ビットコイン、イーサリウムと楕円曲線暗号

ビットコイン、イーサリウム等の暗号貨幣のほとんどは、暗号化に楕円曲線暗号を用いている。
多くの人は、大きな数の素因数分解の難しさを基礎とするRSA暗号より、離散対数問題を解くことの難しさを基礎とする楕円曲線暗号の方が、強い暗号(その上暗号化の鍵のビット数も減らせて効率的)だと信じているように見える。
ただ、量子コンピュータからの「攻撃」に対して、楕円曲線暗号の方がRSA暗号より強いかと言えば、答えはノーである。楕円曲線暗号を、量子コンピュータは破ることができるのである。
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NSAの楕円曲線暗号についての次のような重要な勧告は、明確にビットコイン、イーサリウム等の暗号通貨のセキュリティの現状についての警告なのだが、そのことに皆が気づいているわけではないように思う。
「Suit Bの楕円曲線アルゴリズムへの移行を、まだ行なっていないパートナーならびにベンダーは、現時点で、そのための大きな支出せずに、その代わりに、来るべき量子耐性アルゴリズムへの移行を準備することを、我々は勧めてきた。」
「不幸なことに、楕円曲線の利用の拡大は、量子コンピューティング研究の絶え間ない進歩の事実と衝突するものである。すなわち、量子コンピューティングの研究は、楕円曲線暗号化は、多くの人がかってそうなるだろうと期待したような長期間にわたって有効なソリューションではないことを明らかにした。こうして、我々は、戦略の見直しを余儀なくされてきた。 」
 NSA "Commercial National Security Algorithm Suite"
http://bit.ly/2YExs1M
Shorのアルゴリズムは、多くの人は素因数分解の量子アルゴリズムと考えているようなのだが、それはコインの片面でしかない。重要なことは、同じアルゴリズムが離散対数問題も解くということである。
Shorの原論文のタイトルは、"Polynomial-Time Algorithms for Prime Factorization and Discrete Logarithms on a Quantum Computer" である。
https://arxiv.org/pdf/quant-ph/9508027.pdf
後半の "Discrete Logarithms" の部分が、 ビットコイン、イーサリウム等の暗号貨幣のほとんどが利用する楕円曲線暗号を直撃する。
ビットコイン、イーサリウム等の暗号貨幣のほとんどは、量子耐性を持たないのだ。
それは、「多くの人がかってそうなるだろうと期待したような長期間にわたって有効なソリューション」ではなりえないと僕は考えている。

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