量子ゲートの行列表現

 【 量子ゲートの行列表現 】

今回も、まず、量子論の基本をふりかえることから始めましょう。

量子の状態は、あるルールに従って変化します。量子の状態は、ベクトルで表現されるので、量子の状態の変化は、あるベクトルからあるベクトルの変化として表現されることになります。ベクトルをベクトルに変えるのは、数学的には、行列の仕事です。ですので、量子の状態を変化させるルールは、ある行列の特徴によって記述されます。

【 ユニタリ行列 】

量子の状態変化を特徴づける行列を「ユニタリ行列」といいます。

全宇宙の全ての量子の状態変化を、このユニタリ行列がつかさどっていると考えると、とても複雑な行列だろうと思うかもしれませんが(確かに、実際にそれを書き出そうとすると、複雑で巨大なのですが)、その基本的働きは、驚くほどシンプルです。

ユニタリ行列は、あるベクトルの長さを変えず、その向きをかえます。長さが変わらないので、それはベクトルを回転させる働きをします。二次元でしたら、ユニタリ行列が作用したベクトルの先端は、ある点を中心に円を描きます。三次元なら、球面を描くことになります。

透明な球体の中に、中心から球面に向かう黒い矢印があって、それがクルクルと回っているのをイメージすればいいと思います。球面をなぞる矢印の先端が、量子の状態を表しています。

量子の状態変化が、すべて、こうしたシンプルなルールに従っているという発見は、驚くべきものだと思います。

【 ユニタリ行列と量子ゲート 】

ここでは、もうひとつの量子の状態変化のイメージを考えましょう。

量子の状態を線で表しましょう。それが変化した量子の状態も、やはり、線で表すことができます。線と線の間に、変化する過程を表す箱を置きましょう。これは、ある箱に、量子の状態が「入力」として入り、ある過程を経て、変化した量子の状態が「出力」として出てくるというイメージです。こうした入力・出力のイメージで量子の状態変化を捉えた時、この過程を表す箱を、量子ゲートといいます。

先に見たように、量子の状態変化はユニタリ行列で表現されるのですから、この箱 -- 量子ゲートの働きは、ユニタリ行列の働きと同じものです。量子ゲートには、それに対応したユニタリ行列が存在します。それを、量子ゲートの行列表現と呼びます。

【 Diagramと量子回路の行列表現 】

量子ゲートから、 「直列合成」 と「並列合成」と「Swap」で構成されたDiagramを「量子回路」と呼びます。量子ゲートは、対応するユニタリ行列を持つのですが、量子回路も、次のルールで対応する行列表現を持ちます。

 ● 二つの量子ゲートから「直列合成」された量子回路に対応する行列は、二つの量子ゲートに対応するユニタリ行列の「行列の積」である。

 ● 二つの量子ゲートから「並列合成」された量子回路に対応する行列は、二つの量子ゲートに対応するユニタリ行列の「テンソル積」である。

こうして構成された量子回路に対応する行列も、ふたたび、ユニタリ行列になります。

ショートムービー「量子ゲートの行列表現」を公開しました。https://youtu.be/UO1pMzhnkKg?list=PLQIrJ0f9gMcPSp_fL7-LZW0yOwYXyvXtb

スライドのpdfは、次からアクセスできます。https://drive.google.com/file/d/1ceZqR0QgsKLP0DvlQgCb6cSznTtzT_Wu/view?usp=sharing

このシリーズのまとめページは、こちらです。ご利用ください。https://www.marulabo.net/docs/category01/

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