学的には、|A>⨂<A|と同じものです。なんか話が難しくなりそうな予感がするのですが、そんなことはありません。図形をテンソル記号⨂で結びつけるということは、実は、何もしないことなのです。二つの図形を、何も手を加えず、そのまま並べておくことなのです。 ですので、|A><A|を表す図形は、下向きに2本の足をもつ丸と、逆立ちして上に足を伸ばした丸が、二つ並んだ図形だということになります。お互いが関係があることをわかりやすくするために、この二つの図形を、丸と丸を近づけて、上下に積み重ねることにしましょう。 こうして、二つの丸と4本の足(2本は下向き、2本は上向き)を持つ図形が、|A><A|を表す、すなわち数学的には密度行列を表

Partial Trace

【  Partial Trace は周辺確率を導く 】 二つのベクトル空間 V, W のテンソル積で作られるV⨂W から、その一方( V あるいはW )への写像pを考えます。v, wをV, Wの要素として、 p(v, w) = v という( wを無視する)写像を考えればいいですね。 残念ながら、このpは線型写像にはなりません。 pが線形なら p(v, w1+w2) = p(v, w1) + p(v, w2) = 2v になるのですが、p(v, w1+w2) = v で2v にはなりません。 ただ、V⨂W からV, Wへの写像ではなく、End( V⨂W )からEnd(V), End(W) への写像を考えると線型写像になることがわかります。End というのはEndmorphism のことで、自分自身への写像のことです。f がEnd(V)に属するということは、f は、VからVへの写像だということです。 End( V⨂W )は End(V)⨂End(W)と同型です。f がEnd(V)に属し、g がEnd(W)に属する時、   tr_W( f⨂g ) = f tr(g) ,  tr_V( f⨂g ) = tr(f) g と定義します。このEnd( V⨂W )からEnd(V), End(W) への線型写像 tr_W, tr_Vが、Partial traceです。 tr_W では、f⨂g のf は残っているのですが、gはtrace(=スカラー)になります。 tr_V では、f⨂g のg は残っているのですが、fはtrace(=スカラー)になります。 密度行列ρに対して、partial trace をとると、その結果も密度行列になることが分かります。こうして得られた密度行列を「還元された密度行列」といいます。 重要なことは、この「還元された密度行列」が、古典的確率論での「周辺確率」に相当するものになるということです。 ------------------------------------- 「 Partial Trace」を公開しました。 https://youtu.be/ZQsi22ma4X0 ?list=PLQIrJ0f9gMcOByaj0vK9cnGyaEUFUadh4 資料pdf https://drive.google.com/file/d/1L7OMAylwNIKgO

古典論的確率と 量子論的確率の基本的同一性

 【 二つの確率概念は、基本的には一致する 】 このセッションでは、古典論的確率と量子論的確率の基本的な同一性を示す次の関係が成り立つことを示します。  ● 量子論から古典論へ        全てのC^S上の密度演算子ρから、S上の確率分布πを定義する    ことができ、二つの確率を一致させることができる。  ● 古典論から量子論へ    全てのS上の確率分布πから、 C^S上の密度演算子ρを定義する    ことができ、二つの確率を一致させることができる。 ただ、古典論的確率から量子論的確率を導出しようとする時、「二つの確率を一致させる」やり方は、一意に定まるわけではありません。 密度行列ρで計算された確率π_ρと確率分布πで計算された確率を一致させるという条件、π_ρ = π を満たす複数の密度行列ρが存在しえます。やはり、量子論の世界の方が古典論の世界より広いんでしょうね。 セッションでは、二つの代表的な対応づけを紹介しています。 一つは、確率関数π(s)の値を、そのまま一つづつ行列ρの対角線上に並べる対応です。 もう一つは、まず、π(s)から |ψ> = ∑ √π(s)|s> というベクトルをつくります。この対応づけのポイントは、π(s)を直接使うのではなく、その平方根 √π(s)を使うことです。この|ψ>から次のように密度行列ρを定義します。   ρ = |ψ><ψ| 以後の説明では、主に、このスタイルの対応づけを利用します。 ------------------------------------- 「 古典論的確率と 量子論的確率の基本的同一性 」を公開しました。 https://youtu.be/_hkBh_haefM ?list=PLQIrJ0f9gMcOByaj0vK9cnGyaEUFUadh4 資料pdf https://drive.google.com/file/d/1Kba1CsRWGDdG7j_S8-PoiBpO286KA1Th/view?usp=sharing blog:「 二つの確率概念は、基本的には一致する 」 https://maruyama097.blogspot.com/2023/02/blog-post_20.html まとめページ https://www.marulabo.net/docs/d

