「自分の部屋を持ちなさい」#2

以前の「自分の部屋を持ちなさい。」という投稿は、ヴァージニア・ウルフの  "A room of one's own" からの引用でした。文学を志す女性に向けた彼女の1928年の講演をもとにした作品です。

彼女が造形した、シェイクスピアと同じ才能に恵まれながら、その才能を発揮する環境も機会も与えられず、ついには自殺し、ロンドンの街の路傍に埋葬されるシェイクスピアの妹の Judithの「物語」は見事なものです。

この先品で、印象的な場面が、僕にはもう一つありました。

それは、この物語の「語り手」が、彼女は"OxBridge"大学 (!!)で学んでいるのですが、近道をしようとしてキャンバスの芝生を横切ろうとしたら、守衛が「とんでもない」という表情で飛び出してきて、行手を阻まれるのです。「芝生を横切れるのは、大学のエライ人だけ。女はダメ。」

嫌がらせを受けて、彼女は、大学の壮麗な図書館に向かうのですが、その膨大な書庫には、女性文学についていえば見るべきものは何一つなく、クソのような本だけが並んでいます。いわく「女性には、シェイクスピアのような作品が作れないことは、明らかである。」

実は、昔、この作品を読んだ時、このシーンはあまり印象に残っていませんでした。ただ、数年前、物理学者のサスキンドの本を読んだ時、このエピソードを思い出しました。

サスキンドも、Trinity Collegeの芝生を横切ろうとして、守衛に阻止されます。前日、教授と一緒の時には、何も言われないで同じ芝生を渡れたのに。大学のエライ人と一緒でなければ、芝生の横断は認められないと言われます。彼の"Black Hole War"という本に出ています。

サスキンドは、サウス・ブロンクスの配管工の息子です。配管工の青い仕事着をきて大学の面接を受けたというエピソードも、この本の中で語っています。

ウルフが、「イギリスの大学はこのクソみたいなルールを 300年も守り続けている」と書いたのは 1920年代のことですが、サスキンドの経験は、彼が32歳のときで、1972年のことです。1970年代にも、このルールは生き続けていたのです。

つい先日 (2021年3月8日)も、イギリスのバーガー・キングが "Women belong in the kitchen" 「女性の居場所は台所」というツィートと新聞広告を行い炎上しました。90年前に、「自分の部屋を持ちなさい」と女性に呼び掛けたバージニア・ウルフは、どんな思いを持つでしょう? 

もっとも、時間を超えて「論争」することは可能だと、僕は考えています。ウルフは、そうした手法を愛用しています。バーガー・キングの広報は、ウルフに完全に論破されるでしょう。

僕は、「自分自身の部屋を持ちなさい。そして、お金も。」というウルフの、文学を志す女性にあてた90年前のメッセージを、文学志望の女性だけでなく、現代の男性を含めた多くの人にあてたものとして読み替えることができるのではと考えています。

詳しくは、次回に。

僕が、興味を持ったのは、身なりの怪しい若いサスキンドが、トリニティ・カレッジのキャンパスの芝生から追い出された 1970年代にイギリスで生み出された、次の詩です。

ジョン・レノンです。(歌は、こちら)

As soon as you’re born, they make you feel small
By giving you no time instead of it all
Till the pain is so big you feel nothing at all

They hurt you at home, and they hit you at school
They hate you if you’re clever, and they despise a fool
Till you’re so fucking crazy, you can’t follow their rules

When they’ve tortured and scared you for twenty-odd years
Then they expect you to pick a career
When you can’t really function, you’re so full of fear

Keep you doped with religion and sex and TV
And you think you’re so clever and classless and free
But you’re still fucking peasants as far as I can see

There’s room at the top they’re telling you still
But first you must learn how to smile as you kill
If you want to be like the folks on the hill




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