12/28 マルレク「ラングランズ・プログラムとは何か?」コンテンツ公開の詳細

【 科学の未来と私たちの未来 】

昨年末 12月28日に開催したマルレク「ラングランズ・プログラムとは何か? -- やさしい入門編」のビデオとコンテンツを公開しました。

このセミナーは、「ラングランズ予想」と言われるものが意味するものを、できるだけ多くの人に伝えようとしたものです。

公開コンテンツのリンクの詳細については、次のページをご利用ください。
https://maruyama097.blogspot.com/2025/04/Langlands.html

【 今なぜ「数学」について語るのか?】

21世紀の最初の25年は終わり、激動と言っていい大きな変化が進行しています。

これからの21世紀が私たちにとってどのような時代になるのか、多くの人が関心を高めていると思います。

考えるべき課題が山のように積み上がる中で、なぜ今、数学の世界について語るのでしょう?

それは、現在、数学の世界で進行している変化が、21世紀の科学の未来を大きく変える可能性を持つと考えているからです。

【 ラングランズ・プログラムの重要性は、あまり知られていない 】

このセミナーで取り上げた「ラングランズ・プログラム」は、まさに、現在の数学の変化をドライブしている中心的なプロジェクトです。

今年の5月、「ラングランズ・プログラム」の基本的な予想の一つである「幾何学予想」が証明されたのは、大きな事件でした。

“Proof of the geometric Langlands conjecture”
https://people.mpim-bonn.mpg.de/gaitsgde/GLC/ 

残念ながら、その重要性は、メディアではほとんど伝えられることはありませんでした。

【  技術の未来と私たちの未来 】

確かに、数学の世界での発見が、我々の未来に大きな影響を与えるという考えには、飛躍があると感じる人は多いでしょう。

でも、「飛躍がある」というのは、本当なのでしょうか? あるいは、なぜ、「飛躍がある」のでしょう?

核の脅威にせよAI技術にせよ、技術の未来が、私たちの未来に大きく影響を与えるということについては、多くの人がさまざまに考え、さまざまな論争があります。

それは、現代の分断と対立の舞台そのものといっていいのかもしれません。

僕は、我々の未来を技術の未来に託するのは、あまり気が進みません。

【 科学が技術を生み出す 】

技術と科学は、ある点では強く結びついているのですが、異なる発展の歴史と論理を持っています。

「ラングランズ・プログラム」は、数学の各分野の「統一理論」を目指すものと考えることができるのですが、物理学のSuper String理論の深刻な行き詰まりの中で、数学と物理学を含めた「数理科学の統一理論」への期待と関心が高まっています。それは、新しい技術の土台を与えるものになると思います。

科学が大きく変化するというビジョンのもとで、科学の未来と技術の未来、そして私たちの未来を議論することが、遠くない未来にはできるのではと考えています。

そこに、僕は希望を託したいと考えています。

【 セミナーの構成 】

セミナーでは、次のような構成でラングランズ・プログラムの概要を紹介しています。

基本的には、20世紀末の大きな数学的発見である、Wiles による「フェルマーの最終定理」の証明へ至る探究をメイン・ストーリーとしながら、そうした道筋が、ラングランズ・プログラムの誕生と発展に深い結びつきがあるという形で、ラングランズ・プログラムを紹介しています。

 Part 1  はじめに −− 科学の未来と私たちの未来
 Part 2  谷山・志村予想
 Part 3  Langlands Programの創世記
 Part 4  Wiles による「フェルマーの最終定理」の証明

【  Part 2  「谷山・志村予想」 】

Part 2では、Langlands programが生まれるきっかけの一つになった、1955年の「谷山・志村予想」を紹介しています。それは、有理数体上の楕円曲線とモジュラー形式のあいだに深い繋がりがあると言う予想でした。

「谷山・志村予想」には、先行する発見がありました。Part 2の冒頭で紹介している、1954年のEichlerの発見は、一見すると数学的には全く無関係に思えるものが、実は繋がっているという驚くべきものでした。

