ランダムさ への新しいアプローチ

【 ランダムさ への新しいアプローチ 】

https://youtu.be/Ks4iav2PR10?list=PLQIrJ0f9gMcOWKDmKxI3aJ6UYf6gaPa2K

ランダムさへのアプローチは、1960年代の半ばに、旧ソヴィエトの数学者コロモゴロフとその学派が登場して、新しい段階に入りました。

「コロモゴロフ複雑性」を中心的な武器とした「アルゴリズム論的情報理論」は、チャーチ=チューリングらの計算理論との接点を深化し(Chaitinの「不完全性定理」)、また、シャノンの情報理論との結びつきを探求します(「条件付きエントロピー」、「相互エントロピー」)。

ここでは、まず、彼らのランダムさへのアプローチの概略を、次の三つのトピックで、紹介しようと思います。

 ● 「オブジェクトの記述」=「プログラム」
 ● プログラムの長さへの注目
 ● 圧縮可能な情報と圧縮不可能な情報

【「オブジェクトの記述」=「プログラム」】

ある認識の対象を「記述」するには、いろいろな方法があります。

・その定義を、記述する。
・その特徴を、記述する。
・その時間的変化を、記述する。
・その意味を、記述する。
・ …

アルゴリズム論的情報理論では、少なくとも文字列として表現されるもの(それは、基本的には {0, 1}^∗ すなわち、0と1の並び に還元されるのですが)、その「記述」とは、その文字列を出力する「プログラム」に等しいと考えます。


【 プログラムの長さへの注目 】

私たちの認識の対象は、多様です。対象の「記述」=「プログラム」だとしても、ある対象を「記述」する「プログラム」も多様です。

一般的にいって、対象が複雑であれば、その「記述」、すなわちその対象を出力する「プログラム」も複雑なものになり、対象が単純なものであれば、その対象を出力する「プログラム」も単純なものになるのは、容易に想像できると思います。

プログラムの複雑さを、そのプログラムの「長さ」で代表させましょう。そうすることで、我々の認識の対象に、その複雑さを表す尺度を導入できます。

ある対象xを出力するプログラムは、複数あり得ます。この複数あるxを出力するプログラムで、最小の長さを持つものの長さを、xの「コロモゴロフ複雑性」と言います。

確認して欲しいのは、このように、xのコロモゴロフ複雑性は、一つの自然数だということです。

もうひとつ確認しておきましょう。「記述」=「プログラム」のプログラムは、基本的には、{0, 1}^∗ すなわち、0と1の並びだと考えることが出来るということです。


【 圧縮可能な情報と圧縮不可能な情報 】

同じxについて異なる二つの「記述」があったとしましょう。それは、xを出力とする異なる二つのプログラムp1とp2があるということです。

プログラム pの長さを |p|で表します。|p1| < |p2|だとしましょう。「xの記述」=「プログラム」 p2は、 「xの記述」=「プログラム」 p1より長いということです。それは、同じxを出力するのに、プログラムp2は、プログラムp1より、冗長で無駄が多いということです。

こうした時、プログラムp2は、p1に「圧縮可能」だとしましょう。

先に見たような、プログラムが「圧縮可能」かのチェックを行い、それを短い圧縮されたプログラムに置き換えることは、プログラマーが、普段よく行っていることです。

それでは、こうしたプログラムの改善・圧縮は、どこまで可能でしょうか?

nをxの「コロモゴロフ複雑性」としましょう。

「コロモゴロフ複雑性」いうのは、xを出力するプログラムの長さの最小のものですので、|p|=n を達成したプログラムpは、これ以上短かなプログラムに圧縮することはできません。

プログラムには、より短いプログラムに圧縮可能なものと、それ以上の圧縮が不可能なプログラムの二種類が存在することになります。

ここまでは、プログラムが「圧縮可能」か「圧縮不可能」かについて話してきましたが、おなじ論法で、ある対象xが「圧縮可能」か「圧縮不可能」かを、コロモゴロフ複雑性K(x)を利用して定義することができます。

次がコロモゴロフによる、 xが「圧縮不可能」である条件です。

  𝐾(𝑥) ≥ |𝑥|−𝑐

コロモゴロフらは、この条件が、xがランダムであることを表すと考えます。

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