R.I.P.

最近、よくオペラを聴いている。

クラシックは嫌いじゃないのだが、オペラはあまり好きじゃなかった。だいたい、聴いても歌の意味がわからないし、歌声が耳になじめない。

でも、「鶏の首を締めたような」というけど、実は、「夜の女王」は大好きなのだ。どう首を絞めたって、鶏にあんな歌い方をさせるのは難しいだろう。

歌の意味がわからないというけど、少しは分かる英語でも、Eminemの歌詞、聞き取れたためしはない。

マタイは、意味はわからないけど、若い時からレコードが擦り切れほど聴いてきた(これ、言い回しが古い。今なら、「ギガがなくなるほど」というべきかな。)

どんなにマタイが好きだったかといえば、当時の親しい友人に「僕の葬式にはこの曲かけて」と、Erbarme dich を指定した。迷惑な話だったと思う。それから50年近くたっても、まだ、依頼人はピンピンしているのだから。今は、葬式の曲は、Lady GaGaでもいいやと思っているのだから勝手なものだ。

わかったことは、僕は、これまでモーツアルト以外のオペラを聴こうと思わなかったということ。趣味のことだから、好き嫌いがあるのは当然である。

一転してオペラを聴き始めたのは、若い友人のテフ君が主催する「オペラ勉強会」に参加するようになってからだ。昨日が5回目だった。いつもは人の前で一方的に話すことが多いのだが、人の話を聞くのは楽しい。

ちょうど一年前の6月18日、二十歳のラッパー XXXtentacionが死んだ。若い才能が、いとも簡単に路上で殺されたのだがショックだった。一周忌には、何か書こうと思っていたのだが、その日を忘れていた。きっと何かのオペラを聴いていたのかもしれない。忘れてごめんなさい。

 「XXXtentacion 安らかに眠れ!」

と書きたいところだが、どうもこのセリフが陳腐に思えて、筆が進まない。

若い男が教会の扉を開け、誰かの葬式に出る。まっすぐに花で飾られた祭壇に向かって進み、棺を見ると、そこに横たわっているのは自分だった。突然、その死体が起きあがり、棺から飛び出して自分に殴りかかる。その後は、二人の暴力的な殴り合いが延々と続く。死んだはずの自分と、生きているはずの自分の死闘だ。

きっと、生きていても死んでいても、安らかには眠れない人がいるのだろう。

URLを貼ろうと思ったが、やめた。きっと不愉快な映像だと思う人もいると思うから。"XXXTENTACION - SAD! (Official Music Video)" でググれば、すぐに見つかる。

彼は、この自分の葬式のビデオを公開して、数日も経たずに、自分が死ぬことになる。
オペラも「ドラマティック」だけど、現実は、もっと劇的だ。

今日、このビデオを見に行ったら、「彼を殺した犯人に、いいねの数ほどの懲役を」と行った趣旨の投稿があった。うーん。なんか違うような気もするのだが。

人は変わる。人は、忘れることができる。

きっと僕も、あまりためらわずに、R.I.P. XXX...  と言えるようになるのだろう。

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