2/25 peatix 申し込みページ

【 2/25 マルレクの申し込みページ作りました 】 2月25日のマルレクを「密度行列 ρ で理解する確率の世界」というテーマで開催します。 セミナーの申し込みページは、 https://density2.peatix.com/view です。 今回のセミナーの趣旨は、密度行列から確率の概念をを考えてみようというものです。 密度行列は、量子論で量子の状態を記述するものです。今回のセミナーでは、少し別の角度から密度行列を見てみようと思います。それは、密度行列は確率概念の一般化であるという見方です。 たしかに、量子の世界では決定論ではなく確率論が基本的な役割を果たすと言われますので、量子の状態を記述する密度行列が、確率の概念と結びつきがあるのは、当然のことかもしれません。 ただ、密度行列は確率概念の一般化であるという主張は、もう少し強い内容を持っています。それは、我々が普段使っている確率の概念とは異なる確率の概念があるということです。 量子論は我々の日常のマクロな世界とはかけ離れたミクロな世界の理論で、そうした世界を理解するためには確率論が必要だという考えは、正しいように思えます。ここでは、マクロな世界とミクロの世界という「二つの世界」を、「一つの確率論」が結びつけています。 もしも、マクロな世界の確率論とミクロな世界の確率論が、二つの異なる確率論であるなら、そうしたイメージは変わります。 でも、それはミクロな量子論の世界に大きな変更を強いるものではありません。問題は、我々の日常のマクロな世界の中でも、古典論的ではない量子論的確率論が、大きな役割を果たしている領域が存在する可能性があるということです。 僕は、ことばの意味を密度行列で表現しようという「意味の分散表現論」の新しい進展が、マクロな世界で量子論的な確率論が機能している舞台だと考えています。 それについては、3月以降のセミナーで展開できればと思います。 ------------------------------------- 「 密度行列 ρ で理解する確率の世界 」を公開しました。 https://youtu.be/zdVwKj3Z9Qs ?list=PLQIrJ0f9gMcOByaj0vK9cnGyaEUFUadh4 資料pdf https://drive.google.com/file/d/1KRJb_

固有値に注目しよう

【 固有値に注目しよう 】 このセッションでは、Density Operatorを定義して、それが古典的確率分布の一般化になっていることを説明します。 DがDensity Operator になるのは、Dが次の三つの条件を満たす時です。  ● Dは、エルミートである。  ● Dは、半正定値である。  ● Dのtraceは、1である。 この条件を、次の有限集合S上で定義された古典的確率分布関数pの条件と比較します。  ● 関数pは、実数値を取る。  ● Sの要素である全ての sについて  p(s) ≥ 0 である。  ● Sの要素である全ての sについて  p(s) を足したものは1である。 この二つの定義の関係は、すぐには、わかりにくいかもしれません。それは、主要には、前者のDがDensity Operatorの定義がわかりにくいからだと思います。それについては、今回のセッションできちんと説明します。 両者の関連を見る上で、もう一つ、ポイントがあります。 前者の量子の世界の記述は、基本的に、ベクトルとベクトル空間上の演算子を通じて行われるのですが、そのスタイルと、古典的な世界の記述のスタイルのギャップを埋めるものがあるのです。量子の世界の演算子の(固有ベクトルと)固有値が、両者の世界を結びつける上で、重要な役割を果たします。演算子の固有値が鍵なのです。 演算子の固有値に注目しましょう。そうすると、両者の関係は明確になります。 ------------------------------------- 「 古典的確率分布の一般化 -- Density Operator 」を公開しました。 https://youtu.be/lGcixzjF9U8 ?list=PLQIrJ0f9gMcOByaj0vK9cnGyaEUFUadh4 資料pdf https://drive.google.com/file/d/1Jyk2KCf5UfHoHNOOHRtZEinMLMgaWiLj/view?usp=sharing blog:「 固有値に注目しよう 」 https://maruyama097.blogspot.com/2023/02/blog-post_68.html まとめページ https://www.marulabo.net/docs/density2/