訃報

大学時代親しくしていた友人のT君が、9月はじめに亡くなっていた。「行方不明」の僕を、大学時代の共通の友人S君がネットで探しだして教えてくれた。
懐かしいので会おうということになっったら、当時の友人をさそってくれて、4人で新宿で飲む。40年ぶりかな。昔話、楽しかった。
僕は、自分がいた大学の大学院に行かなかったし、その後、東京から遠く離れたところに行ったので、確かに「行方不明」と思われても仕方がないところもある。僕から見れば、皆が行方不明になったと言ってもいいのだが。
デービッド・ドイッチェの"The Beginning of Infinity"を読んでいた。彼のことは、彼が量子コンピュータで有名になる前から知っていた。我々が目の前に見る宇宙と並行して、それと少しだけ違う宇宙が無数に存在する多元宇宙論(Multiverse)を唱える、ちょっとマッドな科学者として。
でも、この本の彼の語り口は、奇矯なところはあまりなく、存外、優しいものだった。彼も、歳をとったのかもしれない。
帰りの車の中で、駅に向かうたくさんの人の群れを見て、それぞれの人の心の宇宙には、僕のいない宇宙があっても、何の不思議もないと感じた。多元宇宙論の、主観主義的な間違った解釈なのだが。
同時に、1930年代に吉野源三郎が書いた「コペル君」の話も思い出した。みんなバラバラに見えるが、みんな繋がっているという話だ。
宇宙の謎は深いのだが、僕らの心も、複雑なものだ。
T君の冥福を祈る。

コメント

このブログの人気の投稿

マルレク・ネット「エントロピーと情報理論」公開しました。

初めにことばありき

人間は、善と悪との重ね合わせというモデルの失敗について