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宮崎駿の新作「君たちはどう生きるか」

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宮崎駿の新作のタイトルは、「君たちはどう生きるか」になるらしい。 https://goo.gl/vK9MH5 友人の訃報をきいて40年ぶりに旧友と会った帰り道、街ゆく人の群を見て、脳裏に浮かんだのが、「僕の存在しない宇宙が無数に存在する」という想いと、この本だった。 https://goo.gl/sU1VAQ そこには、「因果関係」はない。 ただ、それは全くの偶然なのか? 心理学者のユングは、こうした関係を "synchronicity" (シンクロニシティ)「共起」と呼んだ。物理学者のパウリは、物理的因果律を超える、ユングの奇妙な「シンクロニシティ」に深い共感を覚える。 ユングとパウリの交流については、マリア・パポーヴァが、美しいblogを書いている。"Atom, Archetype, and the Invention of Synchronicity" 「原子と元型とシンクロニシティの創出」 https://goo.gl/8MhWJq ただ、僕は、ユングやパウリの理解に、全面的に賛成しているわけではない。そうではないと思う。 手元に本がないので確かめようがなく、遠い昔の記憶しかないのだが、「もし、僕の記憶が確かならば」Jadis, si je me souviens bien.、あの本に書かれていたのは、「同じものを、一緒に見る」ということだったと思う。 宮崎駿監督、新作タイトルは「君たちはどう生きるか」:朝日新聞デジタル  アニメーション監督の宮崎駿さん(76)は28日、制作中の新作の題名が「君たちはどう生きるか」になると明かした。1937年に吉野源三郎が発表した名著から取った。「その本が主人公にとって大きな意味を持つ… ASAHI.COM

アメリカの大学のネット上での量子論講義

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ネットがとても便利なのは、数学や理論物理の分野では、重要な論文がすぐ手に入ること。(皮肉なことに、情報科学の「アカデミー」の「情報」共有は、むしろ遅れている。お金を払わないと情報が取れないことが多い) ただ、ネットで手に入るのは、論文だけではない。アメリカの主要な大学は、競って大学での「講義」の公開を進めている。それぞれの大学が、どんなことを、どんな風に、学生に教えようとしているかがわかるのだ。 論文読むのは好きだけど、講義を聴くのは苦手なのだが(すぐ眠ってしまう)、自分で、量子力学や量子コンピュータの話をしてみようと思っているので、いくつかの大学の講義をのぞいてみた。 -------------------------- ● ハーバード大の Alán Aspuru-Guzik の講義 "The Quantum World"の紹介ビデオ   https://goo.gl/YNNymJ コンピューター・グラフィックでビジュアルなイメージをふんだんに使って、pythonでシミュレーションもさせる。(写真) お金かけている。貧乏人には、真似るのは無理げ。 彼は、化学の人。日本は、この分野で、結構、たくさんノーベル賞をとっているのだが、彼の「ゴージャス」な講義をみて、日本、そのあと続くのかなとちょっと心配になった。 -------------------------- ● MITのAllan Adamsの"Quantum Physics"の第一回目の講義 "Introduction to Superposition"  https://goo.gl/jhvEJS 学生に思考実験させ、学生を巻き込んで、盛り上げる。うまい。思考実験のクライマックスは、以前紹介した、「量子消しゴム」の実験だった。(ただし、思考実験) 思考実験だけではなく、その後に、「量子消しゴムキット」 https://goo.gl/hr3Wfk  で実際に、確かめさせればいいのになと思う。と言っても、僕も、「量子消しゴムキット」買えていない。 -------------------------- ● スタンフォード大の、Susskindの "Quantum Mechanica: Theoretic

ハゲ証明書

「地毛証明書」ってあるんだ。 「ハゲ証明書」ってあるかな? 「ハゲ証明書」がないと、ズラがかぶれないとか。 あっ! この制度の趣旨は、違うんだ。 ハゲのままでいたかったら「ハゲ証明書」を提出しなさいということ。 「ハゲ証明書」がないと、強制的に、ズラをかぶらせられる。 人ごとではない。

