11/2 第四回マルレク「量子アルゴリズム入門」について




今回のマルレクのテーマは、「量子アルゴリズム入門」です。

メディア的には、量子コンピュータへの関心を訴求する一番大きなポイントは、Google, IBM, Microsoft をはじめとする大手ITベンダーが、50-100qubitの中規模の量子コンピュータを実際に作り上げる取り組みを精力的に進めていることが大きいかもしれません。それは、確かに重要な変化です。
ただ、現在起きている変化は、それだけではありません。量子コンピュータをハードウェアだとすると、その上で走るソフトウェアに相当する「量子アルゴリズム」の研究・開発が、爆発的に進んでいます。
90年代にショアの素因数分解のアルゴリズムが発表された時は、ハードウェアの実現の見通しとは独立に、アルゴリズムそのものに、非常に大きな関心が集まりました。むしろ、そこで膨らんだ期待が、ハードウェア上の制約で、その実現がすぐには難しいと分かった時に、量子コンピュータそのものに対する失望に変わったように思います。
冒頭にも書きましたように、量子コンピュータのデバイスとしての実現可能性をめぐる状況は、90年代とははっきり変わって来ています。それ以上に重要なことは、この分野のイノベーションは、ショアのアルゴリズムの発見がそうであったように、先行する理論的探求によってに牽引されるということです。
現在、多くの研究者を巻き込み、深い結果が出て来ている量子アルゴリズムの研究動向は、量子コンピュータの未来を占う上で、決定的と言っていい重要な意味を持っています。
今回のマルレクでは、量子アルゴリズムの「金字塔」といっていい、ショアのアルゴリズムの中核である「量子フーリア変換」のやさしい解説を行いたいと思います。この間、展開して来た「紙と鉛筆で学ぶ量子情報理論演習」の内容は、きっと役にたつと思います。
時間の最後に、現在の量子アルゴリズムの世界で、ゲート型の量子コンピュータとアニーリング型量子コンピュータをつなぐ理論としても、また、3SATのような「NP-完全問題」に対する量子コンピュータの側からの挑戦としても注目され、量子複雑性の理論にも大きな刺激を与えている、"Local Hamiltonian Problem" を紹介しようと思います。

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