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氷の結晶

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外気がマイナス10度くらいで、内側が暖かいと、ガラスに大きな雪(氷?)の結晶が成長する。これは部屋の窓ではなく「風除室」(玄関の前に部屋がある。北海道では普通)の窓ガラス。北海道の部屋は暖かいので、居間のガラスは、こうはならない。ただ、今年の冬は、寒そうだ。

ヴォヴォドスキーの「最後」の仕事

2ヶ月前に亡くなった数学者のヴォヴォドスキーが、「最後に」、どんなことに興味を持っていたのか調べ始める。 いったん、「晩年のヴォヴォドスキー」と書きかけたのだが、事故やその他の理由で突然死した人に(彼は動脈瘤が破裂して51歳でなくなるのだが)「晩年」というのは、あまり馴染まないなと気になって「最後に」に書き換えた。 ただ、「最後に」は、短い時間しか指し示さない。最後の論文は、最後の一つの論文だ。それに対して、「晩年」には、時間的な幅がある。いくつかの論文を対象にできる。「晩年」でもいいのかな?  「晩年」には、年齢制限もあるのかも。若くして亡くなった尾崎豊やエイミー・ワインハウスには、「晩年」は、似合わない。(突然死だから?) でも、子規は30代で亡くなっているのに、「晩年」といってもおかしくない気がするのはなぜだろう?(ずっと、病床にあったから?) どうでもいいことで本題から外れたが、ヴォヴォドスキーが最後に取り組んでいたのは、"C-System"という対象のように見える。 "C-System"の'C'は、Contextual Categoryの'C'で、Contextのことだと思っていい。わかりやすい説明は、ここにある。 https://ncatlab.org/nlab/show/context 平たく言えば(そう解釈できるという意味でしかないのだが)、コンテキストの意味論の形式化をやっているのだ。 僕は、現在の人工知能技術が、言語の意味理解と数学的推論能力という二つの点で人間の壁を乗り越えられていないと感じているのだが、それは、「シンボル」レベルの抽象を持たない、べったりした「コネクショニズム」還元論というディープラーニングの方法論自体の限界だと考えている。 グロタンディック=ローヴェール=ヴォヴォドスキーという、現代数学の、いわば、極めて抽象的なレベルでの探求が、こうした人工知能技術の具体的な課題と結びつくかもしれないと考えるのは、とても楽しいことだ。 少し、「意味の意味」、あるいは、その数学的把握である「意味の形式的理論」と言われるものを、紹介したいと思う。

11/30マルレク「量子コンピュータとは何か?」の様子

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今日のマルレクと懇親会の様子です。

Jeff Dean

風邪ひいて、Jeff Dean に会いに行けなかった。残念。

"Rockstar"

Spotifyの「トップ50(グローバル)」聴いていると、ポスト・マローンの"Rockstar"  https://goo.gl/ccebpD  が、何週もトップを走っている。ぶっちぎりの人気だ。ビルボードのランキングでも同じ。 ただ、日本の洋楽のランキングだと、100位以内にも現れない。(レコチョク「洋楽総合 ランキング デイリー 11/28 更新」 https://goo.gl/SgMcrV )このサイトの客筋が悪いのかとも思ったが、この日本のチャートにも、グローバルなチャートでヒットした曲は、たくさん入っている。 確かに、「洋楽」という感覚は、古いんだろうな。グローバルな時代だから。日本にもいい曲はたくさんあるし。 でも、"Rockstar" は、日本では、ほぼ完全にスルーされているように見えるのだが、どうしてだろう?  「PVがいや」(VEVOのは、日本人を切っている!)  「歌詞が嫌い」(聴いて、歌詞わかります?)  「人相が悪い」(そうですか) どうも、うまい理由が見つからない。 (僕が、引用したのと、表示されるPVが違ったのだが、VEVOのは、確かにヒドイ) (逆に、アメリカやヨーロッパで、"Rockstar"が、爆発的に流行する理由がわからないと、思う人もいるだろう。) ただ、「統計資料」(ヒット曲の国別のランキングですが)でわかることは、我々は、自分で思っているほど、「グローバル」でも「多様」なわけでもなさそうだということ。 それを明らかにするのが、「何を受け入れるか」というわかりやすい形ではなく、「何を受け入れないか」という無意識だが強いフィルターが存在することなのは、興味ふかい。 でも、それが、今の「時代」の一つの特徴なのだろう。

