ベクトル空間
【 オブジェクトからオブジェクト上の関数へ 】 あまり情報が与えられない、あるいは不完全な構造を持つ数学的対象𝑋が与えられたとしましょう。 Xを直接調べようとしても、それはXの要素・オブジェクトをいろいろ調べることに帰着するのですが、Xについてよくわからないことが起こります。 そう言う時、構造がよくわかっている対象Yをとって、XからYへの関数 Fun(X)を考えます。Fun(X)はYに値をとりますので、XよりはFun(X)の方が構造がわかりやすいということを期待できると言うことです。 「オブジェクトからオブジェクト上の関数へ」と言うのは、 Xだけに注目するのではなくFun(X)にもっと注目しようと言う視点の転換を促すスローガンだと思っていいと思います。 論文の"Objects Versus Functions on Objects"というセクションでは、こうしたオブジェクト上の関数への注目によって構成された数学的対象の例を三つほど挙げています。 ⚫️ ベクトル空間 ⚫️ (co)presheaf ⚫️ enriched category 【 ベクトル空間 】 このセッションでは、ベクトル空間の例を取り上げます。 ベクトル空間というのは、ある集合X上で定義された体k(例えば、実数 R とか複素数 C とか)に値を取る関数の集合として、k^X という形で定義されます。 ベクトルは、関数なんです。 古典bit {0,1} から 量子bit { |0>, |1> } への移行も、{0,1}を考えるのではなく{0,1}上で定義関数を考えることへの飛躍として理解できます。次のように。 f(0)=1, f(1)=0 ; g(0)=0, g(1)=1である関数 f, g を考えて、 f = |0>, g = |1> と考える。 一般に、関数であるケット|i>は (それはケット|i>はベクトルであるというのと同じ意味です)引数j に対して、|i> (j) = 1 ( i = jの時) あるいは |i> (j) = 0 (i =jでない場合) という値を返します。 この量子ビットの例は定義域が{0,1}の例でしたが、任意の集合Xについて値域が{0,1}となる関数の集合も興味深い性質を持っています。Xの要素の上