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美しいもの -- バエズの嘆き

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こんな文章に出会って、ハッとする。 「花たちを見て、美しいと感じるのが誰にもやさしいことなのは、驚くべきことではありません。というのも、花たちは、まさに魅力的であるように進化してきたからです。」 「最初は、人間にとってではありませんでした。花粉を運んでくれる鳥や蜂にとって、魅力的であるように進化したのです。」 「これらの生き物を惹きつけるものが、我々人間には魅力的でないことを想像することは可能です。ただ、実際には、私たちが花を愛でることと、生き物が花に惹かれることには、十分な共通性があります。」 その「共通性」は、花の「美しさ」と言うことだろう。 ということは、鳥や虫たちも、花の「美しさ」を感じていると考えることができるということだ。僕がハッとしたのは、「美」というのは、人間だけのものだと思っていたからだ。 「私は、すべての美しさの形は、密接に結びついていると考えています。」 「私は、なぜこの世界が救うに値するかという理由として、おもに美しさについて --そのすべての形で-- 考えています。」 「しかし、美の経済学ということになると、我々はとても原始的な状態にあります。絵は、数億円で売られることができますし、そのための市場も存在します。ただ、誰もこの絶滅危惧種のカエル Atelopus varius には、どんな値段もつけません。」 「私にとっては、これは、どんな絵よりも、美しく貴重なものです。もちろん、この個体ではなく、数百万年かけて進化してきたこの種がです。我々は、こうした種を、まるで価値のないゴミのよう破壊することに忙しくしています。」 「我々の子孫は、もしも存在するなら、我々を、きっと野蛮な馬鹿者と考えるでしょう。」 ---------------- エミー・ネーター100周年の国際会議に出席した、ジョン・バエズのインタビュー "A quest for beauty and clear thinking. Interviewing John Baez" から。 https://goo.gl/ndMe6a

Proof Generalのアイコン

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次の次のマルレクで、数学の証明にコンピュータを使う「証明支援システム」の話をしようと思っている。 この分野、しばらくご無沙汰していたので、VoevodskyのプロジェクトUniMath (  https://github.com/UniMath/UniMath  )をスクラッチからインストールした。 coqide の他にも、EMACSをインターフェースに使う Proof General と言うのもあるよと書いていたので、やってみて、EMACSを開いたら、最初に出てきたのがこの画面。ちょっとびっくり。 思わぬところでオタクをみつけた。これ、日本のカルチャーの影響だよね。日本、ある意味、スゴイのかも。Contributorに日本人の名前は見つけられなかったけど。(それでいいのかな?) 面白そうなので、触ってみたが、僕、vi派だったので、EMACS苦手なんだ。

エミー・ネーター

DisCoCatでの女性の活躍については、ここでも紹介した。女性科学者と言うことでは、是非とも紹介したい女性がいる。数学者のエミー・ネーターだ。   数学者なら誰でも知っている名前だが、一般には、ほとんど知られていないと思う。そう言う僕も、恥ずかしながら、高校時代にネーターが女性であることを知り、びっくりしたことを覚えている。てっきり男性だと思っていたのだ。 女性科学者というと、キューリー夫人が有名だが(だったが)、今の子供達は「偉人伝」なんか読まないだろう。おそらく、キューリー夫人も知らないかも。GAFAの創始者が新しい「偉人」になるのかも。 エミー・ネーター(1882 – 1935)は、ドイツ生まれの数学者。20世紀の抽象代数学の成立に大きな貢献をした。また、対称性と保存量の関係を示した1918年の「ネーターの定理」は、量子力学にも大きな影響を与えた。 ヒルベルトもアインシュタインもワイルもウィーナーも、彼女の傑出した才能を認めている。彼女の時代、彼女は最も重要な数学者だった。 ただ、「女性」というだけで、彼女のアカデミーでの活動は、大きな制約を受けた。 彼女を、ゲッティンゲン大学に招こうとしたヒルベルトは、教授会の強烈な反対にあった。その中心は、哲学の教授たちだったらしい。 その一人は、こう言ったという。 「我々の兵士たちが、戦場から大学に戻ってきた時、女のもとで学ぶことを要求されたら、なんと思うと思うんだ。」 ヒルベルトは激怒して、「性別なんてどうでもいいじゃないか。ここは大学だ。お風呂じゃないんだ。」と言ったという。 https://goo.gl/jDzULN 結局、彼女は、正規の教員としては受け入れてもらえず、ヒルベルトの名前を借りる形で、その代理として講義をしたらしい。 先に挙げた画期的な「ネーターの定理」も、ゲッティンゲン王立科学協会で発表されたのだが、彼女は会員でないという理由で出席を許されず、発表は同僚のクラインが行なった。 大学では、正規の教授に昇進することはなかったのだが、彼女は、自宅でも喫茶店でも、熱心に教育を行い、「ネーター軍団」といっていい、優秀な数学者をたくさん育てた。 ヒットラーが政権につくと、ユダヤ人だった彼女の立場は、更に悪くなる。一部の学生の攻撃の対象とされる。 「アーリ

