"Quantum Computing for Business" keynote by Preskill

昨年末に開催された、"Quantum Computing for Business"のセッションの様子が、動画で公開されている。https://www.q2b.us/
Preskillのキーノート https://goo.gl/fUTDhD は、量子コンピューティングの現状と展望の見事なオーバービューを与えている。
彼は、現状(と言っても、ここ数年先の未来が含まれているのだが)を、Noisy Intermediate-Scale Quantum (NISQ) technology と呼んでいる。
Intermediate-Scale 中規模というのは、ここ数年で実用化が見込まれる50~100 qubitのシステムのことで、それでも、ある分野では、現在のディジタル・コンピュータを超える能力を持ちうるという。
Noisyというのは、現状では、環境からのノイズのコントロールが完璧にはできない状態が、しばらくは続くだろうということ。
NISQ technologyの有力な応用としては、量子コンピュータの概念の元祖であるファインマンのビジョンに忠実に、複雑な多体系などの量子状態のシミレーションを考えている。
ただ、それだけではない。基本的には、複雑性とエンタングルメントの新しい物理学の時代を切り開くパイオニアとして、NISQの時代を位置付けている。ワクワクする展望だ。
講演では、量子アニーラーについても、量子ディープ・ラーニングの可能性を開くQRAM — quantum random access memory についても触れている。
面白かったのは、講演の最後に「量子ゲーム」というのが出てきたこと。量子の世界は、日常の直感には反する。それが量子コンピュータの理解を難しくしている。ただ、量子の世界を体験できるようなゲームを作って、子供達がそれを遊んでいるうちに、我々とは違う直感を持つ世代を作れるのではという話。
確かに、学校で量子の世界をどう教えるのかという問題はあるのだが(日本の高校物理の教科書では、全く取り上げていない)、量子論理解のもっとベースにある量子論的直感をゲームで育てるというアプローチは、ありかも。
このキーノート、とても重要だと思う。
そっくり、今度のマルレクで紹介したいな。

コメント

このブログの人気の投稿

マルレク・ネット「エントロピーと情報理論」公開しました。

初めにことばありき

人間は、善と悪との重ね合わせというモデルの失敗について