HarlowとHaydenの議論

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近年のブラックホール論の転換点になったのは、AMPSパラドックスに全く新しい切り口を与えた、HarlowとHaydenの議論だった。  Harlow & Hayden  "Quantum Computation vs. Firewalls"   https://arxiv.org/pdf/1301.4504.pdf AMSパラドックスというのは、先のマルレク「エントロピーと情報理論」 https://crash.academy/class/156  でも簡単に紹介したのだが、「ファイアーウォール・パラドックス」とも言われる、次のようなパラドックスだ。 アリスが、ブラックホールから「ホーキング輻射」で放出された粒子Rを捕まえる。この粒子は、ブラックホールの内部の粒子Bと「エンタングルメント」の状態にあるはずである。 次に、アリスは、この粒子Rを抱えたまま、ブラックホールに飛び込む。ブラックホールが蒸発するというのは、ブラックホール内の粒子とエンタングルした粒子が地平から飛び出すこと(内部から飛び出すわけではない)なので、いつか、RまたはBとエンタングルした粒子が地平から飛び出すことになる。 ところが、RとBは、すでにエンタングルの状態にある。第三の粒子とのエンタングルメントは、エンタングルメントは、二つのもののあいだの関係であるというmonogamy(一夫一婦制)の原則に反する。 だから、こうした矛盾を防ぐためには、ブラックホールに落下したものは、地平に達した瞬間に、すべてエネルギーに転化して燃え尽きればいい。ブラックホールの内側には何もなく、全てを燃えつくすファイアーウォールで囲まれていると考えればいい。 ただ、こうした考えは、ブラックホールへの落下は、「自由落下」と同じで、地平を通過するときには何も起きないはずだという、相対論の想定と矛盾する。 だから、量子論でも相対論でも、ブラックホールでは矛盾が起きる。というのが、AMPSパラドックスである。 (一夫一婦制とかいわず、一夫多妻でも一妻多夫でも認めれば、丸く収まると思うのだが。あっ、これは、冗談。) AMPSパラドックスに対するHarlowとHaydenのアプローチは、次のようなもの。面白い。 ブラックホールに落下するアリスの最初

11/30マルレク「量子コンピュータとは何か?」

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11/30マルレク「量子コンピュータとは何か?」の準備に集中している。 前回のマルレクで、「今回取り上げる「エンタングルメントのエントロピー」とかの話題と比べると、「量子コンピュータ」は、難しくない」というような話をしたのだが、あの時は、直感的に感じていることを話しただけだったのだが。 実際に、講演の準備を始めて見て、「量子コンピュータ」の初等的な解説は、ちゃんとできるのではと思い始めている。 ポイントは、量子ゲート型の量子コンピュータで一番大事なところは、(まだ、物理的には実装されていないという意味で、あるいは、僕らの多くの目の前には、まだ、存在していないという意味で)バーチャルな「量子ゲート」を組み合わせたアルゴリズムの理解にあるということ。 それは、物理学の一分野ではないし、アルゴリズムを理解するのに、物理学の深い理解を必要とするわけではない。必要なのは、量子力学の最も基本的な原理の理解と、アルゴリズムを追いかける「根性」だけである。 量子力学の基礎の部分は、確かに直感と外れたところもあるのだが、半日程度、紙と鉛筆で演習すれば、基本的な考え方やノテーションは、理解できると思う。 あとは、基本的な量子ゲートの働きと、計算のやり方を理解し、その組み合わせで、アルゴリズムを作っていけばいい。代表的なShorのアルゴリズムまで、こちらも、半日の演習ぐらいでできるかと思う。 いくつか、参考文献を紹介したい。 前者、量子力学の基礎については、「理論的に最小限のこと」とタイトルにうたっている次の本がわかりやすい。さすが、Susskind だ。ただ、量子コンピュータを理解するのに、この本の「最小限のこと」が全て必要なわけではないのだ。 Susskind & Friedman "Quantum Mechanics: The Theoretical Minimum" Basic Books. Kindle 後者、量子ゲートを用いた量子アルゴリズムについては、UC Berkley のVazirianiが edXで公開していた次のコースが、「画期的」に簡単で分かりやすいアプローチを取っている。 "Quantum Mechanics and Quantum Computation :CS191x&

Spotify

ボイス・アシスタントの話をするときに、集中して情報を得るには、例えば、料理のレシピなどは、音声だけではちょっと厳しい。音声インターフェースは、「ながら」でも聴き流せるのがいいところかもといった話をしている。 Spotifyを聴きながら仕事していることが多い。「ながら」でも、仕事に「集中」できる。 Spotifyがいいのは、歌詞が表示できること。そう。カラオケが簡単にできる。 Spotifyを聴きながら仕事していることが多い。気がつくと、一人カラオケになっている。全然、集中してないじゃないか。

アメリカ高校物理教科書

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アメリカで有名な(全米で30%の州で採用され、アジアの高校でも広く利用されているらしい)高校物理の教科書もざっと見て見た。 http://www.gakurin.co.jp/pdf/hmhphy.pdf とてもよくできている。 教科書の最初に、次のような言葉がある。「物理学は、物質とエネルギーと力の科学である。物理学者は、仮説を作り、実験を設計して実行し、世界の理解を助けるモデルを作る。」すぐ、それに続く章は、「実験での観測」になっている。また、物理学の領域として、相対論と量子論があることも、最初に述べられている。 日本の生物の教科書はよくできているのに、物理は、アメリカと比べると(おそらく、アメリカの教科書で学んでいるアジアの高校生と比べても)、見劣りするのは、何故なんだろうと不思議だったのだが。 なんか、その理由がわかったような気がする。 僕がみた物理の教科書は、自分でその「特徴」を三つ挙げているのだが、その第一が「入試に必要な知識が身につきます」となっていた。(図3) ところが、よくできているなと思った生物の教科書は違う。「新しい生物学を拓く!!」になっている。(図4) 心意気が違うんだ。 これからの世界を、「受験物理」で乗り越えていくのは難しいと思う。若い人の間に、物理科学の知識の広がりがないと、イノベーションなんか起こせないと思うのだが。