悲観論と楽観論
【 John Baezの悲観論と楽観論 】
9月26日に John Baezの講演があった。楽しみにしていたのだが聞き漏らしてしまった。
ちょうど、9月25日にOpenAIがMultimodalなAIについての発表があったもので、そっちに走ってしまった。
ただ、スライドは公開されているので、簡単に紹介したい。
http://math.ucr.edu/home/baez/struggle/
「 我々は完新世 Holoceneを離れ、人類の活動によって生物圏が急速に変化する人新世Anthropocene という新たな段階に入った。
我々は現在だけでなく遠い未来をも変えつつある。
しかし、人新世の問題は、地球温暖化の問題だけではないのだ。
▶絶滅する種の割合はバックグラウンドの100~1000倍
▶1950年以降、大型海洋魚の個体数は90%減少
▶生物量ベースでみると、哺乳類の96%は人間か家畜になり、野生はわずか4%。
▶植物が生産する化学エネルギーの約4分の1は、現在、人間が使用している。
▶人間は、大気中の窒素を他のすべてのプロセスを合わせたよりも多く摂取し、その窒素をエタノールに変換している。
▶自然のバックグラウンドの8~9倍のリンが海洋に流入している。」
人口爆発(もちろん人間の)と地球温暖化を中心とした、この辺りの彼の議論は、以前にも紹介したことがある。地球の他の生命を道連れに破滅に向かった突き進む、人間の未来については、悲観的だと思う。
ただ、今回の講演で興味深かったのは、次のフレーズだ。
「しかし、それらを考えることで、危機を乗り切る生命の能力について、楽観的になれるかもしれない。」
彼は、何を考えて楽観的になったのだろう?
「地球温暖化の中で私たちの未来に思いを馳せるとき、私たちがどうやってここまで来たのかを振り返ることには価値がある。生命が誕生した後も、地球上の生命が成功するのは当然の結論ではなかったのだ!
この講演では、私たちの惑星の歴史から、スリリングでゾッとするようなエピソードをいくつか紹介する。例えば、惑星テイアとの衝突、ほとんどの海が凍った「スノーボール・アース現象」、恐竜時代を終わらせた小惑星衝突などだ。よく知られているものもあれば、理論的にしか説明されていないものもある。
しかし、それらを考えることで、危機を乗り切る生命の能力について、楽観的になれるかもしれない。」
講演のタイトルは、「生き残りのための生命の戦い Life's Struggle To Survive 」である。彼の楽観論は、「人間」についてではなく、地球上の「生命」についてのものなのだ。
確かに、地球の生命は何度も大量絶滅を生き延びてきた。彼は、代表的な5つの絶滅をあげている。
1. 4億4500万年前のオルドビス紀-シルル紀絶滅。海洋生物の85%が絶滅した。
2. 3億7200万年前~3億5900万年前デボン紀後期の絶滅。70%の海洋生物が絶滅した。
3. 2億5,100万年前のペルム紀-三畳紀絶滅。海洋生物の80%、陸上無脊椎動物の70%が絶滅した。
4. 2億100万年前の三畳紀-ジュラ紀絶滅。海獣と陸棲種の70%が絶滅。
5. 6,600万年前の白亜紀-第三紀絶滅。海と陸の種の75%が絶滅した。
多分、彼の現状についての悲観論も、生命の生き残りについての楽観論も、両方とも正しいと僕は思う。
もっとも、二つの銀河が衝突して、巨大なブラックホールが作られる時、両銀河の「生命」は生き残れないとは思うのだが。(でも、どこかの銀河で生命は生まれ、生き残るだろう)
そういえば、最近の彼のblogは、音楽の話が多い。音楽といっても、ピタゴラス律や平均律といった「音階」の話なのだが。
コメント
コメントを投稿