量子力学と量子情報理論の違い

【 量子力学と量子情報理論の違い】

ここでは、物理学の「量子力学」と「量子情報理論」の違いについて述べてみようと思います。

どちらにも「量子」という名前がついているからでしょうか、二つの違いをあまり意識していない人が多いように思います。ただ、僕は、この二つは明確に異なるものだと考えた方がいいと思っています。

この区別は、実践的にも意味があります。量子コンピュータや量子通信の勉強を始めようと思った時に、必要なのは「量子情報理論」の学習です。古い「量子力学」のテキストの勉強から始めなければと考える必要はないと、僕は考えています。

物理学は、実在的な自然・物質を対象とします。「量子力学」は、物理学の一分野として、量子論の立場から、物理的な対象の運動法則の解明を目指します。情報理論は、情報を対象とします。「量子情報理論」は、量子論の立場から、情報を考察します。

「量子情報理論」では、「位置」や「運動量」や「エネルギー」(いずれも量子化されたものとして)を考察することはありません(アニーリング型の量子コンピュータでは、ハミルトニアンは大活躍するのですが)。「量子力学」では、これらは主要な考察の対象です。

一方、「量子力学」では、bit が主題になることはまずありません。「量子情報理論」では、bit あるいはその量子版であるqubitが、主要な考察の対象です。

今回は、両者の違いについて書きましたが、次回は、両者の関係について書いてみようと思います。

まとめページ:https://www.marulabo.net/docs/rho-talk/

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