あとのまつり
【 あとのまつり】
先日「エントロピー論の現在」というセミナーを終えたばかりなのですが、いくつかのトピックを積み残してしまいました。
このセミナーは、"Entropy as a Functor" という新しいエントロピー論を展開したBaezの仕事の紹介で終わっているのですが、実は、ここからさまざまな動きが生まれてきます。本当は、「エントロピー論の現在」で注目すべきなのは、そうした動きなのですが ...
「あとのまつり」ですが、「エントロピー論の現在・補遺」として、エントロピー論へのカテゴリー論の応用を中心に、いくつかのトピックの紹介を、すこしのあいだ続けたいと思っています。
【 エントロピー概念の一般化 】
Boltzmann-Gibbs-Shannonらが作り上げたエントロピー概念は、驚くべき生命力を持っています。ただ、それをより一般化しようという試みも存在します。もっとも、そうした一般化によって、17世紀に始まった古典力学が、20世紀には量子論・相対論に置き換わったようなパラダイムの転換が、エントロピー論の世界で起きた訳ではありません。
エントロピー論がこれまで経験した認識の最大の飛躍は、熱力学的エントロピーと情報論的エントロピーの「同一性」の認識です。それは、エントロピー概念の拡大・一般化というよりはむしろ、エントロピーの「遍在」の認識なのですが、極めて重要な意味を持っています。それは、エントロピー論ばかりではなく、新しい自然認識の基礎となっていくと思います。
エントロピー概念の一般化としては、Tsallis エントロピーやRényiエントロピーというものがあります。今回は、Tsallis エントロピーを紹介します。見かけは随分Shannonエントロピーとは異なっています。
意外なことに、Tsallis エントロピーは、Shannonエントロピーを導出した全く同一の「カテゴリー・マシン」で(パラメータをすこし変えるだけで)、導出できるのです。
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