11/30マルレク「量子コンピュータとは何か?」の講演資料公開

https://goo.gl/muA5TU ご利用ください。 ----------------- 「はじめに」から ----------------- 小論は、量子コンピュータとは何かについて、一般の読者を対象に、そのオーバービューを与えようとするものである。 量子コンピュータの世界は、今、技術的にもビジネス的にも一つの展開点を迎えようとしている。その展開点とは、技術的には、この数年以内に、50 qubit程度のシステムを安定的に構築する目処が付き始めたことであり、ビジネス的には、そうした技術的達成をきっかけに、それらを利用した量子コンピュータの具体的・現実的なビジネス利用の可能性の模索が始まっていることである。 それらの到達点は、確かに、未だ萌芽的なものではあるのだが、こうした動きは、将来の量子コンピュータの飛躍を確実に準備していく軌道を切り開きつつある重要なものだと、僕は考えている。 小論では、最初に、我々が、量子の不思議な振る舞いにどのようにして気づき、またそれをどのように理解してきたのかを紹介する。続いて、こうした量子の奇妙な性質をコンピュータに利用しようとするアイデアが、どのように発展してきたかを振り返る。 続く、二つの章では、「量子ゲート型」と「量子アニーリング型」という、現在の量子コンピュータの二つの基本的なアーキテクチャを取り上げる。 最後に、各社の現時点での取り組みの状況を紹介する。ここでは、「量子コンピュータのキラー・アプリは、素因数分解での暗号破り」というこれまでの通念が、もはや働いていないことに、留意すべきかもしれない。 小論では、量子コンピュータの技術的側面を主要に述べたのだが、こうした新しい技術を牽引しているのは、新しい科学的な知見である。前回のマルレクで取り上げた、「量子情報理論」は、これからますます、理論的にも実践的にも、その重要性を増していくだろう。今後も、引き続き紹介していきたいと考えている。 今回、マルレクでの量子コンピュータの概論と並んで、演習形式で「量子情報理論基礎演習」を開講する。こちらにも、多くの人が参加することを期待したい。 量子コンピュータのビジネスに参入するには、いろいろ障壁があるかもしれない。ただ、その前提として、その基礎理論を知ることに大きな障壁はない。「紙と

「紙と鉛筆」が必要なわけ

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先に、ビジネス視点で量子コンピュータを考えるアプローチと、量子情報理論から量子コンピュータを考えるアプローチは、「通底」していると書いた。 ただ、ここには、いくつかの問題がある。 第一に、各人が、各人のビジネスの視点から、この分野への参入を考えてみよう。必要とされる資本の規模でも人材確保の面でも、ビジネス的な障壁は、AIやIoT分野よりはるかに高い。 先のGoogleの"Commercialize論文"  https://goo.gl/4qee3o  が、未来を "Super Star Effect"で説明しているように、この市場が、ITの世界の巨人たちの競争の場となり、Superじゃない人たちは弾き飛ばされ、彼ら巨人 Super Starたちの力が一層卓越する機会となる可能性は、高いのかもしれない。 第二に、個人のスキルのレベルで、この分野への参入を考えてみよう。ここでも、障壁は低くはない。 先のGoogleの"Quantum Supremacy論文”  https://arxiv.org/pdf/1608.00263.pdf  は、簡単に要約すると、量子コンピュータの開発に、小規模な(50 qubit程度の)量子コンピュータが利用できることを理論的に明らかにしたものだ。 ただ、この論文を読むのは、簡単ではない。それは、もう一つの障壁である。 それは、従来の、量子ゲートの組み合わせで、いくつかの量子アルゴリズムを記述するのとは異なる難しさがある。それは、現代の量子情報理論の言葉で書かれている。 重要なことは、この論文は、Googleにとっては、ビジネス的にも重要な意味を持っていることである。(それは、僕がいう、ビジネスと理論の二つのアプローチが、客観的には「通底」していることの、いい例だと思う。) Shorのアルゴリズムによる量子コンピュータによる「暗号解読」を「キラーアプリ」とする量子コンピュータ像は、到達すべき目標が、現在の技術水準からするとあまりに高く、いつになったら投資を回収できるのかわからないものだった。 それに対して、この論文が示すような、小規模の量子コンピュータで、bootstrap式に次の規模の量子コンピュータを開発するという方式なら、開発のそれぞれのステ