美しいもの -- バエズの嘆き



こんな文章に出会って、ハッとする。
「花たちを見て、美しいと感じるのが誰にもやさしいことなのは、驚くべきことではありません。というのも、花たちは、まさに魅力的であるように進化してきたからです。」
「最初は、人間にとってではありませんでした。花粉を運んでくれる鳥や蜂にとって、魅力的であるように進化したのです。」
「これらの生き物を惹きつけるものが、我々人間には魅力的でないことを想像することは可能です。ただ、実際には、私たちが花を愛でることと、生き物が花に惹かれることには、十分な共通性があります。」
その「共通性」は、花の「美しさ」と言うことだろう。
ということは、鳥や虫たちも、花の「美しさ」を感じていると考えることができるということだ。僕がハッとしたのは、「美」というのは、人間だけのものだと思っていたからだ。
「私は、すべての美しさの形は、密接に結びついていると考えています。」
「私は、なぜこの世界が救うに値するかという理由として、おもに美しさについて --そのすべての形で-- 考えています。」
「しかし、美の経済学ということになると、我々はとても原始的な状態にあります。絵は、数億円で売られることができますし、そのための市場も存在します。ただ、誰もこの絶滅危惧種のカエル Atelopus varius には、どんな値段もつけません。」
「私にとっては、これは、どんな絵よりも、美しく貴重なものです。もちろん、この個体ではなく、数百万年かけて進化してきたこの種がです。我々は、こうした種を、まるで価値のないゴミのよう破壊することに忙しくしています。」
「我々の子孫は、もしも存在するなら、我々を、きっと野蛮な馬鹿者と考えるでしょう。」
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エミー・ネーター100周年の国際会議に出席した、ジョン・バエズのインタビュー "A quest for beauty and clear thinking. Interviewing John Baez" から。https://goo.gl/ndMe6a

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