Lady GaGa -- Joanne
もうだいぶ前のことだが、Paul McCartneyが出した"My Valentine" という曲が好きだった。ジャズのスタンダード・ナンバーっぽい曲だ。まあ、彼は万能なので、どんな曲でも作れるんだなという感じで聞いていたのだが。https://goo.gl/KLvgP
そのうち、Lady GaGaがTony Bennettとデュエットのアルバムを出した。もちろん、古い曲のカバーだ。スランプ気味だったGaGaのリハビリみたいなものかなと、生暖かく見守ることに。GaGa、歌が上手いことに気づく。例えば、これ。https://goo.gl/74Ug8m
ただ、Bob Dylanが、Frank Sinatraのカバー・アルバムを出した時には、少し驚いた。Dylan 自身がギャングに扮するビデオまで作って。https://goo.gl/lFav5U
この流れは何なんだ。何かが起きていることは確かなのだが、その時は、その意味は、よくわからなかった。今になってみれば、それは、今、アメリカで起きていることの予兆の一つだったということに気づく。「古き良きアメリカ」は、失われつつあるという意識とともに、それを懐かしむ意識は、だいぶ前から伏流していたのだと思う。
仕事が一段落して、ようやくGaGaの新しいアルバム Joanneを聴く。今までのGaGaのアルバムとは、ずいぶん違ったものになっている。
ネットで見かけたタイトルに、こんなのがあった。
「レディー・ガガが普通になっちゃった?新作『ジョアン(Joanne)』に暗雲漂う… 」
確かに、そうかもしれない。
奇抜なメークもなし。曲もシンプルで、歌詞は、演歌のようにわかりやすい。どこの訛りかわからないのだが、発音もなまっているように、僕には聞こえる。何星人だかわからなかったGaGaが、悪魔崇拝の雰囲気も漂わせていたGaGaが、アメリカの淳朴で信心深い田舎娘になっている。
(Diamond Heart)
I'm not flawless, but I gotta diamond heart.
I'm not flawless, but I gotta diamond heart.
(sinner's prayer)
Hear my sinner's prayer
I am what I am
And I don't wanna break the heart of any other man
Hear my sinner's prayer
I am what I am
And I don't wanna break the heart of any other man
(Million Reasons)
I've got a hundred million reasons to walk away
But baby, I just need one good one, good one
Tell me that you'll be the good one, good one
Baby, I just need one good one to stay aye eee ayeee
I've got a hundred million reasons to walk away
But baby, I just need one good one, good one
Tell me that you'll be the good one, good one
Baby, I just need one good one to stay aye eee ayeee
(Angel Down)
I confess I am lost in the age of the social.
I confess I am lost in the age of the social.
...
I'm a believer
It's chaos
where are our leader?
I'm a believer
It's chaos
where are our leader?
ところが、「暗雲漂う」どころか、Joanne は、USのアルバム・チャートで、堂々一位になる。大きな変動の時期にある現代のアメリカでは、GaGaの以前のスタイルでは、こうした支持は得られなかったと思う。「過激さ」ではなく「普通であること」が、かえって深い共感を呼ぶこともあるのだと思う。
皆が「失われたもの」を取り戻そうとするのは、当然のことだ。GaGaは、Trumpを支持しはしない。
今のアメリカの音楽の流れを、懐古主義の潮流が強まっているように描いたきらいがあるのだが、ただ、今月末に、Bob Dylanは、三枚組のアルバムTriplicateをだす。30曲全て、スタンダード・ナンバーのカバーになるという。一曲だけYouTubeで公開されている。これもSinatraのカバーだ。 https://goo.gl/wR6yFn
Bob Dylanは、何を考えているのかわからないところがあるのだが、このアルバムのプロモーションの一環として、彼のサイトに、長いインタビュー記事が掲載されている。https://bobdylan.com/news/qa-with-bill-flanagan/
これがなかなか面白い。
一箇所だけ紹介しよう。最近、どんなレコードを聴いているのかと聞かれて、
I liked Amy Winehouse’s last record.
Were you a fan of hers?
Yeah, absolutely. She was the last real individualist around.
「彼女は、最後の本当の個人主義者だった」と言っている。(最後の around うまく訳せなかった。)多分、映画 "Amy" で繰り返し語られていた、彼女の「私は、自分が経験したことしか歌えない」ということを指しているのだと思う。
AmyもTony Bennettとデュエットしていた。その時の、嬉しそうな初々しい表情が、僕には印象的だった。
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