【 Part 3  Langlands programの創世記 】

セミナーのPart 3は、Langlands programの紹介です。ただし、1970年代から現代に至るその膨大なprogramの展開 と広いリーチを満遍なく説明することは、僕の手に余ります。

セミナーでは、その最も最初期のビジョンを、振り返っています。

ただ、Langlands program の「最初期」といっても、それは数学的には高度に完成されたものでした。その意味を数学的にきちんと伝えることは、難しいのです。

このPart 3 では、数学的には初等的に説明可能なオイラー積の導出と、この「Langlands programの創世記」は、 どういう時代だったのかをエピソードを中心にお話ししています。

【  Part 4    Wiles による「フェルマーの最終定理」の証明 】

Part 4では、Wilesの「フェルマーの定理」の証明の取り組みを紹介しています。

1995年、Wilesは、「谷山・志村予想」をある条件のもとで解いて、それを利用して「フェルマーの最終定理」を解くことに成功します。
「谷山・志村予想」に対するWilesの貢献は画期的なもので、先に述べたように、2001年には、Wilesの弟子たちによって、「谷山・志村予想」は完全に解かれることになります。

Wilesによる「フェルマーの定理」の証明は、20世紀の数学の大きな達成とみなされているのですが、その導きの糸となったのは、Langlands programであったということです。


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セミナーは4つのパートに分かれています。個別にも全体を通してもアクセスできます。

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全体を通して見る
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 ●  「ラングランズ・プログラムとは何か? −− やさしい入門編」セミナーの講演ビデオ全体の再生リストのURLです。全体を通して再生することができます。 

https://www.youtube.com/playlist?list=PLQIrJ0f9gMcNzhFN2pp8qaxIIR7wgQJhD

 ●  講演資料全体を一つのpdfファイルにまとめたものはこちらです。

   「ラングランズ・プログラムとは何か? −− やさしい入門編」講演資料

https://drive.google.com/file/d/1JJ9TEWqw2lbF7-qxQfWYU61PV2Sa9rUv/view?usp=sharing

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 パートごとに見る
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 ●  Part 1 はじめに

   講演ビデオURL :

https://youtu.be/k_ZBPaOV124?list=PLQIrJ0f9gMcNzhFN2pp8qaxIIR7wgQJhD

   講演資料 pdf :

https://drive.google.com/file/d/1Jfeaz-XWDSfec5irIr88_HBzStMPqBET/view?usp=sharing


 ●   Part 2 谷山・志村予想

   講演ビデオURL :

https://youtu.be/mAG4xi8irdo?list=PLQIrJ0f9gMcNzhFN2pp8qaxIIR7wgQJhD

   講演資料 pdf :

https://drive.google.com/file/d/1Jk4WtDTj7LDtlEwAyn4SxdrZcWzu3_Ao/view?usp=sharing


 ●  Part 3 Langlands programの創世記

   講演ビデオURL :

https://youtu.be/XQJGae-bDkw?list=PLQIrJ0f9gMcNzhFN2pp8qaxIIR7wgQJhD

   講演資料 pdf :

https://drive.google.com/file/d/1JsIKL6lnxjCv2U_xiBoz7dMHOLrlTRGG/view?usp=sharing


 ●  Part 4 Wiles による「フェルマーの最終定理」の証明

   講演ビデオURL :

https://youtu.be/Tc8kiS7OxpI?list=PLQIrJ0f9gMcNzhFN2pp8qaxIIR7wgQJhD

   講演資料 pdf :

https://drive.google.com/file/d/1JtLiWg-ERI2kqmDcSRWPP4M4C-fC_QAY/view?usp=sharing

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●  今回のセミナーのまとめページはこちらです。

https://www.marulabo.net/docs/langlands/

●  「ラングランズ・プログラムとは何か? −− やさしい入門編」tセミナーに向けたショートムービーの再生リストはこちらです。

https://www.youtube.com/playlist?list=PLQIrJ0f9gMcNiVsQH_IBzJ6NP3xPSNv_f

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