宇宙の終わりと黒色矮星
【宇宙の終わりと黒色矮星】
図のようなストーリーで、「宇宙の終わりとエントロピー」という投稿を準備していたのだが、いろいろ雑念が湧いて気がすすまなくなる。その理由は別稿で。
この図は、「閉じられた部屋でのガスの拡散」というわかりやすいモデルで理解されるエントロピーの増大の法則が、あるフェーズから、宇宙規模でみれば、「全ての物質のブラックホールへの吸収・収斂」として現れると言うことを主張している。最初、ペンローズのこの話を読んだときには、目からウロコだった。
このストーリーにはもっと先がある。最近のシミュレーションでは、指数関数的に膨張する宇宙では、巨大なブラックホールに捕捉されるのは、宇宙全体の物質の10%程度だという。恒星起源のブラックホールは 10^67 年で、銀河系中心の巨大ブラックホールも 10^99年で、ホーキング放射で「蒸発」し姿を消す。
ブラックホールに捕捉されなかった宇宙の残りの90%の物質は、元それが属した銀河系から孤立したまま星の一生の進化を続ける。太陽の1.2倍程度の質量を持つ星は「白色矮星」になるのだが、「白色矮星」は 10^17年で「黒色矮星」に変わる。
「黒色矮星」は、現代の「宇宙の終末論」では、もっとも注目されている天体なのだが、それはまだ観測されていないと言う。というのも、この天体は光を出さないからだ。「黒色矮星」の中心は、最も安定な原子である鉄の「結晶」でできていて、温度は絶対零度近くに冷却されている。
「黒色矮星」は、とても長生きする天体である。陽子崩壊がおきるなら、黒色矮星の寿命は 10^32年程度だが、もし陽子が安定しているとすれば、太陽の 1.24倍程度の質量を持つ「黒色矮星」は、10^1600年後に突然崩壊して超新星爆発を起こす。もっと軽い、太陽の1.16倍程度の質量を持つ「黒色矮星」は、10^32000 年後(!)に超新星爆発を起こす。
この記事は、ジョン・バエズの "Black Dwarf Supernovae" を基にしたものだ。https://johncarlosbaez.wordpress.com/2021/04/14/black-dwarf-supernovae/
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