数学から計算科学へ、そしてその逆 -- MIP* = RE の場合
【 数学から計算科学へ、そしてその逆 】
今回のセミナー「大規模言語モデルの数学的構造 I 」https://llm-math.peatix.com/ は、数学(カテゴリー論の基本的定理)が計算科学への実践的な応用を持つという例なのですが、逆の例、計算科学が数学の問題を解くのに応用されるという例もあります。
添付した短いビデオは、計算科学が量子力学を経由して純粋数学に影響を与えるという状況が生まれているということを表しています。
この動画 https://d2r55xnwy6nx47.cloudfront.net/uploads/2020/03/Connes-2880x1620_v2.mp4 はQuaunta Magazineの "Landmark Computer Science Proof Cascades Through Physics and Math" https://www.quantamagazine.org/landmark-computer-science-proof-cascades-through-physics-and-math-20200304/
という記事から借用したものですが、具体的には、計算複雑性の理論での「MIP* = RE」という定理の証明が、数学の未解決の難問だった「コンヌ予想」を「否定的」に解決したことを表しています。
【 「計算科学」と「数学」をつなぐ「量子力学」という段階の意味 】
興味深いのは、この例の場合、計算科学と数学は直結しているわけではなく、途中に、「量子力学」という段階を経由していることです。
といいますのも、MIP* (MIP star と読むようです)の ' * ' (star) は、量子論的にentangle した二人の「万能の(しかし嘘もつく)証明者」を仮定しているからです。彼らとの「対話型証明」として証明は進行します。
【 動画を逆転する 】
今回のセミナーで取り上げる「数学から計算科学へ」の例は、この動画を逆転したものと考えていいのです。実は、そこでも、この動画での「量子力学」に相当する段階が重要な役割を果たしています。
それは、次回のセミナー「大規模言語モデルの数学的構造 II -- enriched categoryによる言語モデル」で詳しく展開する予定の、言語モデルへの「確率」の導入が、それにあたります。
(Bob Coecke らの Quantum NLP は、一般的な確率ではなく、直接に「量子状態」を導入します。その意味では、この動画の逆転は、Coeckeの QNLPのアプローチに近いものです。)
【 杞憂 】
残念ながら、MIP* = RE 定理は、計算科学でも数学でも、僕が期待したような反響を引き起こしたわけではありませんでした。(なぜなのでしょう? よくわかりません。すこしニッチすぎたのかもしれません。)
今回の、大規模言語モデルへのカテゴリー論の応用が、そうならないことを期待しています。
https://drive.google.com/file/d/1vPD1MPCDJf8DbLEEefSO5M3eaZh7OzFv/view?usp=sharing
https://www.marulabo.net/docs/llm-math/
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