AIの力と人間の力 -- 人間の力の再評価
【「人間の持つ諸能力の再評価」というフェーズ 】
今回のセミナーで、AIの利用とインターフェースについて考えようとしています。この問題では、AIと人間の関係はどういうものなのかという問題が基本的だと思います。
AI研究の一つの目標は、人間とは独立の「考える機械」、機械から構成された自律した「知能」を作り上げることです。
当たり前に思われるかもしれませんが、こうしたAIを作り出そうとしているのは、人間です。人間が人間を生物学的に生み出す(procreate)ように、AIがAIを生み出す(create)わけではありません。
未来のAIがどういう力を持つのかは未知数ですが、はっきりしていることは、それは、人間の力によって生まれるだろうということです。
問題は、AIが人間とは独立の自律的な「知能」をすでに獲得しているかのような意識が生まれはじめていることです。「人間によって生み出されたAIだが、人間を超える能力を持つ存在として、人間の前に登場している」と。
僕は、そうした現象は、人間の本来持つ力が、人間の元を離れ人間の外部のAIの力としてあらわれているものだと考えています。
ただ、今回のセッションで、僕が強調したいのは、そうした深い射程を持ちうる「疎外論」とは少し違ったものです。
それは、AI研究の現段階は、「AIの能力の卓越」としてではなく、むしろ「人間の持つ諸能力の再評価」のフェーズとして特徴づけられるのではという問題提起です。
そうした認識は、ブレイクスルーをもたらしたChatGPT成立の背景分析と現在のAI技術がいまだ不十分で不完全であるという観察に基づいています。
【 機械と人間の関係 】
さきに、「人間の力が、AIの力として現れている」と言いましたが、若干の補足を。
AIと人間の関係だけでなく、AIやコンピュータを含む機械と人間の関係を考えることは意味があると思います。そこでは、人間の力が機械の力として現れているわけではありません。しばしば機械の力は人間を上回ります。
自動車より早く走れなくとも、ブルトーザーに腕力ではかなわなくとも、我々は人間は機械より劣った存在だと考えることはありません。なぜなら、それは人間にとって意味のある人間にとって役に立つ「人間の能力の拡張」だからです。
それについては、視覚能力の拡大としての機械を中心に、前回の「眼をもったAiはどう進化するか」のセッションで触れてきました。
AIと人間の関係も、基本的には、この機械と人間の関係と同じだと考えています。AIも人間にとって意味のある人間にに役立つ人間の能力の拡大であるべきだと思います。
こうした「人間中心」の考えは、現在のAI技術の不完全さが、人間にとっての重大な危険をもたらす可能性をはらむなら、それを排除すべきことを、我々に求めています。
話が少し一般的になりました。ここでは、AIの世界の言葉で、「人間の能力の再評価」の動きを紹介しようと思います。
【 今回のセッションで取り上げる二つのアプローチ 】
今回のセッションでは、”Inductive Bias Free” と”Reinforcement Learning from Human Feedback” という二つのアプローチを取り上げます。
前者は、AIの作り手が行った、あまり適切ではない「方法論的一般化」の例として、後者は、「人間の能力の再評価」の例です。
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ショートムービー「 AIの力と人間の力」を公開しました。
https://youtu.be/l7wh8FHev_g?list=PLQIrJ0f9gMcONFj6CSbKdp_mdh_81VgDU
ショートムービー 「 AIの力と人間の力」のpdf資料
https://drive.google.com/file/d/1DO4B394dTj-L1nCULX16ABvlvWwRRBl0/view?usp=sharing
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