もひとつ新年会

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毎日、築地の大沼で新年会をしている訳ではないのですが .... 今週は、酒井さん、岡田さんともご一緒しました。明日からは、仕事一筋で頑張ります。

量子コンピュータとシャンソンの新年会

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今日は、wipseの「量子コンピュータとシャンソンの新年会」。

応用カテゴリー論と環境問題

バエズの地球環境への関心が、彼の「応用カテゴリー理論」とどのように結びついているかの話をしようと思う。 バエズは、数学者に何ができるだろうかと自問する。彼は、それを「有限な地球上の生命に必要とされる数学を作り上げること」だと考える。 それは、どのような数学か? 彼の考えの飛躍のポイントは、「ネットワーク」への注目にある。 「環境システムを理解するということは、最終的には、ネットワークを理解すると言うことになるだろう」 「我々は、環境システムから、素粒子物理からと同じように数学的なインスピレーションを得ることができる。そして、我々がそこで見いだすことは、もっと役に立つだろう」 「エンジニアも化学者も生物学者もそのほかの人たちも、ネットワークを記述するのに、多くの異なった図的な言語を利用している。我々は、今、それらをカテゴリー理論で統一しようとしているのだ!」 この7年間、バエズを中心とするグループが、カテゴリー論の「応用」を目指して行ってきた研究分野は、きわめて広範で、かつ実践的なものである。  ・ 信号の流れのグラフと電子回路図  ・ ペトリ・ネットと化学反応ネットワーク  ・ ベイジアン・ネットワークと情報理論 もちろん、これで全てではない。ちなみに、この間僕が紹介してきた、Coeckeの"String Diagram"による量子論の書き換えの試みも、形式意味論でのDisCoCatの取り組みも、バエズの言う「応用カテゴリー論」の一部である。 技術とその基礎としての科学の接点は、今、大きく変わりつつある。その目覚ましい変化の中心の一つに、カテゴリー論の「応用」があるのだと考えている。バエズが「21世紀の数学」というのは、そのことを指しているのだと思う。 僕は、ITの世界には長くいるし、「ネットワーク」と言う言葉を、何度も何度も使ってきたのだが、残念ながら、こうしたパースペクティブで「ネットワーク」という概念を捉えたことがなかった。 もっと恥ずかしいことなのかも知らないが、若い優秀な技術者に、「先生、そんなんでいいんですか」と言われるほど、環境問題には無関心だった。 数学理論としてのカテゴリー論の初歩は、僕は理解できるのだが。 いつもなら、「まあ、いいか」で終わるところだが、まあ、そう言う

稚内、風速42.5m 。

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稚内、風が凄いことになっている。風速42.5m 。 ぼくんち、大丈夫だろうか?